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第95話:深夜の灯火(駆け込み寺と、見えざる盾)

王国の夜は、魔物だけが敵ではない。路地裏に潜む不逞ふていの輩や、酒に呑まれた兵士。女性や子供にとって、日没後の街は常に隣り合わせの恐怖だった。

1. 「平和」という名のコスト

「オーナー、最近近隣で野盗の残党が目撃されていますわ。店の周辺にも、素行の悪い男たちがたむろし始めています」

ソラリスが警戒を強めるよう進言する。ケニーは即座に、店舗スタッフに「防犯マニュアル」の再徹底を命じた。

コンビニが平和であるためには、ただ商品を並べるだけでは足りない。盗賊や不良が居心地を悪くするほどの「清潔さ」と「毅然とした態度」、そして「圧倒的な光」が必要なのだ。

2. 深夜の来訪者

深夜二時。店内の静寂を破り、一人の女性が飛び込むように入ってきた。

顔は青ざめ、肩が激しく震えている。

「……すみません。後ろから、ずっと男の人がつけてきて……怖くて……」

レジにいた店員は、ケニーが叩き込んだマニュアル通り、即座に動いた。

「大丈夫ですよ。こちらへ」

女性を素早くバックヤードの安全なスペースへ避難させ、温かい飲み物(自社工場の出汁スープ)を差し出す。店員は表の様子を伺いながら、魔導連絡機で本部に報告を入れた。

3. 見えざる盾

報告を受けたケニーは、自ら店舗へ向かった。

店の外を確認すると、街灯の届かない闇の中に、数人の男の影がいた。だが、煌々と光るコンビニの看板と、店内に設置された魔導記録機(防犯カメラ)の威圧感に、男たちは舌打ちをして闇へと消えていった。

「……もう大丈夫だ。影は消えたよ」

ケニーは、少し落ち着きを取り戻した女性に声をかけた。

「コンビニは、ただ物を売る場所じゃない。助けが必要な時に、いつでも開いている『街の門番』なんだ」

4. 49歳の「見送り」

女性が帰宅する際、ケニーはあえて途中まで付き添った。

「……セーフティネット、なんて言葉はこの世界の連中には理解されないだろうがな」

道すがら、ケニーは小さく独り言ちた。行政や騎士団が手の届かない、生活の隙間に落ちる「恐怖」。それを救えるのは、24時間、街の角で明かりを灯し続ける自分たちの仕事だと、彼は確信していた。

「ありがとうございました……。ここが、あって良かったです」

女性が深々と頭を下げ、安心した表情で自宅の門をくぐる。その背中を見送るケニーの横顔は、経営者のそれではなく、街を守る一人の大人の顔だった。

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