98「力に振り回されていてはまだまだじゃね?」③
「――で、実際問題として、夏樹が海の勇者としての力を持て余しているとしてじゃ。解決策はあるんか?」
「ないわね」
「ないんか!」
ない、と断言した星子に小梅が怒鳴った。
「だって、あとは夏樹が成長するとか、私を今以上に使いこなせるようになるとか、なんかよくわかんない覚醒とかして海の力を押さえつけることができるとかしないけりゃ無理なんだもん!」
「だもん、て」
「本来なら、海の力が夏樹に協力して力を使わせればいいのに、会話ができないから仕方がないじゃないの!」
「おどれが独り占めしたせいじゃないんか?」
「だーかーらー、それ以前の問題として会話ができなかったのよ!」
結局のところ、解決策はないに等しかった。
例えば、これが後転的に得た力であれば、切り離すこともできたかもしれない。
リスクはあるだろうが、できないことはないだろう。
夏樹だけならいざ知らず、魔王サタン、月読先生もいる。何かしらの処置ができる可能性がある。
しかし、海の勇者としての力は、夏樹が生まれながらに持つ力だ。
どのような理由があって、夏樹が選ばれたのかわからない。なぜ、海の力に意思があるのかも不明だ。
それでも、意思疎通ができず、使いこなすこともできない、使えば身に危険がある。
ある意味、夏樹にとって敵よりも内に秘める力の方が命の危険を脅かす存在なのかもしれない。
「いっそ、力を封じてしまうってことはできないっすかね?」
銀子の提案に、星子が唸る。
「できるとは思うわ。私が海の力を抑えることはできたから、無理ってことはないでしょうね。でも、私にできるのはあくまでも一時的な制御と無理やり抑えつけることだけ。封じるなんてことはできないわ。できるとしたら、強大な力を持つ者だけよ」
一同の視線がサタンに向いた。
「俺か? まあ、なんだ。残念だが、封じるやなんやは不得意だ。一般人ならちょちょいとできるが、夏樹の場合は力が強すぎるからなぁ。無意識の抵抗力を考えると、難しいな」
「役に立たんおっさんじゃな!」
「ひどいっ、小梅ちゃん! あのね、パパはあくまでもイケオジの太一郎さんとしてここにいるの! 魔王サタンじゃないの! 力だってこれでもかってくらいに削ぎ落としてきたんだもん!」
「いい歳のおっさんがだもんとかキモすぎじゃ!」
「サタンさんキモくないもん! それに、俺は魔王だぞ! 殺すとか壊すとかそっちの方が得意んなんだよ! それに、なんだ、あまり言いたくないんだが、魔王として力を使わないと決めている。夏樹のことは息子のように思っているが、例外はない」
「じゃが、春子ママは?」
「春子しゃんのためなら、このサタン! 命を捧げよう!」
「例外あるじゃろうが!?」
「助言をさせてもらうと、そのままにしておけ。会話ができないって言うのは、星子の意見だ。まだ夏樹は会話を試みていないだろう。力だって宿主を殺したくないだろうし、まずは向き合えって。まあ、ホラー展開でくるから向き合いづらいだろうが、こつこつやっていって、無理なら月読や、なんの制限もなく地上に降りてくる素盞嗚尊にでも頼め」
「はぁ。本当に、我がクソ親父は役に立たんのう」
「……あのね、小梅ちゃん。言い訳じゃないんだけど、夏樹ってクッソ強いの。なに食べて育ったらこんなの強くなるのってくらい強いの! そんな夏樹の力を封じるなんて、よほどの神じゃないと無理だからね! しかも、夏樹が弱体化するリスクだってあるんだから! そこら辺をよーく考えて、今後のことをきめなさい」
夏樹の弱体化、という言葉に一同は悩む。
なんだかんだと夏樹はトラブルに巻き込まれているのだが、規格外の強さで乗り越えてきた。
強すぎるのはさておき、その力が弱まってしまうのは困るのではないかと思えたのだ。
「というか、静かじゃのう、夏樹。おどれのことを話しているんじゃが、なんか意見は…………」
「むにゃむにゃ、いえ、すみません……俺は、きゅうりには味噌ではなくもろみ派で、いえ、そんな、決して他の派閥を邪険にするわけではなく、いえ、いただきます。生クリーム最高ですねぇ」
「寝とるし、どんな夢見とるのか口で全部言っとるんじゃが! ええい、起きんかい!」
静かだった夏樹は居眠りをしていた。
星子を肩車したまま器用なことだった。




