76「いい人が損することって許せなくね?」①
ありすは自身に起きた勇者召喚と異世界での日々、そして地球に帰還してからの出来事を隠さずに小梅と花子に語った。
「わたくしはもう限界でした。「帝国」にも「新たな神々」からもどちらに付くのか答えを出せと迫られています。最悪の場合、両者とも戦いになる可能性があります。だから、私は由良夏樹様に助けていただきたかったのです」
過去を語ったせいか、それとももう隠している余裕もなかったのか、ありすは本音を吐露した。
ありすは由良夏樹をスカウトしたかったのではない。
もちろん、スカウトできて協力関係を築くことができれば喜んだだろう。
だが、それ以上に、助けて欲しかったのだ。
「……そうじゃったか、苦労したのう」
「そうね。よく頑張ったわ」
「――っ、ありがとうございます」
小梅と花子は、優しい目をして言葉こそ少ないがありすを励ました。
「普通」の生活をしていた少女がしなくていい苦労をこれでもかとしている状況に、同情心さえ抱いてしまう。
責任感が強い、生真面目な性格が災いしたのだろう。
ありすは不必要に、重荷を背負っているように感じてしまったのだ。
「あー、そのなんじゃ、聞き辛いんじゃが、なんでありすは仲間に頼らんのじゃ?」
「……それは」
「数は少なくとも仲間はおるんじゃろう? ありすが護衛がいるとはいえ仲間も連れずに夏樹に会いに来たことも、大金を用意したこともなんじゃかひっかかるんじゃが」
「そうよね。ありすが「帝国」だっけ? その組織で上の方にいたとしても、仲間たちは何をしているの? お金だって、あなたひとりで準備したのでしょう? 仲間があなたにおんぶに抱っこってちょっと違うんじゃないの?」
小梅と花子の言い分はもっともだった。
夏樹に会いにくるのも、夏樹のために用意した金の準備もすべてありすがやっている。
多聞が手伝っているのだろうが、では、仲間は何をしているのか疑問でしかない。
周囲を探るも、移動する車を監視している者はいない。
つまり、ありすの護衛は多聞だけである。
さすがにそれはおかしい。
何もかもありす任せであれば、彼女の仲間は仲間とは言えない。
「わ、わたくしがトップですので、仕方がないのです」
「そう言ってものう」
「というか、どうしてありすがトップなの?」
「……一番強いからです」
「なんじゃ、それは? ありす、おどれはそれでいいんか?」
「言いたくないけれど、利用されているだけじゃないの?」
「そんなことっ、そんなこと、ありません。わたくしは、ただ……同じ境遇の方たちに安心した生活を送って欲しいだけなのですわ!」
「気持ちはわかるけれど、そのためにありすが犠牲になるっていうのは何かおかしくない? あなたばかり負担があるじゃない。正直なことを言うけど、私たちにも心や感情はあるのよ? 一生懸命なありすのことは助けてあげたいと今思っているけれど、あなたに丸投げしているだけで何もしないあなたの仲間たちは……助けたくないわ」
花子がはっきり言うと、ありすは唇を噛んだ。




