62「相手を知ることって人間関係で重要じゃね?」②
もじもじしながらホラーさんがなんとか捻り出した言葉は、夏樹の趣味を尋ねるものだった。
「えーっと、あの、俺の趣味……趣味ってなんだ? 特技なら胸を張って鏖殺だと言えるんだけど、趣味って……うーん、あ! 河童さんたちと戯れることです!」
「……………………………………素敵ですね」
「でしょう! ホ……じゃなくて、海の神さんのご趣味は?」
「……………………………………ありません」
「ないんかーい!」
反射的にツッコミを入れると、ホラーさんがびくぅっとしてしまった。
夏樹は反省した。
「あ、ごめんなさい。ついいつものノリで」
「……………………………………いえ」
「ところで、ちゃんと話せるじゃないですか! 毎晩毎晩、ホラーみたいな展開だったからなっちゃん怖かったんですよお! でも、思いの外ちゃんとお話しできて安心! これで今日のお布団には大きな世界地図を広げずに済みそうですねー!」
「……………………………………ん」
(……か、会話が続かないっ!)
助けを求めて風の神に視線を向けると、「お姉ちゃんったらこんなにおしゃべりできる様になって」と感涙していた。
(えぇぇぇぇ……これで会話できているほうなんだ! 人見知りって言っていたけど、本当なんだね)
「……………………………………あの」
「うっす!」
「……………………………………怖がらせて」
「はい!」
「……………………………………ごめん」
「うぇい!」
「……………………………………なさい」
「いえいえいえいえいえ! 気にしないでください! なっちゃん的に、余裕でしたし? 絶叫と共に起きるくらいだったから、へーきへーき!」
「……………………………………ありが」
「うっす!」
「……………………………………とう」
「お気になさらず!」
(なんかやり辛い! 最初はちょっとくらい文句を言おうと思っていたんだけど、絶対言えねー!)
夏樹も人見知りながら一生懸命に話をしてくれるホラーさんに、いつもよりもテンション高めに返事をしていくだけだ。
「そういえば裏京都ではお世話になりました。茨木童子さん強かったから海の力なかったら負けていましたよー。どうもありがとうございますっ!」
「……………………………………?」
茨木童子との戦いの決定打は、海の力だった。
蒼穹の星槍こと当時は聖剣さんだった、星子が制御してくれたこともあったが、海の力を使えたからこそ勝利できたのだ。
しかし、お礼を言う夏樹に対して、ホラーさんは不思議そうに首を傾げた。
「あー、夏樹くん。そちらに関して、私からフォローさせてもらいますけど、お姉ちゃんはその時に特別力は貸していません」
「そうなの!?」
「夏樹くんがちゃんと力を使おうとしてくれたので感動して泣いた時の涙が溢れただけです」
「そんな馬鹿な!?」
「夏樹くんが使える範囲の力を超えた部分はお姉ちゃんの涙です」
「……それはそれでかっこいい」
(……いいたかったなぁ、この力は海の涙だって)
「えっと、お姉ちゃんは口下手なのでいくつか補足させてもらいますね」
「はい」
「まず、蒼穹の星槍さんとの関係ですが、彼女は話し方が早いですし、お姉ちゃんが返事をするのを待てなかったようでして……意思疎通ができなかったわけではなく、お姉ちゃんのタイミングに蒼穹の星槍さんが合わなかったといいますか、なんといいますか」
「あー、そういう感じなのね」
「ええ。お姉ちゃんが返事をしようと一生懸命に言葉を考えている間に、怒ってしまったそうです」
「……星子さん……まあ、でも知らないとそうだよね。ごめんなさいね」
星子の代わりというわけではないが、夏樹が謝罪するとホラーさんはこくりと頷いてくれた。
「お姉ちゃんは気にしていませんよ。むしろ、申し訳ないと思ったようです。だからこそ、強敵と無駄に戦う夏樹くんの力になろうと頑張って接触を試みたんですが」
「……あれ、いま、無駄って言わなかった?」
「気のせいです! 頑張って接触を試みた結果、……いろいろお察しください」
どうやらホラーさんなりに頑張った結果、あのホラー展開がたくさんの夢だったようだ。




