第67話:夜明けの城壁(六百の守護者と、在庫の重み)
深夜4時。国境沿いの店舗に、また「ナイトコミューター」に連れられた子供たちが現れた。彼らの瞳に宿る、あの嘘泣きの少年と同じ「渇いた諦め」を、ケニーはもう見過ごすことができなかった。
1. 「商品」を守るための兵站
ケニーは本店の司令室で、冷徹に数字を叩き出していた。
「ソラリス。帝国側の全200店舗に、今日から『特別指定在庫』を設定する。通常の物流ルートとは別に、高カロリーな保存食、子供用の着替え、そして魔導式の小型暖房機を各店に配備しろ」
「オーナー、それは利益を圧視します。それだけの在庫を抱える場所も……」
「場所ならある。客から見えない『バックヤード』だ。……これは、ただの在庫じゃない。この店を頼りに来る客を、飢えと寒さから守るための『盾』なんだよ」
2. 闇の中の「青い光」
テロリストたちは、闇を隠れ蓑にする。しかし、ケニーが24時間灯し続けるコンビニの明かりは、彼らにとって忌々しい「監視の目」となっていた。
ケニーは全店長に、ある秘匿事項を伝えた。
「ナイトコミューターが来たら、彼らを店の奥で休ませろ。追っ手が現れても、我々は『客のプライバシーを守る』という商売の鉄則を貫き通す。一歩も引くな。責任はすべて、この俺が取る」
3. おにぎりに込めた「契約」
店内のイートインで、震えながらおにぎりを頬張る小さな女の子がいた。その隣で、引率のナイトコミューターがケニーに深々と頭を下げる。
「オーナー……なぜ、ここまでしてくれるんですか。あんたに何の得があるってんだ」
ケニーは、カウンター越しに新しいお茶を差し出しながら、静かに笑った。
「得? ……ああ、大ありだ。ここでこの子が温かいメシを食べて、『また明日も来よう』と思ってくれる。それが俺にとっての、最高に価値のある『リピーター契約』なんだよ」
4. 静かなる宣戦布告
ケニーは司令室の窓から、遠くの暗闇を見つめる。
子供を兵士に変えようとする連中にとって、コンビニの24時間の明かりは、計画を狂わせる「不夜城」に見えているはずだ。
「……600店舗の明かりを、舐めるなよ」
49歳の男は、レジの打鍵音を武器に、目に見えない巨大な敵との「持久戦」を開始した。




