第112話:黄金の証(職人の恩返しと、選ばれし者の輝き) 自分自身の幸せを肯定すると決めたケニーの元に
自分自身の幸せを肯定すると決めたケニーの元に、以前、ケニーバンクの融資で再起を果たした細工職人のエリックが訪れた。彼は、かつて渡したお守りとは別に、一箱の「試作品」を携えていた。
1. 職人のこだわり
「オーナー、これは……僕なりの感謝です。ケニーバンクのカード、便利ですけど、少し『味気ない』と思いませんか?」
エリックが差し出したのは、魔導金属を薄く叩き出し、表面に繊細な透かし彫りを施した、鈍い黄金色に輝く一枚のカードだった。
「これを持つことが、その人の『誠実さ』と『成功』の証明になる。そんなカードを作ってみたんです」
2. ステータスという名の「遊び心」
ケニーは、その黄金のカードを指先で弄んだ。
これまでのケニーバンクは「困窮者を救う」ためのセーフティネットだった。だが、今のケニーには別の視点があった。
(……真面目に働き、富を築いた者が、その努力を誇れる場所があってもいい。それが『大人の余裕』であり、俺の言う『自分の幸せ』の形の一つかもしれない)
ケニーは即座に、ケニーバンクの最上位区分――**「ケニー・ゴールド・エクゼクティブ」**の設立を決定した。
3. 選ばれし者の特権
このゴールドカードを持つ者は、800店舗のどこでも「VIP待遇」を受けられる。
「ロイ、このカードを持つ客が来たら、奥の特別応接室へ通せ。最高級の茶葉と、コストナー特製の限定スイーツを無償で提供するんだ」
店舗の裏側に隠された、喧騒から切り離された「静寂の空間」。それは、かつてケニーが自分へのご褒美として作った「聖域」の分かち合いでもあった。
王国中の貴族や豪商たちは、その「入会基準(高い信用スコア)」をクリアすることに血眼になった。もはや金を持っているだけでは手に入らない、ケニーが認めた「誠実な勝者」だけの証となったのだ。
4. 49歳の「余裕」
深夜、自分も一枚のゴールドカードを手にし、店の奥で静かにコーヒーを啜るケニー。
「……人を管理するのはしんどいが、こうして『選ばれた者』たちが、俺の作ったルールの中で誇らしげにしているのを見るのは、悪くない気分だ」
それは、前世の孤独な店主時代には決して味わえなかった、自らの価値を社会に認めさせた男の、静かな満足感だった。
エリックの細工が施されたカードが、カチリとテーブルに置かれる。
ケニーは、虚しい問題だらけの世界に、自分なりの「美意識」という名の旗を立てた。




