49「復讐を試みる敵ってだいたい失敗しね?」
「ちくしょう! ちくしょう、ちくしょうぉおおおおおおおおおおおおおおお!」
門の神は隠れ家で、痛みに呻きながら苛立ちを隠せずにいた。
眠っていたベッドをひっくり返し、テーブルを粉々に砕いても怒りはまるで治まらない。
「僕は、念には念を入れて対策したんだ。先代のようにならないように、厳重な結界を張った中に僕自身を隠し、写し身で綾川杏に接触したんだ! なのにっ、なのにっ!」
門の神の右腕がなくなっていた。
本体に戻ったと同時に、腕が切断されたのだ。
血を撒き散らし、絶叫で飛び起きた感覚はあまりにも不愉快極まりない。
「あの名前の長い女め……試作段階とはいえ、由良夏樹を閉じ込めるための門をあんなにも容易く、それも内側から破りやがった! あの世界を作るのに、どれだけの力を使ったと思っているんだ! 破壊するなんて、不可能なはずだったのに!」
腕を押さえ、涙を流しながら、門の神は悔しがる。
夏樹を作り出した世界に閉じ込め、集めてきた勇者をぶつける作戦が台無しになった。
すでに幾人かの勇者を確保しているが、命じた新たな神々の動きがずさんだったせいか、警戒されて隠れてしまった勇者たちもいる。
「由良夏樹も、許さないっ! 僕の写し身を消し飛ばしやがった! あれだけの写し身を作るのにどれだけの労力をかけたのかわかっていないだろう!」
夏樹にけし飛ばされた肉体は毛ほども残っていないだろう。
そのことを考えただけでも、腑が煮え繰り返りそうだ。
「いくつか作戦を修正しないと。必ず、次に由良夏樹を殺すんだ。あの名前の長い女がギャラクシーを名乗っている以上、由良夏樹の関係者であることは間違いない。あんな化け物を相手になんかできるか! 由良夏樹だけでも面倒臭いのにっ!」
正直に言えば、門の神にはそこまで戦う力はない。
先代門の神よりは、スペックも格も上だが、戦いに対しての熱意がない。
門の神にとって、太陽の神を解放することはどうでもいいことだ。
新たな神々として同胞たちに力を貸すが、欲を言うならばのんびり自堕落に過ごしたいのが本音だ。
――だが、今、門の神の中に明確な行動理由ができた。
「絶対に殺してやる、由良夏樹。そして、その仲間ども。僕が、全力を持って殺してやる」
新たな神々としてのプライドをかけて、門の神は絶対に夏樹たちを殺すと誓った。
■
――向島市の郊外にて。
「これはこれは、素晴らしい力ですね。さすが由良夏樹といったところでしょう」
魔眼の勇者柏原保が夏樹の力を感じ取って、薄く笑った。
「自称勇者ということでどれだけのものかと気にはなっていましたが、なるほど。それなりに強いということは理解できました」
保の目的は、「帝国」に力を持つ者を集めて、新たな神々と戦うと同時に、支配者になることだ。
そのために、自称勇者の夏樹にも目をつけていた。
「いずれ会いにいきますよ、由良夏樹くん。君が、我々「帝国」に相応しいか確かめに」




