100「守谷盛夫の過去じゃね?」
守谷盛夫はとある異世界に召喚された七人の内のひとりだった。
クラスメイトたちと一緒に異世界に召喚され、そこで力を得た。
勇者ではなかったが、異世界にて力を得たのだ。
守谷を召喚したのは、戦争に巻き込まれた小国だった。
小国の王女が周囲の反対を無視して、ここではない別の世界に助けを求めたのだ。
それは問題なかった。
力を与えられ、その力を使い、戦う場を用意してくれるなど、盛夫にとって夢のような世界だった。
日本での日々はうんざりだ。
口うるさい両親と、自分を小馬鹿にする兄弟、そしていい子ぶっているクラスメイトたち。すべてが大嫌いだった盛夫にとって、そんな日常から脱して異世界で過ごすことができるのは幸せだと思った。
盛夫は、感謝に働きで返した。
戦いを求められたのだから、全力で応じた。
自分の身体が傷つこうと、国のために、共に戦う戦士たちのために、国で待つ民のために全力で戦った。
勇者ではないが、得た傀儡の力で数多の人形を、屍を、魔物を操り敵を殺した。
この国のために、この世界に呼んでくれた恩人のために、戦い続けた。
そして、英雄と呼ばれるようになった。
誰もが盛夫に感謝した。
戦争に勝利したあとでも、力を持つ盛夫を危険と思うことはなく、王も王女も、貴族たちも感謝の言葉をくれた。働きに見合った地位をくれた。
かつて、どれだけ努力しても認めてくれなかった家族とは違い、働きには働いただけの評価をしてくれるこの国と人々を盛夫は愛していた。
――だから、同じく異世界に召喚され、力をもらいながら、何もしない同郷の人間を嫌悪し、恥じていた。
彼らは、羨ましいくらい強い力を持っているのに、戦わない。
彼らにとって幸だったのが、盛夫がひとりで戦争を終わらせることができたことで、戦う必要がなかったことだ。
そして、盛夫はそれが気に入らなかった。
あろうことか、彼らは盛夫に嫌悪と侮蔑を向けて「よく人を殺せるね」と言った。
その瞬間、盛夫は彼らの存在理由に疑問を覚えた。そして、いらない存在であると理解した。
だが、ただ殺してはせっかくこの世界に呼んでくれた国の利益にならない。そこで、傀儡として使役することにした。
力を持った人間を、人形として操ることができれば、戦力はさらに上がる。
さらなる力を得た盛夫だったが、ひとつだけ誤算があった。
同郷の人間のひとりが、王女と親しい仲だったことだ。
戦ってもいないくせに、王女とよろしくやっていたことに憤りを覚えたが、恩人である王女が幸せならいいと思ったのだが、王女は不幸だった。なぜなら、一度傀儡にした人間は二度と元に戻らないからだ。
王女は盛夫を元の世界に送り返してしまうこととなる。
感謝をしているからこそ、恨まない。
盛夫がいなかったら国が亡くなっていたとわかっているから、呪いの言葉を吐かない。
だが、一緒の世界にいたくなかった王女は、盛夫を強制的に地球に戻してしまった。
その時、王女に協力したのが――「門の神」だった。
盛夫は、王女を恨まなかった。憎まなかった。
彼女には大恩があるからだ。代わりに、門の神を憎んだ。絶対に殺すと決めた。
日本の我が家に戻ってきた時、実に一年の時間が経っていた。
家族は盛夫を見つけると、口汚く言葉を吐いた。
あまりにも感情的な言葉はよく聞こえず、不愉快だった。
そこで、盛夫は家族に傀儡をかけ使役した。
意識をそのままに、死ぬまで踊れと命じた。
足が折れようと、千切れようと、命が尽きるまで永遠に踊り続けろと命じた。
その家族は、一週間ほどで死んだ。
盛夫はこの力を好き勝手に使うべきか悩んでいたが、そんな折、同じく異世界にいて帰還したという柏原保と出会い、「帝国」に加わった。
そして、力を使い、神を殺すことに決めた。邪魔をする奴もすべて殺すと決めた。
――そして、志半ばで守谷盛夫は死の神によって殺されたのだった。




