59「急に部屋を開けられるとびっくりするんじゃね?」③
「そんな!?」
「……それはこっちのセリフなんですけど! ていうか、風の神さん俺の中に置いていかれちゃったの!?」
「そうなんですよ! 焼きそば食べたくて買いに行ったら、いつの間にか……せっかくみんなの分を買ってきたのにっ! だから、今は私が焼きそば焼いているんです!」
「最後の情報はどうでもいいけど!?」
「だから私を解放してください!」
「俺の中に居座らないでください!」
風の神はどうやら夏樹の中から出ていくことができないらしい。
夏樹としては、いつまでも自分の中にいてほしくない。
結果、ふたりは泣いた。
「ふぇええええええええええええええええええん!」
「うわぁあああああああああああああああああん!」
「バイトを無断欠勤しちゃったらどうするんですかぁああああああああ!」
「神様がバイトするなよぉおおおおおおおおおおお!」
「しないと生きていけないんですよぉおおおおおおおおお!」
「神様なのに世知辛いよぉおおおおおおおおおおお!」
「物価高騰やばいんですからねぇええええええええ!」
夏樹も風の神も混乱しているのだろう。
きっとお互いになにを言っているのだ、という感じになっているはずだ。
しかし、残念ながらふたりを止める者はいない。
「…………あ」
砂まみれになったホラーさんが、夏樹たちを止めようと手を伸ばしてみるが、どう声をかけていいのかわからないようだ。
オロオロしていたホラーさんだったが、しばらくして諦めてしまい俯いてしまった。
同じタイミングで、夏樹と風の神も自分たちに対し「なにをやっているんだろう?」と我に返った。
「ごめんなさい、取り乱しました」
「うん、こっちもごめんなさい」
仲直りの握手を交わす。
「とりあえず、聞きたいんだけど」
「なんでしょうか?」
握手をしたまま夏樹は風の神に頼ることにした。
「あのね、俺はホラー……じゃなくて、俺に力を与えてくれているそちらの海の神さんとお話をしたいんだけどさ。今まで幾度となく夢の中で会っては、なぜかホラー展開ばかりでそろそろ俺が布団の上に壮大な世界地図を描いてしまうかもしれないのでなんとかしたいんですけど」
「……あー」
さすがに本人を前にしてホラーさんと言うのはやめておいた。
ショックを与えたいわけではない。あくまでも友好的に接したいのだ。
風の神にも言ったが、そろそろ限界だ。
ホラーであることは覚悟しても、その時その時で演出が違うのが怖すぎる。
それでなくとも、海に浸かっている夢というだけで漏らしてしまう可能性があるのに、畳み掛けるようにホラー展開も待っているのだ。
いくら夏樹が勇者であっても、膀胱まで鍛えることはできない。
「ホラー展開だと覚悟して夢の中に来たら、思いっきりバカンスしていたのもある意味ホラー展開だったんだけど、そろそろきちんとお話をしたくてさ。大地の神さんからもらったウィジャボードをもらってきたし、なんとかならないかな?」
「――難しいですね」
風の神は渋い顔をしてしまった。




