55「ぬめりを取るには重曹とクエン酸じゃね?」②
時間はかかったが、夏樹はなんとか昼休みに青春すみれによって誘われた夢の中で起きた出来事を伝えた。
「なんちゅーか、頭が割れるて花が咲きそうな話じゃが……つまり、夏樹の夢じゃか心の中じゃか知らんが、原初の海の神、大地の神、炎の神、風の神が遊びにきておったということじゃな?」
「――ざっくりまとめるとそんな感じ!」
話が通じたようでなによりだ。
サタンは「いろいろありえねえだろぉ」と頭を抱えている。
「普段は夜の海の夏樹の中が、その時だけなーぜーかー常夏のビーチじゃったと」
「うんうん!」
「んで、海の神が陽キャよろしくバーベキューをしたと」
「マヒマヒも食べたよ!」
「おどれの中にマヒマヒおるんか!?」
「なんか居たのよ」
「……まあええ、それで、お土産かなんじゃがわからんが大地の神が、夏樹の力の所以であるもっと古い海の神とコンタクトを取るためにとウィジャボードをくれたんじゃな?」
「イエス! パンツの中から取り出してくれたんだ!」
「…………」
「…………」
「…………まさかとは思うんじゃが、しっとりぬるぬるしとるのは」
「パンツの中から出てきたからじゃないかな」
「ぎゃぁあああああああああああああああああああああっ!」
夏樹が持っているウィジャボードに手を伸ばしかけた小梅が絶叫と共に、手を引っ込めた。
「なんちゅー呪物を持ち込んどるんじゃ! もらった人に返してくるんじゃ!」
「善意しかないからいらないって言えずに……返すことも無理っぽいです」
「祐介の部屋に投げ込んでこんかい!」
「そんな酷いことできないよ!」
「彼奴、最近、婚約者ができたからと調子乗っ取ってうざいし、ちょっとくらい痛い目を見せてもええじゃろうて」
「ひどっ!」
異世界に召喚されて酷い目に遭った祐介だが、ようやく幸せを掴んだので友人として今は静かに見守ってあげたいと思っている。
それに、うざいのはいつものことだ。
「祐介はさておくとして、なんで大地の神はウィジャボードを夏樹に渡したんじゃ?」
「ホラーさん……あ、俺の海の力の女性ね。その人がホラーすぎてコンタクトが取れないのなら、ウィジャボード使ったらどうかって」
「……さすがにホラーさんは言いすぎじゃろうて」
「これでも?」
夏樹は首に残る手形のアザを小梅に見せる。
朝も見せたが、改めて見てもらった。
「まごうことなくホラーさんじゃな!」
「ホラーさんでしょう!」
結論、やはりホラーさんはホラーさんだった。
「待て、夏樹」
「どうしたの、サタンさん?」
「海の神たちは、夏樹の力である海の神と知り合いなんだろう? とりなしてもらうことはできなかったのか?」
「俺もそう言ったんだけど、どうやらホラーさんは昔から人見知りのようで……」
「人見知りとホラーじゃ全く違うんだがな」
「安心してよ! 大地の神さんからもらったねっとりしっとりしたウィジャボードを使って俺はホラーさんと会話してみせる!」
「……めちゃくちゃフラグに聞こえるのは俺だけかな?」
「俺様はホラーさんじゃないんじゃが、どこぞの男のパンツから出てきたしっとりしたウィジャボードでコンタクト取ろうとしようもんなら、全力で逃げるんじゃが」
サタンと小梅は、夏樹が失敗するんじゃないかと思った顔をしていた。
「おっと、話はこのくらいにしようよ。いつお母さんがお風呂から出てくるかわからないし」
「ふっ、甘いな夏樹。春子さんはお風呂好きで、最近疲れてもいるから、あと三分と二十四秒出てこないから安心しろ」
「…………なんか普通にきもい」
「キモすぎじゃろう! 今までで一番キモいんじゃが!」
「うわぁ」
「きも」
サタンがどのような計算をしてそのような答えに行き着いたのか不明だが、いろいろキモかった。
これには夏樹と小梅だけではなく、星子と菜々子もドン引きだった。




