60「相手の優位に立つには秘密を握れば良くね?」①
「そんな! 大地さんがせっかく海パンの中から出してくれたしっとりしたウィジャボードなのに!」
「ちょ、ずずいって近づけないでください! よく素手で持てますね!? やめて! やーめーてーくーだーさーいー!」
ウィジャボードを握りしめ、印籠のごとく掲げて風の神に押し付けようとする夏樹だが、彼女は必死になって防御した。
攻防を続けながら風の神が叫ぶ。
「あそこにお姉ちゃんがいるのにわざわざウィジャボードを使おうとする方が手間じゃないですか!」
「――その発想はなかった」
「おバカ! この子、おバカ!」
風の神が夏樹の頭をべしんべしんと叩く。
確かに彼女の言う通りだ。
すぐ近くにいるホラーさんを、わざわざ「降霊」させる必要はなかった。
「じゃあ、とりあえず話しかけてみようかな」
「――待ってください。むしろ、そちらが問題なんです」
「なんで!?」
ウィジャボードよりも問題だと言われ、夏樹は動揺した。
「ちょっとお耳を拝借」
「うっす」
「……あのねですね、お姉ちゃんは人見知りなんです」
「――んんん?」
「海の神……陽キャの方ですけど、彼があんな性格なのでお姉ちゃんとなんだかんだと上手くやっていましたし、私も女の子なので同性としてそれなりに交流があります。大地の神や炎の神も会ったからわかると思いますけど、マイペースなのでお姉ちゃんが人見知りだろうと知ったことじゃないという感じで接します」
「想像できるよ」
「なので夏樹くんにはぜひ慎重にお姉ちゃんと接してほしいんです。陽キャの神と違い、始まりの海の神ですからね。存在そのものが違うんです」
「わかっている。察するに、河童大神様と同等の存在――んぼっ」
平手打ちされた。
「ひどい!」
「こっちは真面目に言っているんですよ!」
「こっちも真面目だよ!」
「河童大神ってなんですか!?」
「河童とギャラクシーを統べる偉大なる神だよ!」
「この子、頭おかしい!」
「……さっきから俺のことを変人扱いしやがって、向島一の紳士と謳われたなっちゃんもさすがにオコだよ!」
「…………言っておきますが、私はこの世界から出るために君の中を調査しました。その結果、君がこっそり外付けハードを机の奥深くに隠していることを知ってしまいました」
夏樹は大の字になって倒れた。
「――あんたの勝ちだ、好きにしろ」
「……こんなこと言いたくありませんけど、ノリが陽キャの神の若い頃と一緒なんですよねぇ」
「なんか嫌!」
「でしょうね。はぁ。とりあえずお姉ちゃんとの関係に関して、私も上手くいってほしいと思っているのでちょっと待っていてくださいね。話をしてきますから」
「お願いします!」
「代わりに、夏樹くんの中から出る協力をしてくださいね!」
「…………どうやって?」
「一応、君の中の世界なんですけど」
「常夏のビーチにしたのはあんたのお友達の陽キャの神だよ!」




