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最強なのに無能扱いの俺、グータラ生活を維持するため今日も最低限の働きをする。  作者: 鯖村光輝


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第2話「確信」

リナの違和感は、消えなかった。


リナ(ありえない)


リナは歩きながら、さっきの戦闘を思い返していた。


リナ(あの魔物の不自然な硬直...

あのときに何かが起きた。)


巨大な魔物が、突然崩れ落ちた。


誰も攻撃していない。


魔法の気配もない。


——なのに、死んだ。


リナ(そんなこと、あるわけない。)


だが、実際に起きた。


リナの視線が自然と向く。


少し前を歩く男。


リナ「……」


シンは気だるそうに歩き、時々あくびをしている。


なぜかニヤついている。


とてもじゃないが、さっきの“何か”をやった人物には見えない。


リナ(でも...あの赤くなった拳...怪しい。)


リナは小さく息を吐く。


リナ「ねぇ」


シン「なに」


シンは振り返らずに返事をした。


リナ「もう一回聞くけど、さっき本当に何もしてないの?」


シン「してないけど」


即答。


迷いがない。


だからこそ、怪しい。


リナ「……そう」


それ以上は追及しない。


今は、まだ。


リナ(証拠がない。

勘だけで決めつけるには、あの男はあまりにも普通すぎる。

——いや。

普通すぎるのが、おかしい。

あれだけの魔物が現れたのよ。

もっと動揺していたっていいはず...)


思考がループする。


その間にも、パーティは森を抜け、街へ戻っていく。


「今日はリナさんのおかげで稼げた金で、

みんなでうまいもの食べようぜ!」


「ほんとだよな、リナさん!

今日は奢らせてもらうぜ。

どんどん飲んで食べてくれ」


笑い声。


誰も疑っていない。


リナだけが、違う世界にいるようだった。


パーティーメンバーでの食事の際、


リナはシンがいないことに気づく。


リナ「ねぇ」


「ん?どうしたんだリナさん。」


リナ「さっきの男はどこにいったの?

ほら、ボーっとしてる感じの。」


「あー、シンか。

あいつはもう家に帰ったよ。

何よりも家でゴロゴロしてるのが好きだからな。

今回、いい報酬が入ったから、しばらく仕事はしねえんじゃねえかな。」


リナ「そう...」



翌日。


「次の依頼、これでいいか?」


ギルドの掲示板の前で、リーダーが紙を剥がす。


「討伐ランクB……ちょうどいいだろ」


周囲が頷く。


リナも目を通す。


「お、めずらしくシンも来てるじゃねえか。

どうしたんだ?」


シン「うん。

ちょっと長い連休を取ろうと思ってるから、

蓄えがほしくて。」


 リーダーが軽く言う。


「なるほど、そういうことか。

今回も人数足りねえから連れて行ってやるよ。」


シン「うむ。助かる。

今日もみんなの後ろを守ってみせる。」


「ったくお前は、何もしねえくせに、

なんか憎めねえよ。」


リナ「私も行く」


その一言で、周囲がざわつく。


「Sランクがこの依頼に?」


「なんか豪華すぎないか……?」


そんな声を背に、リナはシンの横に立つ。


リナ「問題ある?」


シン「え?俺?……いや、別に。」


シンは特に気にしていない様子。


だが内心は——


シン(この子、ちょっと俺のこと怪しんでるよな。

討伐ランクBだし、今日はほんとに何もしない日にしよう。)


シンは固く心に誓った。



再び森の中。


前回とは別の場所。


リナ(いる)


リナはすぐに感じ取る。


敵の気配。


しかも、数が多い。


「囲まれてるな」


誰かが呟く。


その瞬間——


魔物たちが一斉に姿を現した。


「来たぞ!!」


戦闘開始。


剣が振るわれ、魔法が飛び交う。


その中で——


リナは、戦っていなかった。


正確には、観察していた。


リナ(動くはず)


視線は一人に集中している。


シン。


彼は、だいぶ離れた後方で立っているだけ。


やる気ゼロ。


次の瞬間。


一体のゴブリンが、シンに向かって走っていった。


シン「え?ヤバ。こっち来るな。」


言葉とは裏腹に全く同様を見せないシン。


リナ(さぁ、どうするの?)


リナはシンのことをじっと見ている。


それに気づくシン。


ゴブリンのこん棒攻撃。


シンは腕でガードするが、そのまま吹っ飛ばされる。


シン「だれかー!だれか助けてくれー。」


リナ(え?あの程度の攻撃も避けられないの?)


しかたなくリナはゴブリンに攻撃魔法を放つ。


瞬殺。


シンは笑顔でリナに言う。


シン「リナ。助かったよ。

殺されるところだった。」


リナはなにげなくシンの右こぶしを見た。

昨日の赤みがなくなっている。


リナ「...やっぱり怪しい。

まあいいわ。今は戦闘に集中。」


リナは戦いの方向に目を向けた。


一人の冒険者の後ろからゴブリンが飛びかかる。


リナ「危ない!だめだ、魔法じゃ間に合わない。」


ゴブリン「ガッ」


ゴブリンが硬直した。


そして、倒れた。


ピクリとも動かない。


誰も気づいていない。リナを除いて。


リナ「あのときと同じだわ。」


リナは、シンの方向を振り返った。


いない。


いつの間にかシンは前方にいた。

仲間たちの背にこそこそ隠れている。


リナ(どういうこと?さっきまでは後ろにいたはず。

やっぱり。)


リナの中で、何かが繋がる。


証拠はない。


でも、確信はある。


リナ(この人がやってる)


戦闘はそのまま終わる。


気づいた者は、誰もいない。


リナ以外は。



帰り道。


リナ「ねぇ」


シン「なに」


また同じやり取り。


だが、今度は違う。


リナ「もういいわ」


シン「何が?」


リナ「隠さなくて」


足を止める。


シンも、止まる。


静かな空気。


リナ「あなたの右こぶし。赤くなってるわよ。」


シン「え?右こぶし?

あー、なんだろう。ゴブリンたちとの戦闘でぶつけたのかもね。」


リナ「あなた、一発もゴブリンたちを殴ってないし

攻撃もされてなかったわよ。」


ほんのわずかに。


シンの表情が止まった。


シン「……何が?」


リナ「下手なとぼけかたね。」


リナはまっすぐ見つめる。


逃げ場はない。


沈黙。


数秒。


やがて——


シン「……はぁ」


シンは小さくため息をついた。


シン(めんどくさいのにバレた)


その顔には、はっきりとそう書いてあった。


リナ「全部わかってるわよ。」



こうして——


最強であることを隠していた男は、

ついに“気づいてしまった存在”に捕まる。


この出会いが。


彼の平穏な日常を、確実に壊していく。

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