22「その時、不思議なことが起こったんじゃね?」②
「やあ! 河童大神様に仕える敬虔なる使徒にして、河童さんたちの守護聖人! 全ての河童さんは俺が守る! ギャラクシー河童勇者っ! 参上っ!」
蒼穹の星槍を肩に置いた由良夏樹が爆炎の中から現れた。
「ありえない! ありえない! ありえない!」
「それがありえちゃうんだなぁ!」
「ふざけるな! 僕がその扉の中にどれだけの力を注ぎ込んだと思っているんだ! 様々な異世界から傑物を集めたんだぞ! それを、無傷で、しかも内側から破壊して出てくるなんて非常識すぎるだろう!」
「――ギャラクシーですから」
「意味がわからないんだよ!」
「ていうかー、雑魚を山のように集めても所詮は雑魚なんですけどぉ! 俺を殺したいのなら、せめて同格を呼んできやがれ!」
「ふざけるなぁあああああああああああああああああ!」
門の神は叫んでいるが、その身体は震えていた。
彼は、ようやく夏樹を恐れたのだ。
本来ならば、関わってはいけない存在であるのだと、ようやく思い知ったのだ。
「……ま、まだだ、僕は神だぞ! 数多の世界を行き来できる、選ばれた神だ!」
しかし、門の神は己を奮い立たせて夏樹を睨む。
彼は大きなミスを冒した。
門の神は、夏樹に立ち向かうべきではなかった。全力で逃げに徹するべきだったのだ。
「俺は偉大なる河童大神様に選ばれたギャラクシー河童勇者だ!」
「そんな神などいない!」
「――哀れな。高次元な存在をお前程度が認識できるはずがないだろう!」
夏樹は槍を構えた。
「小梅ちゃん、みんな! あ、一登たちもいるじゃん! ま、いいや! とにかく雑魚どもは任せた! 俺は門の神を八つ裂きにする!」
「任せるんじゃ! さっさとぶっ殺したれ!」
「おう!」
夏樹が紫電を纏う。
ばちっ、と音がしたと同時に夏樹の姿が消えた。
「――な」
門の神が一度だけ瞬きした瞬間、夏樹が眼前にいた。
「あ」
そして、星槍が腹部に突き刺さっていた。
にぃぃ、と夏樹が笑う。
焦った門の神が槍を握り己の身体から引き抜こうとする。
しかし、星槍に触れた瞬間、門の神の腕が雷に撃たれ爆ぜた。
「気安く触っていい相手んじゃないんだよ、星子さんはさぁ! ――輝け、蒼穹の星槍!」
「――やめ」
星槍が雷を放った。
魔力の込められた、殺傷能力が凄まじい雷だった。
門の神の内側から雷が流れ、体内で暴れ狂う。
「――――――――――」
門の神は叫ぶことすらできない。
肌を雷が突き破り、焼いていく。
口から、鼻から、目から、耳から、肉体を焼き尽くす雷が溢れ出る。
「うらぁあああああああああああああああああああああ!」
さらに魔力を叩き込み、雷を強くする。
そして、夏樹は全力で門の神に刺さった星槍を薙いだ。
炭化した肉体が二つに分かれ、アスファルトに転がった。
焼け爛れた門の神の顔だけが、一番マシだった。
両目を失いながら、まだなんとか動く口で門の神は呪いの言葉を吐く。
「ゆ、ら、夏樹、貴様は、人間じゃない……勇者でも、ない、もっと邪悪な、なにか、だ。僕は、負けたが、他の神が、お前を、ころ、す、くるしんで、し、ね」
最後の力を振り絞った門の神は絶命した。
夏樹は星槍をくるりと回して肩に置くと、ふん、と鼻を鳴らした。
「だったらお前の仲間を全員殺してやる」




