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異世界から転生した勇者より宝箱配置人の方が過酷だった件  作者: UMA666
第二章【大航海先に立たず…編】
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第七十六幕【失われた蘇生術】

【バクべドーア大陸】

【オボロックル地方・アカシータ貿易港】


「たのもーーーーー!!!」


ドアをバン!!と開け放ったのはガウラベルだった。

執務室の中に居たアカシータ貿易港の町長・ガフマンは酷く驚いた。


「ちょ、ガウラ姐さん!失礼ですって!」


一緒に入ってきたクサカベがガウラベルを制止するも、ガウラベルはズカズカとガフマンの座る机の前まで行くと、胸の谷間からズボッと黄金のハープを取り出し机の上に置いた。


「ど、何処から出した今っ!?」


ガフマンはギョッと目を見開く。


「ほら、町長さんが言ってた黄金のハープ!しかと取ってきたよっ!」


「ふ、ふむ。確かに間違いなく黄金のハープだ…。良くやった勇者一行。良く無事に帰って来られたな?確か、モクレーン神殿にはそこそこ強いボスを配置…ゴホン、守っておったと聞いたが…」


「えっ!?あ…あぁ〜?アイツね?倒した倒した!ねっ?勇者!」


ガウラベルは顔を引き攣らせてクサカベを見る。


「は、はい…」


クサカベはゆっくりと頷いた。

その反応に疑問を感じるも、ガフマンは気を取り直して続けた。


「ふむ。まぁなんだろうと黄金のハープを手に入れてくれて感謝する。では、約束の船をお前達にやろう!」


「コレで…僕達もやっと大海原に出られる訳か…」


部屋の入口で腕を組んで頷きながらアンカーベルトは言う。


ガウラベルはポンッとクサカベの肩を叩く。


「アンタの船だからね。進路は任せたよ、勇者さん」


「は、ハイ!」


クサカベはピシッと気を引き締めた。

これを期に、クサカベの世界はまた更に広がる事になるのだ。勿論、力が入る。


「そうだ、船を渡す前に…お前達に少し訪れておいて欲しい所がある」


「何処だ?」


ガウラベルがガフマンに尋ねた。


「町外れの森にひっそりと研究所のような建物がある。そこで一人の変わり者が勇者の為に武器を造っとるハズだ。是非訪れて協力して貰うと良い」


「へえ!良いじゃないかクサカベ。行ってみようよ」


「そ、そうですね」


そうして勇者一行は町外れの研究所に向かう事になったのだが…




〜〜〜〜〜




「コッチだ間違いないよッ!!」


何故かアンカーベルトに率先され森の中を進んで行く勇者一行。


アンカーベルトはスンスンと臭いを頼りに進んで行く。


「犬だ犬。アンタ、そんな技も持ってたんだね?」


ガウラベルが呆れた様に言うと、アンカーベルトは首を振った。


「違うよ。ドラゴンの…ドラゴンの匂いがするんだっ!!僕はドラゴンの匂いにだけは敏感なんだっ!!」


地面に這いつくばって再度臭いを嗅ぐアンカーベルト。


「変態だ変態。クサカベ、気を付けなよ」


「はは…」


クサカベは愛想笑いしながらそんなアンカーベルトの後ろを付いて行く…すると、森の中に佇む異様な建物が見えてきた。


「ここだ!ここからドラゴンの匂いが強くするっ!!」


「何をそんなテンション上がってるんだ…」


ガウラベルがヤレヤレと首を振った時、ふと何かに気付いた。

建物の横に山積みになった…謎の物体…


「…!!こ、これは…」


「どうしました!ガウラ姐さん!」


「いや…ここに山積みになってるのって…シュヴァルツ…?」


山積みになったシュヴァルツ(?)を一つ手に取り眺めるガウラベル。


「シュヴァルツ…って、なんですか?」


「火薬で鉛玉を飛ばして攻撃する武器だよ…。世界法で禁止されてるハズだけど…」


「ふむ…ソレは本当かい?だとしたらマズいね」


アンカーベルトも顎に手を置き神妙な顔つきになった。


「何がマズいんです…?」


クサカベの質問にアンカーベルトが答えた。


「シュヴァルツはね…防御を無視して貫通、生き物を死に至らしめる。レベル関係なく誰でも簡単に扱えて…そんなものがもし流通でもしてみなよ、どれだけの生き物が…特に貴重なドラゴンなんて…嬉々として狩り尽くされるだろうね……………ま、まさかっ!この複数のドラゴンの匂いはっ!!」


アンカーベルトは建物の扉に手を掛ける。


ガチャガチャガチャ!!


しかし、鍵が掛かって開ける事は出来ない。


「貸してみな」


ガウラベルがアンカーベルトと位置を変わる。


「あの、開けようとする前にまずはノックを…」


クサカベが言うや否や、ガウラベルは蹴りを扉にお見舞いした!


ガシャーーーン!!!


扉は蹴破られ建物の中へと吹っ飛んでいった。


「ちょおおおおお!!?ガウラ姐さん!!?判断が早いっ!!!」


「オラッ!!責任者出て来いっ!!!」


ガウラベルはズカズカと建物に入っていく。アンカーベルトもその後に続いていく。


「ちょ、ちょっと二人共〜」


どうにか穏便に済ませようとするクサカベを尻目に、二人はどんどん建物の奥へと入っていく。


すると、部屋の奥から驚いた様子の白髪のモジャモジャ頭のおじさんが飛び出してきた。


「な、なんじゃいお前ら!!急に人の家に押し寄せてっ!!」


「おい、ジジイ!!あの外に積み上げられた武器について説明して貰おうかっ!?」


ガウラベルが杖を掲げて魔力を貯め始める。


「スンスン…それと、このドラゴンの匂いは一体どういう事かもね…!返答によっては…」


アンカーベルトがパチンと指を鳴らすと、何処からともなくドラコが飛んできて建物入口を破壊して入ってくる。


「ギャオオオオオス!!!」


「ドラコが黙っちゃいないよ!」


「わぁぁぁ!!!ワシの研究所がぁぁぁ!!!」


「ちょっとちょっと!二人共!少しは話を聞いてからにしませんかっ!?」


クサカベが間に入って二人を止めた。

暫くして、お互いが落ち着いたのを見計らってクサカベは続けた。


「で、ではおじいさん、詳しく説明して頂けますか」


「わ、分かったわい…入口はちゃんと弁償しろよっ!!」




〜〜〜〜〜




「ワシはグフマン。ここで勇者の為に武器を開発しておった…。外に積み上げられとったのはワシの研究成果。シュヴァルツじゃなく魔法武器じゃい!」


「あ、そうだったの?紛らわしいね。見た目、考えた方が良いんじゃない?」


「あぁ!そうじゃな!そのお陰でこの前も酷い目にあったしな!!だからこの研究はやめて外に捨て集めとったのに…それに、それよりも重要な研究をワシは思いついたのじゃ」


「それよりも重要な?」


ガウラベルが聞き返した。


「それが、そこのフード被った男の言ったドラゴンの匂いがするせいじゃろ。ワシはドラゴンの心臓による蘇生技術の研究に取り掛かったのじゃ…」


「ど…ドラゴンの…心臓!!」


ガウラベルは目を細めて自分の胸に手を置く。


「まさか、その研究の為にドラゴンを手にかけてるんじゃ?」


アンカーベルトが歯をギリッと噛みながらグスマンに一歩近付いた。


「わぁ!!待て待て!!ワシが研究に使ったのはフィールドワークで見つけた既に死んどったドラゴン達じゃ!!旅人からドラゴンの死骸の情報を聞いたりしてな。小さい子供のドラゴンの死骸等は持ち帰ったりもしたが…」


「なんでアンタ、ドラゴンの心臓の蘇生術の事を?」


ガウラベルは質問する。


「あぁ…ついこの間それで死んだ一人の男を蘇生する機会があったんじゃ。ワシも驚いたよ。そんな技術があるなんてな…」


「それって誰から聞いた!?もしかして…」


「あぁ…確かダルクス…?だったかの。宝箱配置人の…」


「やっぱり…」


ガウラベルはウンウンと納得したと頷いている。


「で!で!そのダルクスさんはどうやってドラゴンの蘇生術をっ!?」


アンカーベルトは興味津々と言った具合に踏み出す。


「し、知らん知らん!ワシはただアイツの言う通りに開放手術を施したに過ぎん。ワシだってそれまではそんな蘇生術があるなんて知らんかった」


「ふむ…なんとも眉唾な話だけど…」


アンカーベルトは顎に手を置いたまま考えながら部屋を少し歩く。

そしてふと口を開いた。


「ドラゴンの心臓…使ったドラゴンの重量級は?」


「お、お前さんの後ろのドラゴンと全く同じじゃ」


「中量級のドラゴンの心臓…」


そこでふと、クサカベが疑問に抱いた事を口にした。


「中量級のドラゴンの心臓って人間の大きさと一緒なんですか?デカ過ぎて入らなそうですけど…」


「アタイもそれは前から思ってたんだよ」


ガウラベルが同調する。


「いや、この場合の心臓って言うのは"魔力袋"の事じゃないですか?グフマンさん」


アンカーベルトがそう言ったのを、グフマンは頷いて続ける。


「そうじゃ。ドラゴンと言われる種族には必ず、人の心臓の大きさの"魔力袋"と言われる…力の源、言わば第3の心臓と言うべきものが備わっとる。昔からこの魔力袋はあらゆる魔法の精製や錬金術に重宝されとった…ワシの魔法武器にも勿論使えると思って保存しとったものは、ダルクスの仲間…リューセイ?とか言った少年に使ったがな。ワシはそれを何度も再現しようとしたんじゃ…しかし…」


「出来ないのかい?」


ガウラベルが言う。


「あぁ。あのダルクスに言われた通りに再度蘇生術を動物を使ってやってみたが…どうしても上手くいかん。何がいけないのか全く検討もつかん。どう考えても…もう一押し何か特別な力が無いと魔力袋を人の心臓の代わりにするなど不可能なのじゃ」


「その手術に立ち会ったのは?」


アンカーベルトが質問する。


「ワシと…ダルクスだけじゃ。この蘇生術には必要なモノが3つ。新鮮で傷のないドラゴンの魔力袋。開放手術の知識がある者。ドラゴンの呪いを解く聖職者じゃ。まぁ、3つ目の聖職者はあの時居なかったが…ヤツは開放手術の技術は有して無さそうじゃったぞ?だからワシに頼んできた」


「ガウラさん、貴女が手術を受けた時って…」


「え、アタイ?あー…アタイの時もダルクスとあと、シムラの爺さんが立ち会ってた…シムラの爺さんは…確かに医療の知識も持ち合わせてたから…開放手術はシムラの爺さんがしたんだろ」


「ふむ…。どちらもそのダルクスさんの前で行われた…それじゃこの蘇生術は…彼の前でしか…?」


アンカーベルトはそう結論付けた。

グフマンも頭に手を置き続ける。


「なに!?じゃあ、何か。ダルクスが何か手を加えたからこそ完成した手術だったと?」


「そうとみて良いんじゃないかな」


「そのダルクスって人…一体何者なんですか?ただの宝箱配置人…なんですよね?」


クサカベも疑問の声を上げた。


「ただの宝箱配置人じゃないのかもね…ヤツは確かに前の冒険から不思議な一面があったよ…」


ガウラベルが言うと続けてアンカーベルトも口を開く。


「是非、僕はその人に会ってみたいよ。なんで彼はそんな技術を有してたのか…ね…」




死んだ人を生き返らせる蘇生術。

そこには本当に何か裏があるのか?


勇者一行は得体の知れない謎に頭を悩ませるのだった。




続く…

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