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第55話:六百の眼(ビッグデータと49歳の観測者)

ケニーのデスクにある魔導端末には、王国と帝国に広がる全600店舗のリアルタイム売上データが、無数の光となって明滅していた。

1. 600という「網の目」

「ケニー様、帝国北西部の200店舗からも、完全に同期が完了いたしましたわ」

ソラリスが感嘆の声を漏らす。

一店舗ならただの「数字」だが、600店舗が集まれば、それはもはや「世界の脈動」だ。

49歳のケニーは、POSデータの中に、誰も気づいていない「不自然な渦」を見つけ出していた。

2. パンの売れ行きが教える「隠密行動」

「……ソラリス、帝国のこの30店舗だけで、昨夜から『日持ちのする乾パン』と『保存水』が、通常の5倍の速度で動いている」

「……冷え込んできたからではありませんか?」

「いや。同じ気温の隣町では動いていない。ここだけに『何かの意志』が働いている。しかも、深夜4時に、だ」

ケニーの脳裏には、解析グラフ(画像2)の「午前4時の突出したピーク」が浮かんでいた。

3. 深夜4時の「告白」

「深夜に動くのは、人目を避ける必要がある者たちだ。……軍の隠密行動か、あるいは商人連合による、法を無視した大規模な物資移動か。いずれにせよ、これだけの人数が動けば、彼らだって腹が減る。そして、その空腹を満たせる場所は、俺の店しかないんだ」

兵士もスパイも、戦いの前には温かいコーヒーの一杯も飲みたくなる。その「人間らしさ」が、ケニーのレジを通して、国家の最高機密を丸裸にしていく。

4. 情報のプラットフォームへ

「商人連合がいくら王宮で根回しをしようと、この600の灯火が捉える『事実』には勝てない。……商売っていうのはね、世界を便利にすればするほど、世界から隠し事が消えていくものなんだよ」

ケニーは、自分の手元に集まる情報の価値が、もはや一国の予算を上回るものであることを確信した。

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