84「ライバルって大事な存在じゃね?」①
女子会が盛り上がっている最中、夏樹と一登とサタンはゲームで対戦して盛り上がっていた。
夏樹はゲームは好きだが、得意ではない。以前はロールプレイングが好きだったが、現在はファンタジーをわざわざゲームでやりたくないので控えている。
一登は格闘系からこつこつやっているゲームが好みのようだ。
サタンは面白ければなんでも挑戦すると言っているが、様々なゲームをプレイしてきた実力は凄まじく夏樹と一登は勝てなかった。
「魔王強すぎぃ!」
「何してもかてなかったよ」
「魔王ですから」
きりっ、とする魔王は夏樹と一登から見てもかっこよく、輝いていた。
「っと、もうこんな時間だそろそろ帰らないと」
「えー、泊まっていけばいいのに」
「さすがに家族に怒られちゃうよ」
「俺たちも家族じゃないか!」
「――とくんっ」
「……そういうのいいから、一登の親御さんだって心配するだろう。一応、兄貴が事故死ってことになっているんだから」
「一登ってお兄ちゃんいたの!? 浮気者! 俺がお兄ちゃんなのに!」
「だからそういうのは面倒くさくなるからおやめっ!」
サタンが夏樹の頭を引っ叩いて落ち着かせる。
夏樹は本当に忘れているのか、なかったことにしたいと意地を張っているのか不明だが、一登には優斗という兄がいた。
何かと問題のある人物だったが、欲望に忠実だった結果、ファンタジーに巻き込まれて亡くなった。
しかし、ご両親に詳細を言うことができないので、いろいろな力を借りて事故死したと偽装したのだ。
一登の両親は、息子の突然すぎる死に悲しんでいるが、同じくらいほっとしているようだ。
夏樹の母春子が一登のご両親を心配し、定期的に顔を見に行っている。一登のことも、いつでも遊びに来てほしいと気にかけてくれているのだ。
幼い頃から夏樹と一緒だった一登は、春子にしてみたらもうひとりの息子のような存在なのかもしれない。
「最近、お母さんもお父さんも口数が増えて少し元気になったんだよね。もともとクソ兄貴のせいで家族も壊れかけていたからさ、ここから新しい家族の形になればいいなって思うんだ」
「そっか。なら、また改めて泊まりにこいよ。サタンさんと、ジャックが帰ってくればみんなでまた枕投げしようぜ!」
「……勇者と魔王と宇宙人と枕投げか。きっと誰も信じてくれないんだろうなぁ。ドヤ顔して自慢したいんだけど」
「千手さんも呼んだら厨二病魔眼持ちも加わるぜ!」
「それ、絶対に千手さんの前で言っちゃ駄目だからね。ぶっ飛ばされるよ?」
そんなことを言いながら片付けをして、一登は身支度を整えた。
三人で部屋を出ようとした時、
「――――っ」
サタンが何かに気づいたように、足を止めた。
「サタンさん?」
「どうかしましたか?」
かつて見たことのない顔をしているサタンに夏樹たちが首を傾げた。
「――来た」
「え? 誰が?」
「……夏樹。この圧倒的な存在感に気づかないのか?」
「え? え?」
周囲を探ってみるが、特別奇特な存在感はない。
残念ながら、夏樹は周囲への察知が雑だ。
何よりも、由良家というひとつの場所に、魔王、天使、魔族が集まっているのだからちょっとした力を持つ者が近づいても察することは難しいのだ。
この状態で周囲を探るとなると、かなり気を遣う。
相手に敵意や悪意さえあれば、敏感に気づくことができるのだが、それも今は感じない。
「――俺のライバルが来た」
「サタンさんのライバルって?」
「えっと、さまたんですか?」
「違う! あいつは今は飲み仲間なんだ! そうじゃないんだ。俺にとって、人生を揺るがすほど圧倒的なライバル。――綾川誠司が来た!」
サタンが一筋の汗を流した時、由良家のチャイムが鳴った。




