おまけ
あらあらあらあら。やっと御目覚めになりましてミネット様?
もうこのまま目が覚めないのかと思って、私、心配しましたのよ。
此処? 此処は私の別荘の秘密の部屋。ここを知るのは私と僅かな使用人だけですわ。
ええ。貴女は御帰りになる前に急に御倒れになって、慌ててこの部屋に御連れして介抱していた所……
え? ええ。その通り、それは嘘ですわ。真相は私が貴女のお茶に一服盛って眠らせて、そのままこの部屋に監禁させて戴いたのですわ。
寝台に縛り付けているのは、どうか勘弁して下さいませね。そうしないと、貴女に抵抗されてしまいますから。
……いえ、それは誤解ですわ。貴女が真相を知ったせいで、口封じの為に此処までの事をするなら、あのお茶には最初から毒を盛っていれば済む事。
私が貴女に盛ったのは、女性にのみ効く催眠と媚薬の効果を兼ね備えた、禁断の秘薬ユリコロリ。魔法学校にいた頃に、王都の錬金術師から気の迷いで購入し、いつか貴女に使う事を考えて、未練がましく捨てずにいた物でしたが……本当に使う事になるとは夢にも思いませんでしたわ。
まだ、お分かりにならない? 先程私は、当時想い人がいた為に王太子殿下には恋慕の情は無かったと、そう言いましたわよね。その、想い人とは……貴女の事なのです。
そう、私は……ずっと貴女の事が好きだったんですわ!
しかし、それは世間では殿下の愛と同様に、道ならぬ愛。事件の真相を知り、同時に両親を亡くした私は、貴女の事を含めて全てを忘れる為に、この別荘のある田舎に隠栖しましたわ。ここで何もかも忘れて静かに暮らそうと……
……それが、貴女の方から勝手に一人で此処に押し掛けて来て……
それで、瞬時に決心しましたの。この好機を逃すまいと。そして殿下の様に、何があっても真実の愛を貫こうと。
真実の愛……これは本当に呪いの様ですわね。今なら殿下の御気持ちも良く解りますわ。それを知ってしまえば、何を棄てても、どんな危険を冒してでも手に入れたくなる。そして、私は遂にそれを手に入れた。私は、今、言い表せない程の幸福に包まれていますわ。
いえいえ、助けなど来ませんわミネット様。貴女が本当に御一人でここまで来たのは、この別荘の周辺に張り巡らせた結界の魔法で探知済み。それに誰が訪ねてきても、この隠し部屋はまず見付からないでしょうね。
貴女は、私が殿下の死の真相に関わってると短絡的に考えて、単身この別荘に乗り込んで来たが、何の成果も得られずに消沈して帰って行った。そして、不幸にも帰路において最近増殖していたゴブリンの群れに襲われ、拐われた。
“悪役令嬢失踪事件”の顛末はこんな所に収まるかしらね? 真相は、神と私と貴女のみぞ知る。うふふふふふふふふ。
さあ、お喋りはここまでにして、一緒に楽しみましょうミネット様。
あらあら、そんなに怖がらないで。決して酷い事は致しませんから。田舎のスローライフでは時間だけはタップリとありますわ。さあ、ミネット様も私と同じ想いを、これから、ゆっくりと、何時までも分かち合いましょうね。
うふふふ……
うふふふふふふふふふふふふふ……




