第4話
私の婿殿になった方、ええと、お名前は何だったかしら?
近頃は、ラシェッタの名前しか呼んでいないから、結婚相手の婿殿の名前なんて、とっくに記憶の彼方へ飛ばしてしまっていたんだわ。
あら?やだ?すっかり、その名前を忘れてしまったみたい。
ううーん、ええーと、侯爵家、侯爵家、あ!ウエストン侯爵家!
…嫡男の方のお名前しか出て来ませんわ?どうしましょう?
ラシェッタに聞くのも変ですし、ヤキモチを妬かれると、面倒事になりそうだし……、困った時こそ、お爺様に聞かなくては、ね。
そうよ。私がこんなに考え事をする羽目になったのは、婿殿のせいですわ!
ええと、何でも、婿殿から我が家の当主であるお爺様へ、これからも大切になるであろうお客様を連れてくると言う話と、我が一族にとって、大事で秘密な話をしたい事が出てきたのだと言っていたとか。
お爺様も半信半疑でいらしたわ。
でも、正式な当主への面会と話し合いがしたいと言う要請を、ええ、正式な面会許可を婿殿から取ってきたので、お爺様の方でも何ら断る理由もなかったので、お受けになったのだと言っていたじゃない。
た、しか、ウエストン侯爵家のご当主様、今はまだ、婿殿のお父様でしたわね。その方と嫡男の方と、お爺様と私とラシェッタにまで同席をするような話って何かしら?何故、そのメンバーに話を聞いて欲しいのかしら?
それにしても、急な話だわ。一体、どうしたんでしょう?今までは、私やお爺様、それにラシェッタにも接触してこなかったのに。
生活するお給金が足りないと言ってくるのかしら?
それとも、ご実家のご当主を呼んでいるからには、離縁のお話しかしら?
でも、離縁のお話しなら、ラシェッタの家の方もお呼びしていなくてはいけない筈なのに、今回は呼んでいらしていないのよね。
本当に、一体、何のお話しかしら?
私が頭をひねって、悩んでいる理由。
それは、私が我が家の跡継ぎになる男児を産んで、息子の夜泣きも多少は落ち着き、私も人並みな生活が送れるようになった頃でした。
正確には、息子が生まれて半年が過ぎた時ですわね。
私達へ大事な話をしたいのだと、婿殿からの申し込みがありましたのよ。
ラシェッタにこの話をしたら、
「俺の家には話し合いをすると言う使者も手紙も届いていないんだ。だから、一体、何の話をするんだろうと、不思議なんだよ。
リエンヌの害になるような話だったら、俺がリエンヌを助けるからな!安心して、話を聞いてくれ。
どんな話を聞いても、リエンヌと息子を守るからさ!」
「用心のため、話し合いの間にも護衛を付ける予定だけれど、その場にラシェッタが居てくれるだけで、私は嬉しいわ。
あの子には乳母も護衛も付けているし、愛人や隠し子が何かしようとしても対応出来るようにと、お爺様がそのような仕事をする方達に、愛人達の動きを見張らせているのだと言っていたわね。
その方達からの報告をお爺様と一緒に、私も次期当主として聞いているのだから、ラシェッタが気を張る必要はないと思うわ。
何かしらの動きがあれば、屋敷の皆にも知らせて、安全に護衛が見張る事にもなっているし、その対策をする事になっているし。
でも、ありがとう。その気持ちが嬉しかったの。」
上目遣いで(頼りなのは貴方なの!と目に力を込めて、あざとく見つめるように)私より慎重が大きいラシェッタを私がしたから見上げると、ラシェッタが顔を赤くして、「お、おう!」と返事を返す姿が可愛かったですわ。前世の可愛い子ぶって男に媚を売る方法だけれど、ラシェッタには有効のようね。
私は、今、幸せよ。ラシェッタとラブラブですもの。
そう思う私の中で、冷静な部分の私が告げる。
あの、婿殿が大事だと言うからには、よほどの事なのだわ。と。
我が家に何もなければ、それでいいのだから、どんな話でも関係がないわ。とは思うのだけど、婿殿の様子や行動、噂との婿殿本人の見掛けと噂との乖離が激しいのは認めるわ。
そうよね。冷静な目で見ても、私はこの家の維持に必要な子供をあと、2、3人は産まなくちゃならないわ。
この領地で、私の前世の知識や経験を生かして、増やしてきた仕事の監督や、管理に調整をするのに、この伯爵家の者が上に立たなければならないのだから。
その位、この領地で領民がしている仕事を管理する者がいないと、ね。
伯爵家でしている、王家から賜っている多岐な仕事の管理を領民にしろと言っても、きっと出来ないものね。
この家の将来を考えると、伯爵家の者で有限会社のような、出資者が行う共同事業にしていくつもりなのだから。
でないとこの領地の皆も、伯爵家がなくなれば困るし、放り出されたままになるから、領民が困るのよね。
……なーんて事を考えていましたわ。
ラシェッタにはあまり見せられない、私の次期当主としての顔だったんですもの。
だって、私がラシェッタの中の男の部分である、男の劣等感を煽ってしまうと、ラシェッタとの仲を壊してしまうかもしれないでしょう?男の人って繊細だから。
出来るだけ、ラシェッタには次期当主としての私の顔を見せないように注意しているわ。
だって、こんな時こそ、前世での経験を生かしていかなくちゃ!その辺によくいる貴族の、成人したばかりの小娘だと侮らないで欲しいわ。おほほほほーっ。
そうしているうちに、なんだかんだで、話し合いの当日になりましたわ。
その日は天気も良く、前日から婿殿の家のご当主と嫡男の方が我が家に泊まっていたので、あとは婿殿とそのお客様だけを我が家で出迎えるだけになりました。
そうそう、婿殿の名前、ダブラン・ウエストン様でしたわ。今は婿入りしたので、ダブラン・ナバーヌになったのですけれど。我が家の本宅に私とラシェッタと子供とお爺様が。別館に、婿殿が住んでいますのよ。だから、婿殿は別館から本館へやって来るのですわ。
ダブラン様とお客様がやって来たようです。
ダブラン様は、パッと見ても、よく見ても、正統派のイケメンです。鑑賞に堪えうるだけのイケメンですわ。
それに比べると、ラシェッタは少年漫画の主人公によくいるようなヤンチャな少年が育って、青年になったような、ワイルドさがある素直なフツーの男性ですの。
貴族だから、顔のイイ者同士が結婚していくので、美形は美形なんですが、美形の差って言うのがありまして、ラシェッタは曽於変の貴族によくいる普通の美形。ダブラン様は、凄い美形なんですよ。
そして、ダブラン様が連れて来られたお客様も、片眼鏡をした頭の良さそうな、すっきりいぶし銀の中年イケメンでした!お2人が並ぶと、ゴージャスですわ!!眼福ですわ!
は!見とれている場合ではありませんの!
皆で話し合いが出来る大きい方の応接間の中でも、防音壁がある応接間の方へ移動しましたわ。
そこで、お客様の自己紹介が行われました。
「王家から貴族の家の調査を請け負う東西南北の家のうちの一つ、ウエストン侯爵家の傍流になります。
西のウエストック伯爵家の当主です。」
王家から調査を請け負っている家は、王都を円の中心にした形とすれば、その上下左右(東西南北)に各調査を承っている家が存在しているのです。
農業と酪農を司る家も、同じように東西南北に存在し、その一つが我が家、ナバーヌ伯爵家ですの。
婿殿の家のウエストン侯爵家も、我が家と同じで、農業と酪農を司っている家ですので、婿殿が我が家へ婿入りするには丁度よかったのですわ。
あら、話が逸れてしまいましたわね。
お客様が語ったのは、調査をする家としては当たり前の事でしたけれど、ラシェッタはその常識を知らなかったみたいで、驚いていましたけれど、これほど知られている貴族の常識を知らなかったのかしら?おかしいわね、ラシェッタは侯爵家の嫡男であるスペアの次男なのに…。
ウエストック伯爵家は、王家の方以外にはその名前を語れない。
だから、普段は、名称で呼ばれているのだとかで、今日も、呼びかけるのに不都合ですから「ウエストックご当主」と呼んで欲しいと言っていましたわ。
普段、伯爵家で、ご当主様は皆様に、「トノ様」と呼ばれているんですって。
息子さんがいて、息子さんも「若様」と言われているんだとにこやかに話していた流れで、私が子供を産んだお祝いの言葉を言って下さいましたわ。
流れるようにお祝いを言われても、私、ちっとも嫌な気にはなりませんでしたの。
それに、前日に届いていたお祝いがウエストック伯爵家からの物だったので、私からお礼を申し上げると、「気に入ってくれればいいのですが。」と、お気遣いまでして下さいましたわ。
この方、見た目だけの頭が良さそうな片眼鏡のすっきりイケメンではないですのね!やりますわね!
「それから、これが我が家の方で調べた事実です。この場で読んでいただけるようにと、人数分の報告書を用意してあります。皆様が全てを読み終えた後に、疑問がございましたら、そのご質問に答えましょう。
ごゆっくりと、ご自身でご理解するまで、じっくり読んで下さい。」
「では、読んでいこうか。」
「はい。」
その報告書の中身は、私もここにいる皆も知らなかった事ばかりでした……。
まずは、婿殿、いいえ、ダブラン様の愛人と隠し子だと言われていた方々は、ダブラン様のお兄様、次兄の方に近付き、食事に誘ったのが始まりであった事で。
次兄の方は男爵家のご令嬢によって飲み物に混ぜられた睡眠薬で眠らせられ、男爵家の者の手を借り、次兄の方を部屋まで連れて行ってから、次兄の服を脱がせ、男爵家の手の者の手でベッドに寝かせられただけであったと。
男爵家のご令嬢とは何もなく、ただ並んで眠っていただけだったと。
調査を請け負う家の男爵家では、だいぶ前から、きな臭い噂や、調査内容から多額の金品を強請っているだとかの嘘か本当か分からない話が、幾つもあったのだそうです。
その家に婿を紹介してもらいたいと頼んだ我が家と、婿入り先を探していた婿殿の家が、彼らの目的にちょうど良いのだと狙われたのだとか。
男爵家のご当主とその義妹、我が領地にて滞在している愛人の方と言うべきでしょうか。
その愛人の方は、男爵家とは一切の血の繋がりがなく、何年も前から、男爵家のご当主の正妻の目を盗んでいた、男爵家ご当主の秘密の愛人だったそうです。
男爵家の正妻様は、これまた、とても凄い恐妻で、愛人を殺してしまいかねない程の自分勝手の贅沢が好きな奥方であると。だから、愛人を義妹にしてまで、その仲を秘密にしていたのだとか。
そこへ、愛人の方が突然、妊娠し、焦った2人は、我が家と婿殿の家を騙し、まんまと婿殿の愛人とその隠し子だと言いながら、我が領地へ入り込んでいたのだと書いてありました。
元々、男爵家のご当主が気に入った女を囲う為だけに、偽の調査内容を作り、娼館勤めの女を義妹として迎えたのが始まりだそうで、男爵家のご令嬢にしたのも妻の目を誤魔化すだけの便宜上で、手元に愛人を囲うのに、自分の金を使わないでいい方法を男爵家の当主が計画されたのだとも書いてありました。
その証拠に、隠し子は、男爵家のご当主と同じ黒い瞳であるだからと。
私も思い出しました。
男爵家のご当主のあの、懇願してきた時に見た、黒い瞳を。気持ち悪いとも思えた謝罪を告げていた場面を。
私が顔を上げて見回しても、婿殿も、ウエストン侯爵家の皆さんも、黒い瞳の方ではなかったです。
確認の為にと、ウエストック伯爵ご当主様がダブラン様に「ウエストン侯爵家に黒い瞳の方はいらっしゃいますか?」と聞くと、「もう何代も黒い瞳の者は迎えていないし、生まれてもいない。」と答えたし、ウエストン侯爵家のご当主様も頷いていたので、ああ、これは本当の事だったんだと、私の中でも、この件は嘘で塗り固められたものだったのだと理解出来ました。
報告書を読み進めていくと、今までの婿殿、ダブラン様の経歴を書き連らねた紙もありましたわ。
侯爵家の三男で、家督を継ぐのではないので、学生時代から王家直属の一人として、問題になっている事の調査とその真偽を調べる仕事に就いていた事。
ここ何年かの放蕩振りも、その仕事上の調査のカモフラージュであった事。
次兄の為、王家の為に、男爵家の動向を探っていたのだけれども、調査する家の内部を崩すのに何年もかかっていたので、愛人や隠し子と呼ばれている2人が、余計な事をしないように見張る為に、手元で監視し調査していたのだと書いてありました。
そんな…。じゃあ、私がダブラン様を信じ切れず、裏切って、ラシェッタと契ってしまったの?
王家からダブラン様は色々と将来を期待され、色々と任されているので、外部には秘密になっているので、私へ告げられなかったのだと。
今回、これらの事をバラしたので、この事がこの領地やウエストン侯爵家、ラシェッタ殿のご実家の侯爵家など、ここにいる者達の関係者から秘密が漏れれば、一族皆が処刑される事にもなるのだとの重い重い一文が、殊更、太い字で、強調されて書いてありました。
だけれど、今回はダブラン様の身の潔白を示す為だけに、王家から今回に限り、この場の皆だけにその秘密を明かす許可が下りたのだとも。
何故なら、婿入りした事で今回の件が動いたから、結婚して白い結婚の契約をする事になってしまったのは、仕事のせいであって、その責任もあって、王家から、その詫びと結婚祝いみたいなものであるのだとも、記してありましたわ。
私がラシェッタとの間の子を育てている間に、ダブラン様は、苦悩されたのかもしれない…。
だって、前に見かけた時よりも、窶れて顔色もあまり良くないし、何だか、萎れている気がしましたの。
不躾にダブラン様を見ていた私の、その視線に自然と応えるかのように、ダブラン様と目が合ってしまったので、私、焦ってしまいましたわ。
それなのに、ダブラン様は、苦く笑ってくださいました。
私が気にする必要はないんだよと優しい目をしながら…。
ダブラン様が我が家に婿入りしたので、ダブラン様から(男爵家の)愛人様へは、必要最低限の生活費しか渡されなくしていたんだそうで。
それまでは、婿殿の兄の次兄の使う予定だった侯爵家のお金で、男爵家にいる時よりも贅沢な生活が出来ていた愛人は、婿殿の婿入り以降、質素な生活になった事に、とうとう我慢が出来なくなり、男爵家のご当主から金を引き出そうとして、男爵家のご当主との密会を何度もしていたのだとか。
結果的には、愛人兼義妹の腹に、男爵家ご当主との間での2人目の子供が出来たそうで、愛人の方が、婿殿との間の子だと誤魔化そうとしても、婿殿の身の潔白のせいで誤魔化しきれなくなり、つい本当の事を暴言と一緒に口走ったのだと。
「それと並行して、男爵家を潰してしまうと、男爵家当主の命令で仕方なく動かされて、仕方なく働かされていた優秀な人々を殺す事にもなり兼ねないので、ウエストック伯爵家当主として、クズ以外の良さそうな調査員を全て引き抜いたから大丈夫。」と、笑って、ウエストック伯爵家のご当主様が話してくれたけれど、その目だけが笑っていなかった…。
侮ってはいけない方なのですね。
「残りは使えないか、どうでもいいクズなので、まぁ、まともな人がいなくなった家は潰れるしかないからねぇ。残っていないから、私の心も痛まないで済むよ。気にしない気にしない。
で、この王家との契約書に、他言しないと言う誓約書を個人個人でしてもらえるかな?もちろん、拒否は出来ないからね。
特に、そこの間男君、君が一番、悪どいからね。
ダブランが婚約を申し込むと事前に私が教えてあげたのに、君の爺様と君は無視してさ。
婚約申し込みもしないで、自分は何もせずに悔しがるばかりだったじゃないか。
結婚式までに3年もあったのに、何もしなかったからね。
女性経験が何もなかったのは、気弱過ぎて出来なかったからだと娼館の女性、少なくとも5人はいたかな?その娘達から聞いたんだよ?
いざとなると、何も出来ずに震えていたって。
ダブランは、リエンヌ嬢との結婚を見据えていたから、もてていたけど、浮気出来る事をしない様にと、これまた聖人君子の様に清らかに過ごしていたんだよ。
そこからも、もう、君との出発点がダブランと君とで全然違うんだよね。
リエンヌ嬢はさ、この馬鹿、肝心な時に肝心な事が言えずにいた、間抜けなダブランとの事を一から考えてみてくれないか?君一筋のダブランを。」
「…どうして、ウエストックご当主様は、そこまでダブラン様の事を?」
「ふふふっ。それはね、私が妻に一度、婚約破棄をされても諦めなかった事があったから。と、答えるよ。
そのショックで飲まず食わずで、結構危ない所までいってたみたいで、私が酷く衰弱したんだけどね、彼女が周りを押し切ってでも私の所へ駆けつけてくれたんだ。
その時の彼女の看病で私も助かったのだけれど、ね。
その時も、リエンヌ嬢の様に周りの思惑で、何も知らない事で私も踊らされてしまっていてね、悔しかったんだ。
真実が、私には何も見えていなかったんだって。
だから、君に真実を告げる役目を、友人を助ける役目を私が今回、仰せつかったんだ。
よくいるお節介な、ただの男さ。」
ウエストック伯爵家のご当主様はそう言って、私にウインクをしましたの。
かっこよかったです。
ご自分も辛い目に遭われたので、それを手助けしたいのだと動けるような人になりたいと努力されたのですね。
私も将来、今回助けられたように、誰かを助けられるようになりたいと思いました。
それから、ラシェッタ様の事も、ダブラン様の事も、真実を知った今の私で、じっくりと真剣に考えてみたいのだと皆様に告げる事が出来ました。
ま、ラシェッタ様の真実も知ったので、あと半年は、確実に寝室を別にする事を、即座に、私の心の中で決めましたから!
「それから、私、今日から1年は、ラシェッタ様と寝室を別にする為に、部屋を移します。
部屋を移動したら、誰も許可なく侵入出来ないように、部屋の鍵を二重三重にし、警備も増やしますわ!
私もこれからを真剣に考えたいですし、今までの様に、なし崩しで過ごすような未来を考えたくないのですわ!」と宣言してしまいましたわ!
椅子の上で、驚き、丸まっているままのラシェッタ様を放っておいて、王家からの誓約書に署名をしてから、ダブラン様へと謝罪をしました。
「何も知らない私のせいで、ダブラン様には大変、申し訳ない事を…。謝り切れぬ事をしてしまいました…。」
「いいんだ。元はと言えば、肝心な事を全て言えずに、間違った事から話してしまった私もいけなかったんだ。
リエンヌ嬢、いえ、リエンヌ、私の事を真剣に考えた上で、結論を出して欲しい。それと、私と日頃から交流する機会を作って欲しいんだ。
君と仕切り直して、初めからやり直したいと思う。その上で、君の出す結論を私は待つよ。」
はにかみながら、私へ話すダブラン様を見ていると、とても年上に見えなかったです。
少年の様に爽やかな表情をしているダブラン様を見ていると笑顔になれましたわ。
あら、何だか、頬が少しだけ熱いわ。
「はい。私で良ければ。」
笑顔のままの私がそう返事をすると、ダブラン様が「ありがとう!」と、両手で私の手を握って、握手されてしまいましたわ。
縁あってダブラン様と結婚した私だもの、キチンと真剣に考えなくては。
部屋の中を見回すと、お爺様とウエストン侯爵家のご当主と嫡男の方とが謝罪合戦をしてらしていたわ。
ウエストック伯爵家のご当主のトノ様は、私とダブラン様を微笑ましく眺めていらっしゃいましたけれど。ちょっとだけ、照れますわ。あら?近付いていらしたわね。
「これは、私からのささやかなプレゼントです。間男君の調査内容報告ですけど。」と言って、ラシェッタ様の調査内容を私とダブラン様へそっと手渡していくと、お爺様にも何かの紙の束を手渡していました。
これは、部屋に帰ってから、今回の件の報告書と併せて、じっくりと読みますわよ!
…話題になったラシェッタ様は、石像になったかのように、椅子の上で、未だに丸まったままでしたけれど。このまま石化が解けるまで、放っておきましょうか。
私とこの家にとって一番いい方法を考えましょう。
ダブラン様のエスコートで私は部屋に戻り、その日のうちに、屋敷で手の空いている者全員を使って、私は今まで使っていた部屋とは違う、今までいた本館から、婿殿の居る別館の新しい部屋へ引っ越し、部屋の鍵を増やしましたのよ。
気付いた方がいるか分かりませんが、伯爵家のご当主様(トノ様と呼ばれている)は、婚約破棄からの出来事で出てきた男主人公のその後です。ダブランとは年の離れた友人と言う話なんですが。
次話は明日を予定していますが、もしかすると明後日になるかもしれません。宜しくお願いします。




