6・スローなダンスレッスン
すいません。
投稿遅くなりました。
「昨日は散々な目に遭ったな……」
でも昨日のことは反省して、実力を隠さなければならない。
私は! そう思ってないけど、どうやら自分の力っていうのは凄まじいものがあるらしい。
田舎村で田んぼを耕していただけなのに、突然『魔王を倒す旅行』に誘われたことも経歴もある。
「昨日の失敗は二度と繰り返さない!」
拳を握り、いざクレテール冒険者ジムに入る。
「こんにちはー!」
「――っ!」
私がジムに入ると、視線が一斉にこっちに集まる。
息を飲むような音。ひそひそ声なんかも聞こえたりする。
あれ! 私、もしかしたら注目されているっ?
「ダイエットコースのエクレアです! 今日はなにをするんですか!」
少し怒鳴り気味に近くのジムトレーナーに声をかける。
「ひ、ひぃっ!」
なんで悲鳴を上げるんですか!
「きょ、今日は……ダンストレーニングをやろうと思って」
「ダンス! 素晴らしいですね。早速、やりましょうよ!」
もう強引にでも話を進めないと!
ダンス! 魅惑の響きである。
王都で流行っている『アイドル』……? だっけな。そういう子達もフリフリの衣装を着て、歌って踊っていたような気がする。
あれは女子力が高かった。
「で、でも……エクレアさんはそんなトレーニングじゃ物足りないんじゃ?」
「どういうことですか?」
「ドラゴンを倒すAランククエストに挑戦したら……」
「なんでダイエットコースの生徒がそんなことをしないといけないんですか!」
やっぱり昨日の件で誤解されている!
ドラゴンくらいなら片手くらいなら倒せるけど!
「そんなことよりダンスです。ダンスは良いですよー! ダンスしましょう!」
ジムトレーナーの腕を引っ張って、この居心地の悪い空間から無理矢理逃げる。
「い、命だけは! 私には守るべき子ども達も……!」
半泣きで、なにか訳の分からないことを宣っていたけど無視だ。
――冒険者ジムはとても広く、何部屋かに分かれている。
顔に傷を負った「わたし、明らかに冒険者ですよー」みたいな顔をした男達が素振りを繰り返していたりする。
いや、私にとったら顔なんかに傷を負うヤツは無能なんだけど。
まあ好きにやらせておけばいい。
女の子が多い方……体つきも冒険者じゃないっぽい子達が集まっている部屋に入る。
「ここか!」
うん。
澄み切っているような空気。
桃の香りが鼻をくすぐる。
「ダイエットコースのエクレアです! 今日はダンストレーニングですよね」
「お、おぉ……」
あっ、もしかしたらダンストレーニングは始まっていた?
部屋に三十人くらいだろうか。
女の子達が身軽な服を着て、列を組んで踊っている。
私は強引に声を上げたものだから、動きも不自然に止まってしまう。
「あ、もしかしたら私……遅刻? す、すいません! 一段落するまで待っておきますので」
「そんなことしなくていいから!」
「で、でも……」
「エクレアさんも早く列に入って」
じゃあお言葉に甘えて。
よいしょ、最後列の中に入る。
「じゃ、じゃあ! 再開していくよー」
列の一番前に立っているジムトレーナーの人が声を上げる。
ちょっと、声に緊張感が含まれてた気がするけど、細かいことは無視だ。
「一、二! 一、二!」
部屋の前方に大きな鏡がある。
どうやら、その鏡で自分の動きを観察・分析しながら、改善を加えていくスタイルらしい。
軽快かつお洒落な音楽が部屋に流れる。
むーっ、ダンスなんて初めてだしなぁ。
「一、二! 一、二!」
しかも身長が低いせいで、前方にいるジムトレーナーの動きが見えにくい。
でも取り敢えず、他の人の動きに合わせておけばいいんだよね?
手を伸ばしたり、足でステップを踏んでみたりする。
「え、え?」
戸惑いを隠せない。
鏡に映る私の動きも滑稽なものになっている。
「動きに付いていけない!」
悲鳴のような声を出してしまう。
……だって、みんな動きが遅すぎるもん!
しかもリズム感も悪すぎて、合わせるのが難しすぎる。
「きゃっ!」
わっ、やってしまった。
そのせいで尻餅を付いてしまう。
「むー。難しいですね……」
恥ずかしさのせいもあって、すぐに立ち上がってダンスを再開する。
でもやっぱり動きが遅すぎて、合わせにくい!
「き、きゃっ!」
あー、また転けちゃった!
これはなかなか難易度が高い……だからといって、自分なりの『ダンス』を踊ってしまっても浮いてしまうだろうし……。
「エクレアさんがダンスの動きについて行けてない?」
「動きもぎこちないような気がするね」
「みんなの動きが速すぎるのだろうか……? やっぱり、昨日クレイグさんを倒したのはマグレ?」
知らない間に部屋にジムトレーナーがいっぱい集まって、私達を見ているんですけど!
それにしても恥ずかしい……麗しき乙女が間抜けに転けるなんて。
「忍耐だ忍耐!」
そう自分を奮い立たせて、何度でも立ち上がってダンスに挑戦する。
……結局、最後まで計十三回も尻餅を付いてしまいました。
次話ですが、リアルが忙しくて更新し損ねてしまいました。
なので明日に二話分をアップしたいと思います。




