64「休みの日くらいイベントなくてよくね?」①
――朝、七時。
目を覚ました夏樹はゆっくり身体を起こすと、うーんと背筋を伸ばす。
ベッドから起き上がるとカーテンと窓を開け、太陽が輝く空に朝の挨拶をした。
「――Guten Morgen! Was für ein schöner Morgen《素敵な朝だね》!」
ふう、と満足した夏樹が窓を閉める。
「……いやいやいやいや、叫ばないで起きるのかっ! って思っていたのに結局叫ぶんじゃねえか!?」
「サタンさん、おはよう。今日も素敵な朝を迎えることができて最高だよ!」
「寝起きでテンション高すぎだろ。目が血走っているし、怖いんだがな」
「最近ね、寝ても覚めてもイベントだから寝た気がしないというか、身体は休んでいるみたいだけど心がまったく休んでいないだよね!」
「お、おう」
時間こそしっかり眠っているはずだが、夢の中なのか精神世界の中なのか不明だが、夏樹は海の神と風の神と一緒に常夏のビーチで過ごしていた。
そのせいだろうか、肉体は休んでいるのに、心が休んでいないため、疲れている。
「寝る前にエナジードリンクをがぶ飲みした気分だよぉ」
「そ、そうか。なんだ、幸いというべきかどうか悩むが、今日は学校休みなんだからゆっくり休め。な? 春子さんたちには言っておくから、夕方までダラダラしていればいいさ」
「……うん。朝ごはん食べてから寝りゅ」
よほど疲れているのだろう。
夏樹は充電し忘れているスマホを手にすることもしない。
「とりあえず飯だな。ちゃちゃっと作るから、しっかり食べろよ。身体を作るには食事だからな。ほら、一回、顔洗ってこい」
「……うん」
背中を丸めて元気なく部屋から出ていく夏樹をサタンは見送った。
「……疲れているのなら、なぜ全力で寝起きに叫んだんだよって言うのは野暮か」
サタンは手早く着替えをすると、朝食を作るために部屋から出る。
階段を降りていく途中で、ふと、思った。
「ダラダラしろと言った手前、こういうことは考えたくないんだが――だいたい休もうとする時に限ってイベントがありそうだよなぁ」
夏樹の場合は、毎日がイベントではあるが、たまにはごく普通の中学生のように特に目的もなにもなくダラダラとベッドで転がる日があってもいいのではないかと思ってしまった。
「さてと、春子さんは夕方までお仕事だから力入る朝食とお弁当を作るか!」
サタンも洗面所で顔を洗うと家族のために朝食の支度を始めるのだった。




