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第5話

誤字脱字は、気付いた時点で訂正していますが、漏れていたら、ごめんなさいです。

それと、ほのぼの?のキーワードは話の内容とそぐわないので、外します。


 トノ様から渡された調査の報告書の中にいたラシェッタは、私の知るラシェッタではありませんでした。


 ラシェッタは、侯爵家の次男として生まれたが、自身の誕生と共に、この世界ではありがちな、出産と引き換えに母を失くしていたのだそうで。


 そのせいで、長男で嫡男であった兄に、小さな頃からある程度、大きくなるまでの間は、「母を返せ!」「お前なんか生まれなければ!母上は死ななかったんだ!」「お前のせいだ!」と数え切れない程、ラシェッタは家人の見えない所で、散々、責められていたのだと。


 父親である侯爵家当主も、仕事も忙しい上、推測ではあるが、政略結婚で迎えた妻を愛するようになっていたのだろうか、その事実から目を背けるように家にもあまり帰らなくなっていったそうだ。そんな状態だったから、ラシェッタを見ると、妻の最期を思い出さずにはいられなかったのか、厳しい表情しかしなかったともありました。


 乳母の経歴もどこどこの貴族の末席にいた女性。子供は、夫の家の嫡男であったので、夫の死後は子を取り上げられ、家から追い出されたそうだ。と書いてありました。

 けれど、乳母になる女性にありがちな話ではあったのです。

 騎士であった夫を亡くし、子も取り上げられ、自分の生活をする為にと親戚の貴族から紹介され、ラシェッタの乳母になったのだとありました。


「父親にも兄にも避けられる中、ラシェッタの世話をする乳母だけがラシェッタの味方でいたのでしょうか。乳母も自身の子を取り上げられたので、自分の子の代わりに大事に大事に、と育てたのでしょう。

 甘やかされて育てられたので、構ってくれない周りにあまり関心を示さない状態で、乳母に言えば、何でもしてもらっていたのでしょう、その為、自分から動かない、受け身の性格が出来上がったのですかね。


 見事に、自分では動かず、他人任せに生きる、見かけだけは引っ込み思案の子に育ったようです。と記述がありますが、その状態が私にも容易に想像出来ます。

 ですが、これは貴族でも庶民でもよくある話なので、悲観してばかりではいられないのですが。」


 そこだけが癖のある字で、走り書きをしてあったのですわ。そのすぐ下に、「トノ・ウエストックの個人による見解その1」と続けて書かれていました。


 私は、さり気なくトノ様の個人的な見解まで添えられている報告書の先を続けて読んでゆきました。


 当主であった父が忙しさに逃げているうちに、ラシェッタの5歳でのお披露目があったそうで、(長男に何かあった場合に、次男は長男のスペアなので、大体、5~7歳でお披露目があるのですわ。)その時に、前侯爵だったお爺様と、「猛女」と言う二つ名で有名なお婆様と初めて出会われたのだとか。


 領地に居ず、あちこちに出歩いて領地を留守にしがちでいるのが当たり前だと噂のあった祖父母は、ラシェッタに初めて会った際に、それはそれは悔しそうに、そして、悲しそうにしていたので、お祝いであったお披露目の場が冷え切ったものになってしまったそうだ。

 そんな状態になった場では、長男である孫が、「ざまあみろ!」と端の方で笑っている声が響くだけに異様であったのだと、出席した方達からも同様な証言が幾つも得られました。


 それを取りつくように慌てる侯爵家のご当主様に、慌てず、微笑みを浮かべ、前侯爵夫妻が、祝いに集まってもらえた事に礼を述べ、土産を渡すように執事へ指示し、招待客は豪華な土産に釣られて、帰らされたそうです。


 そこで、何らかの家族会議が行われ、ラシェッタは、祖父母である爺様と婆様の元で育てられたそうです。

 愛情は与えられても、ラシェッタに余り良い影響を与えたと言えなかった乳母は、その後すぐに解雇され、実家へは帰らず、どこへ行ったのかも不明である。と、ありました。


 祖父母の元へ預けられたのはラシェッタの兄も一緒で、兄弟2人共、祖父母によって、その性根をきっちりと鍛えらてたそうで、ラシェッタの兄は、捻じれてひねくれた性格が、ラシェッタは、人任せで動かないのと、関心を持たない性格が、人並みになったのだそうです。


 そこで、婆様の「猛女」の二つ名が作用して、兄の方は、強気な女性を好むようになったと。ラシェッタは、女性全般が苦手になったのだと。


 「猛女」についての記述がありませんが、どうしてかしら?不思議ね。


 あらら、伯爵様の個人的見解のその2がありましたわ。


 ええと、「二つ名が付く程の女性についての詳しい書き込みは出来ないとの約束がされている。」ですって。

「二つ名が付く時点で、我々男性諸氏が敵(かな)わない程の女性であるとのご理解をお願いいたします。」

 そうですか。男性が負ける程ね。

 前世の言葉で表わすなら、猛烈な行動力のある、激情で、勝ち気な上に、折れない芯を持った女性だと想像しておきますわ。


「そのせいで、母親と言う者を知らない、唯一の肉親女性が二つ名を持つ程の有名な人であるならば、その人生において、見本となる女性は、祖母であるのでしょう。そうすると、ラシェッタ殿が無意識に出会った女性と祖母とを比べる物差しが出来上がっていたのでしょうか。

 ラシェッタ殿は、それからも女性に対してだけは、引っ込み思案が治らなかったようです。」


 ふう~ん。


 その後に続いた内容には、顔をしかめてしまったわ!


 祖父は祖母の性格でも引かない程、惚れ込んでいたので気付かなかったが、孫であるラシェッタの女性を苦手とする性格をどうにかしようとして、娼館のトップだった女性だけを貸し切り、ラシェッタに女性の素晴らしさを知ってもらえるようにしたと。


 それは、ラシェッタが辞めて欲しいと言うまでの間、何年にも渡って続けられたとか。


 …へぇ、何年もね。5人で済む訳がないわよね?


 接触した女性は、30人もいる事。その中から、ラシェッタが拒否反応の少なかった5人で、持ち回りをしていたので、キスと最後以外は、経験済み。ね。へぇ。そうなんだ~。知らなかったわ~。


 5人の中でも一番接触していた1人は、「あと何回かあれば、あたしが初めてになったんでしょうねぇ。結構、良い所まで進んでましたから~。」と、自慢気に語ってくれたそうで。残りの4人も、同じ様な事を言っていた。んですって~?!


 私に会って、遊びに来て帰った後から、女性を克服しようと娼館通いに積極的になり、祖父と一緒に動き出したので、娼館通いを繰り返して、娼婦を覚えて溺れる前に、リエンヌ嬢と想いを遂げられたので、良かった。ひ孫も産んでくれたし、この先は安泰だろう。との安堵の声を祖父である前侯爵が、うちのお爺様とは接触しない友人へとそう本音を漏らしていたのだとの報告もありました。と、書いてある所を読み返してみたけど、何度見ても、変わらなかったんです。


 なんですって!私は、ラシェッタが懇意にしていた5人の娼婦の代わりだったの?!!女性を苦手とするラシェッタの踏み絵だったの?!!もしかしなくても、6人目の娼婦代わりだったの?!!


 酷いわ!!酷い!!あんまりだわ!!私は、ラシェッタ専用のひ孫製造機だと言っているのと同じじゃないの!!


 涙を溢(こぼ)しながらも、続きを読んだ。


 ラシェッタは、娼館の女性でもう少しだと思っていたので、初恋の女性相手ではどうだろうかと、懇意にしていた5人の娼婦へ何度も尋ねていたのだと書いてありました……。


 はい、ダッ〇ワ〇フ決定ーーー!!!リアル(げんじつ)の私は、ラシェッタにとっては、リアルな抱き人形でしたか…。


 思ったよりかは、ショックでなかったわ…。どこかでラシェッタに感じていた違和感が自分の中で納得出来たんですわ。


 私を抱きしめているようで、違うモノを抱きしめているような違和感を何度も感じていましたもの。


 ラシェッタは、5人の娼婦の方達を好きになっていたのですね…。だから、私を抱きしめているのにも関わらず、他の人を重ねていたんだわ…。

 5人の娼婦たちの容姿や性格についての一切の描写がないのは、トノ様が私に配慮して、元から書かないでいて下さったからかもしれないわ。

 うん、それが一番、しっくりする理由な気がしますの。


 ラシェッタは、私が初恋であったのは本当だったのでしょうけれど、今はもう、5人の娼婦の方達を今でも、お慕いしているのですね。だから、私にその5人の女性を重ねているのだと知ってしまいました…。


 ダブラン様の方の経歴の書いてある紙の裏に、ウエストック伯爵ご当主様の見解その3がありました。


 抜け目ないとは思っていましたが、私が報告書を読む順番まで推測されて書かれていたとは、思いませんでしたもの。だって、裏書に「その3」なんて書いてあるんですのよ…!


「個人的見解その3

 ウエストン侯爵家のご令息という立場で、一時期は後継ぎにしようとしていたご当主の動きで、ダブランは、閨に関しての教育が一通りされている。

 その時以外は、性との仕事上での接触はあったが、性的な接触は一切なかったとの報告をされている。

 部下からは、「まるで、聖職者のようですね。」との呟きと、呆れる声を聞いたので、間違いないでしょう。


 リエンヌ嬢は、ラシェッタとダブランとのどちらかを王家の後見もあって、堂々と選べる立場にあるけれど、片方はリエンヌ嬢一筋で、もう片方は5人の娼婦に心を残していて、君を6人目扱いするだけの者。


 どちらをリエンヌ嬢の心のままに選んでもいいけれど、私の長年の経験と見る目からおススメを言うと、ダブランだと思うんだ。


 リエンヌ嬢の一生もかかっているんだ。慎重に選んでも誰も文句は言えないし、ダブランだったら、言わせないようにしてくれるだろう。


 2人を比べて選んでもいいのだから。リエンヌ嬢の一生を預ける相手なのだから、比べてもいいんだ。


 貴族のご令嬢が、婚約を何件も申し込まれ、その何人とも交流し、その中から一番いい人と婚約するのは、当たり前の行為として認められているのだから。リエンヌ嬢が同じ事を今しても、当たり前なんだし。


 ただ、長い期間になると、ダブランはともかく、ラシェッタ殿が暴走する危険が出てくるので、3か月から半年の間に決めた方がいいだろうね。

 彼は、自分の祖父母の走り出したら止まらない性格を受け継いでいるのだし、護衛を増やして、ラシェッタに付ける監視を増やした方がいいと思う。

 この件については、ダブランとリエンヌ嬢のお爺様へ渡した調査報告書にも記載しているので、君が伝えなくても動いてくれるだろう。


 追伸、ダブランとの間にお嬢さんが生まれたら、うちの孫の結婚相手として婚約させたいとも思っているから。

 リエンヌ嬢の類(たぐ)いまれなる手腕と、ダブランの優秀さを受け継ぐような子を我が家に迎えたいと熱望する位には、ダブランの友人としても、2人の幸せを祈っているよ。

 では、また。機会があるまでは、おとなしく、茶会や食事に誘われるまで待っているから。宜しく。



 ダブラン様は、とても誠実なご友人を持っていらっしゃるのね。


 ラシェッタが暴走列車並みの危ない危険物だったのも、見抜けなかったわ。お爺様に、ラシェッタの爺様がどんな方か、私の身が安全にいられる為にも、今後の対策を立てる為にも、是非ともお聞しておきましょう……!


 そう決意した私は、翌朝からダブラン様と朝食をご一緒し始めてから、お爺様との話し合いや、打ち合わせ、その他、諸々の事の手配をするなど、忙しい日々を送る事になりました。


 そうして忙しくしてるうちに、3か月が経ってしまいました。その間は、ダブラン様とは朝食を。ラシェッタ様(・)とは昼食を。お爺様とは晩餐をご一緒していました。


 3か月の間にも、ラシェッタ様からは何度もしつこく、夜へのお誘いがあったのですが、「身綺麗にして、真剣に考えたいのですわ。」とその都度、丁寧に根気よく説明をして、誠実に断っていました。


 ですが、私に断りもなく無断で息子を連れて、実家の侯爵家へ出かけたのだとの急ぎの知らせが、私とお爺様の打ち合わせ中に来たのです!


 私はびっくりしてその場から動けませんでした。お爺様が「あいつと同じ性格であったか…。」と言った後に、ダブラン様を私の側に付けて、何が起こったのかを説明してから、馬車で護衛を何人も、いつもより多く連れて、出掛けて行きました…!!


 ダブラン様は、ご自分の侍従に何事かを指示した後は、私の側にいて、離れないでいてくれました。


 一体、ラシェッタ様はどうしたのでしょう?娼館の女性に会いに行くと思ったのですが、私との間に産まれた息子を、私や家人へ無断で連れ出して、実家へ帰ってしまうとは思いもしませんでした………。

次話は明日、投稿予定です。宜しくお願いします。

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