31「千手さんの軽快な警戒じゃね?」
夏樹が脱落してしまったので、渋々と千手が一同の視線を受けて話を進めることになった。
「…………はぁ。んで、由良の性癖はさておくとして、お前さんたちは門の神から解放されたから由良に礼を言いにきたってことらしいが、新たな神々である以上、なにかしら敵対するんじゃねえのか?」
「まず、誤解を解かせてください。我々は新たな神々ではありますが、門の神から解放された以上、誰かに迷惑をかけることはしたくありません」
「あんたが事実を言っているのかそうじゃないのか、俺にはわからねえんだよ」
千手は、 夏樹たちと違って甘くはない。
裏稼業にどっぷり浸かっていた人間として、正門の神たちを安易に信用することなどできなかった。
千手は、幾度となく死にかけた。
その大半が、人間に殺されかけている。
にこやかな笑顔を浮かべる人の良さそうな依頼人が、金を支払いたくないからと殺意を向けられた。
大切な家族を殺されたと泣いた女性が、実は犯人であり、真実を知った千手を口封じしようとした。
どれだけ口で感謝をしても、どれだけ悪意を否定しても、結果を見なければわからない。
人間でそうなのだから、神々であれば容易く真意を誤魔化すことだってできるだろう。
「なにも、あんたたちが嘘をついている、悪意があると確信して言っているわけじゃねえ。俺だってそう信じたい。だがな、口だけではなんでも言えちまうんだよ」
「……あなたの言うとおりだ。しかし、我々には自分たちの言葉が事実であると証明する方法がない」
(――無条件に信じてくれと言う奴よりもよほど信用できるな。俺だって、信用してねえわけじゃねえんだ。だけどなぁ、俺くらいがこのくらい言わねえと、由良の奴が次々仲間を増やしやがる。それはいいんだが、そんなに戦力を集めてどうするって言うんだ。新たな神々と全面戦争するわけじゃあるまいし)
千手は自分の思考でダラダラと冷や汗を流した。
(な、ないよな? さすがに由良だって奴らと全面的に戦うわけ、ないよね!?)
冷や汗に続き、ガクガクと震えてくる。
「そうじゃのう。おどれらが信用できるかどうかわからんのは千手の言う通りじゃ。まあ、おどれらが新たな神々の愉快な一派に加わらんのなら、放置でええような気がするんじゃが、どうする、千手?」
「姐さん、俺にそれを聞かないで欲しいんですが」
「いや、俺様は真面目な話は三分しかできんからのう」
「あと二分三十秒くらいあるじゃないですか! ほら、決めちゃってくださいって!」
「……そうじゃのう。ならば!」
――かっ、と小梅の目が大きく見開く。
「おどれらは今日から月読ファミリーの新入りじゃ!」
「姐さんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!?」
やはり自分で門の神たちの処遇を決めればよかった、と千手は後悔しながら、これから間違いなく後悔する自分と月読先生に涙を流し、気絶した。




