8・ドーナッツ
ガラス張りの建物。見るからにお洒落で、外にもテーブルとベンチが置かれている。
元々お洒落な街並みによく合っており、まるでそこだけ結界が張られているようであった。
「フローラさーん」
外に置いている丸テーブルを囲むようにして何人かの女の子。
確か……ダイエットコースで見たことあるような。
「すいません……遅れて。でも! エクレアさんを誘えましたわよ!」
「「「えー!」」」
女の子達が目を輝かせて声を上げる。
うん? もしかして私、歓迎されているのだろうか。
「エクレアさん。ジムでの事件は置いておいてもお人形さんみたいで可愛いですからね! ジムでも話題なんですわよ」
って、聞くだけで胸が弾むようなことを言われながら、同じテーブルの席に着く。
みんなと一緒にご飯を食べるなんて、クレテールに来てからなかなかなかったからな。
五人くらいの人達に視線を浴びせられ、思わず肩を狭めてしまう。
「では! 早速、お茶会をしましょう」
そっか、そういやお茶会だったんだな。
お茶会か……お肉とかの方が食べたいんだけどなあ。
なんてことを思っていたら、ウェイトレスの人が店内から『お茶』を運んできた。
「こ、これは――!」
でも『お茶』だけではない。
手の平サイズくらいで、中央に穴が空いてあるお菓子。
そう――。
「ドーナッツ!」
ドーナッツも一緒に持ってきたのだ。
「エクレアさん、ドーナッツは好きですか?」
「も、もちろん!」
ってか甘いものならなんでも好きです!
んー! 紅茶の香りもあって、ドーナッツがより一層美味しく見える。
たまに食べている茶色のドーナッツだけではなく、ピンク色や黒色のドーナッツもある。
まるでオモチャ箱みたいだ。
「食べていいんですか?」
「もちろんです。お茶会といったらそういうものでしょう?」
紅茶をすすりながら、フローラさんが答える。
ドーナッツを手に取り、パクッと口に入れる。
「〜〜〜〜!」
――美味しい!
天国に上ってしまうような快感!
頭を突き抜けるような甘さに、思わず頬が緩んでしまう。
「美味しいです!」
「そんなに美味しそうに食べてくれたら、誘った甲斐がありましたわ」
「このピンク色のドーナッツは?」
「それはイチゴ味のドーナッツです。無理もありません。この『スイーツタイム』でしか売られていないオリジナルのドーナッツですからね。どうぞ召し上がってください」
言われなくても食べさせていただきます!
んー! これも美味しい!
イチゴよりも砂糖的な甘さを感じ、疲れた体が癒されていく。
ちょっと喉が渇いてきたので紅茶を飲むと、甘ったるい口の中をリセットしてくれる。
いくつでも食べられちゃいそうだ。
「エクレアさんって何歳なんですか?」
「は、ははひへふは?」
「口の中がなくなってから答えてくださいまし」
「ふひはへん!」
ゴックン。
「私は十四歳です!」
「十四歳! 若いですわね……」
フローラさんがほっぺを手で撫でる。
「いやフローラも若いでしょ。十六歳ですもん」
「十四と十六の二つの差は大きいですわ」
そっか……フローラさんって二つ上なのか……。
でも二つ上くらいなら、そんなに変わりないだろう。
少し迷ってから、意を決してこう聞いてみる。
「フローラさん! フローラさんのこと『フローラ』って言ってもいいですか?」
「え、へ? それくらい良いですけど」
「やったー!」
フローラさん……じゃなくて、フローラの手を握って軽くジャンプする。
クレテールに来てから友達なんて出来たことなかったからね。
それに、これだけ美味しいお菓子を食べさせてくれるフローラは良い人に違いない。
だからこそ一気に距離を縮め、お友達になろうと思ったのだ。
「そんなに喜ばれるとは……わたくしも良いお友達が出来て嬉しいですけど」
「これからよろしくね! フローラ」
「はい! わたくしの友達なんですから、また『お茶会』に付き合ってくださいよ?」
「もちろん!」
こんなに楽しい会なら大歓迎である。
それにしてもお茶会ってお茶を飲むだけじゃなかったんだ。
まだドーナッツが残っているので、次々に放り込んでいく。
……でも、
「こんなに食べて太らないかなあ?」
「それだけ食べた後に言われても……って感じですが。まあ、今日のダンストレーニングは厳しかったですからね。『自分へのご褒美』というヤツです」
「自分への……ご褒美?」
「ええ。だって根を詰めてやっていても、いつか折れてしまうかもしれないじゃないですか。こういう息抜きも肝心なのです」
「ジムトレーナーの人にはバレないようにしないといけないけどね……」
だからジムから少し離れた店までやって来たのか。
確かにお腹の脂肪は気になるところだけど。
フローラの言う通りでもある。今日は(動きが遅すぎて)疲れたし、ダイエット初日ということもあって、これくらいのご褒美は必要であろう。
気にしない気にしない!
――その後、楽しく会話をしながらドーナッツを食べていたら、あっと言う間に時間が過ぎていった。




