第68話:四時の対峙(招かれざる「客」と、冷えたレジ)
深夜四時。自動ドアが開く音は、いつもより重く響いた。
1. 「匂い」の違う集団
入ってきたのは、揃いの黒いマントを深く被った三人組だった。
彼らはナイトコミューターのような「怯え」も、子供たちの「渇き」も持っていない。代わりに、店内の平穏を切り裂くような、鋭く、冷たい殺気を纏っていた。
「……いらっしゃいませ」
ケニーは、司令室から降りて自らレジに立った。ソラリスが背後で魔導デバイスを握りしめるのがわかる。
2. 探り合いの注文
男の一人が、カウンター越しにケニーを射抜くような視線を向けた。
「……ずいぶん、在庫が豊富だな。この国境の僻地にしては、子供向けの品が多すぎる」
男の指先には、剣だこがあった。テロリストの「斥候(物資調達役)」であることは明白だった。
「うちは『24時間、必要なものを、必要なだけ』がモットーでして。最近は、夜中に散歩をされる若いお客様が増えたものですから」
ケニーは淡々と、バーコードをスキャンする手の手を止めない。
3. 恐怖という名の「不買運動」
男は、カウンターにわざとらしく抜き身の短剣を置いた。
「親切が過ぎると、店ごと焼き払われることになるぞ。……ここから先、ナイトコミューターを匿うのはやめろ。それが、この街で商売を続けるための『場所代』だ」
店内の空気が凍りつく。だが、49歳のオーナーは、眉一つ動かさなかった。
「あいにくですが、お客様。うちは『場所代』を払って商売をするような三流店ではありません。……それより、この短剣は『お持ち込み』ですか? 店内での危険物の露出は、他のお客様の迷惑になります。……お下げいただけますか」
4. 商売人の「領分」
ケニーは、男が注文した保存食の袋を、あえてゆっくりと丁寧に袋詰めした。
「我々が売っているのは商品だけじゃない。24時間、いつでも安心して買い物ができる『時間』と『空間』を売っているんです。それを邪魔する方は……たとえ神様でも、お客様とは呼びません」
男は舌打ちし、短剣を収めて店を出ていった。去り際、ケニーの背中に「後悔するぞ」という言葉を投げつけて。
不安がよぎる。




