安息の川辺
人間は、フツーの。
人類は、人間やエルフ、その他多数の種族の総称です。精霊は含めません。
「こんなの聞いてないぞ!リーシャアアァァァァー!」
「私だって、知らなかったよー!」
後ろから、体中苔で覆われた象らしき生き物が追いかけてくる。目は血走り、鼻息は荒い。たまに鼻の穴から岩(鼻くそ?)を飛ばして攻撃してくる。
ドカーン
「ぎゃあー!」
「きゃあー!」
かすった!ちょっとかすった!痛い!
なんでこんな事になるんだ〜。
~~~~~~~~~
「こんなものかな。ユニエ、どう?」
川にあった濡れて湿りきった倒木に火がつき、ボンッと音をたて軽く爆ぜた。
ふむ、リーシャの火属性魔法はなかなかの威力だな。弓の腕前も、飛び跳ねるウサギの首に一発で命中させている。この上高い回復力と言霊まで兼ね備えているのだから、だいぶ強いんじゃないか?少なくともそこら辺の動物じゃ、負ける事はまずないな。
「なかなかやるじゃないか。驚いたぞ、まだ子供なのに。」
「まだ子供って、、、ユニエだってそうでしょ。」
くっ、前世を含めれば大人だが、そんな事言ったら〈微笑ましい子〉から〈可哀想な子〉にジョブチェンジしてしまう。真実を告げられない悔しさに涙しながら、
「私の方がお姉さんなのに、、、」
「はいはい。そういえば、ユニエは自分の事とか、どれくらい知ってるの?依り代だって知らなかったじゃない。」
流されたー!明らかに「仕方がない人」と思っている顔だな。なんだかリーシャが手馴れてきたというか。お姉さん発言は封印しよう。
「うー、何も知らん!どうせ私は幼女ですよーだっ!」
拗ねてみせると、
「まったく、お姉さんなんでしょ。むくれないの。」
なんかこの母性が癖になりそうで恐いぞ。引き返せなくなる前に、やめとこう。
霧の事は答えがわからないままだったな。ムラムラの原因は、おそらく渇きが完全に消えたから、性欲が生まれる余裕ができたのだと思うが。
「私はまだ未熟だ。何もわからん。」
リーシャしか知識の供給源がない。
「だから、教えてくれ。魔法の事を、精霊とは何か、そしてこの世界の事を。」
「ユニエ、貴女、、、」
なんだ、驚いてるのか。私だって、わからない時は素直に教えを乞うのだ。
「精霊がなんなのかも知らないで、自分を水の精霊だと名乗っていたの?」
そっちかーい。
色々とリーシャに質問した。霧に関しては、魔力を感じて避けたそうだ。確かに初めてエルフを襲った時は、獲物を探そうとしていたからこちらが先に感知できたが、普通に警戒している程度だと怪しまれて終わりか。気をつけないとな。
精霊についてはよくわかってないらしいな。そのうち調べればいいだろう。
言葉については、なんと精霊は皆、翻訳機能を持っているとか。日本語で実際に喋っても、リーシャには大陸語という公用語にしか聞こえないらしい。単位はリットルやメートルでも大陸語に換算されて伝わる事がわかった。
リーシャに説明がてら、いくつか確認した。自分の今のスペックは、半径25m以内で、体内に蓄えてある約4500Lの水を操れる。
ちなみに声は、子供にしては低めの落ち着いた感じらしい。子供にしては、、、
「そうだ、精霊は物理攻撃でダメージを受けるのか?」
「普通は効かないね。魔法とか、魔力を付与された武器だと有効だけど。」
「なら、基本無敵じゃないか?」
「そうでもないよ。魔力を持つ武器は魔導器と言うんだけど、それは大量生産されて一般に大量に出回ってるから、油断しちゃダメだよ。」
「精霊は、もはや神秘ではないのか、、、」
なんだか思ったよりも、自分が無力な気がしてきた。
「そんな事ないよ。むしろ人類の魔導技術より、精霊の魔法技術の方が発展速度が早いから、いつまで経っても追いつけないって言われてるぐらいなんだから。」
「そうなのか?」
「精霊は魔力を使って自然を操るけど、人類は魔力を練って捏ねて、なんとか自然現象に転換してるから、無駄が多いの。それに、精霊は寿命があるのかどうかわからないけど、とにかく長生きだから、たくさんの知識と技を蓄積出来るの。一方で人間は身内同士で争うから、優れた技術があっても戦火で消えちゃうの。エルフは内向的だから、そこまで技術の進歩に積極的じゃなし。」
難しい話になってきたぞ。
「昔は魔法使いの人は、魔力で障壁を貼って物理攻撃をある程度防げるから、世界の覇権を握ってたけど、今じゃ魔導器があるから半分ただの人だしね。もっとも、魔法は戦争だけじゃないから、それでも尊敬はされるけど。
とにかくそのせいで、昔は誰もが魔法使いを目指していたんだけど、今は才能のあるごく一部の人しか、なりたがらないの。結果、人間は魔法技術が全然進まなくなったの。エルフは大人になると全員が魔法の才能に目覚めて、寿命が長いし戦争もしないから、技術が発展してる方らしいけど。竜人とか獣人は、、、」
「ま、魔導器とは具体的にどういうものなんだ?」
政治的な話はそのうち聞こう。うん、そうしよう。
「魔力を相殺する武器、かな。魔力と魔力がぶつかると打ち消しあうの。魔法は魔力の塊だから、魔導器と接触すると消滅するの。」
「障壁とはなんだ?」
「障壁っていうのは、魔力を壁にした物なんだけど、昔は魔法しか有効な対抗手段がなかったけど、今では魔導器があるからあまり強い技じゃないの。それでも役に立つことも多いから、障壁を作る道具、魔道具っていうのがあるせど。」
「物理攻撃を防げるなら、相当強いんじゃないのか?その魔道具は。」
「魔導器は超高級品って訳ではないの。だから戦いを生業にしている人は、誰もが持ってるの。対人戦闘では役に立たなくて、魔獣に対しても無力。まあ、モンスターへの対抗手段には有効かな。それでも魔道具の障壁だと、完全に防げる訳じゃないし。魔道具は超高級品だから、私は持ってないけど。」
わからない言葉が、またでてきたぞ?これ常識なのか?うーん、聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥、と言うし、聞いとくか。
「リーシャ、すまんが私はあまり世の中に明るくないのだ。魔獣とモンスターはなんとなくわかるが、どう違うのだ?」
「魔獣は魔法を使える、すっごく強い動物だよ。魔導器が出来ても、まだまだ脅威のままなの。モンスターは、ある程度の知能を持って二本足で立つ生き物全般の事。ゴブリンとかコボルト、オークにオーガ。ゴブリンは、、、」
「もしかして、緑色で背が小さい奴か?」
リーシャが驚いている。
「良く知ってるわね。他のはわかる?」
合っていたみたいだな。
「たぶん大丈夫だ。」
「じゃあ、ゴブリンメイジは知ってる?」
「魔法を使えるゴブリンか?」
「本当に知ってるんだ。どうやってメイジになるかは?」
「それは知らんな。修行でもするのか?」
「違うよ。正解は、魔法を行使出来る生物を捕食する事だよ。そう、魔獣や魔法使い、そして精霊なんかをね、、、」
「ふーん。」
それがどうしたんだ?
「、、、怖がらないの?」
「リーシャ、お前まさか、私をただの子供だと思ってないか。」
封印したこいつを、こんなにも早く使うことになるとはな。
「私は、お前より、お姉さんなんだ!」
全力で叫んだ。
一頻り、へそを曲げていたらリーシャが
「お願い、許して。」
ふん!
『おねーちゃん。』
ズキューン!お、おねーちゃん、、、はっ、騙されるな、これは言霊、きっと言霊を使われたんだ!
『おねーちゃん、、、』
や、やめろ、そんな目でみるな!ウルウルして、抱きしめたくなる目でこちらをみるな!
くそっ、なんて奴だ、、、
「こ、今回だけだからな。次に子供扱いしたら、許さないからな。」
『ありがとう!おねーちゃん!』
ぐはっ。
しばらくの間胸を押さえていた。
ふう、落ち着いた。
「私の依り代はお前だよな。どれくらいまで離れられるんだ?」
「わからないわね。試してみたら?」
好都合だ。顔をを見るのが恥ずかしい。それにしても、「おねーちゃん」か、、、いかんいかん。雑念を飛ばすように全力で飛ぶ。大人の全力疾走ぐらいの速度が出ている。そして、25mぐらいのところで、それ以上進めなくなった。水を操れる距離と多分同じだ。戻ってリーシャに報告する。
「わかったわ。他に確かめたい事はある?」
「特にはないな。もう一回水を吸収したら、移動しよう。」
少し渇いてきた。
「そうね。そうしましょう。」
すごく飲みたかった訳ではないが、飲める内に飲んでおこう。でも、うう、この川の水の中には、あれが、、、えーい、ままよ!吸収して、渇きを癒す。
「さて、行こう。」
いざ、情報収集へ。
そのうちキャラクター紹介やらします。




