13・シャワーを浴びたら疲れました
ジョギングした後――。
「シャワーを浴びましょう」
というフローラの提案によって、ジムのシャワー室を借りることにした。
シャワーというのは、火と水の魔石を使いホースからお湯を出す技術である。
もっとも、クレテールのような財政的にも豊かな都市にしかなくて、その原理を知っている人は少ないんだけど……。
「そういや、ジムのシャワー室を使うのは初めてだな」
ジムのシャワー室は個室になっている。
私は服を脱いで、フローラより先にシャワー室を利用することにした。
「うーん! 良い気持ち!」
疲れと一緒に汗が流れ落ちていく。
体の芯までお湯が染み渡っていく。
「疲れ……といっても、ジョギングなんかでは疲れないけどね」
あんなので疲れていたら、旅行(ついでに魔王を倒す)なんかしていたらヘトヘトになっちゃう。
あくまでジムで『元勇者』と隠すことに疲れたのだ。
「まだまだ私……いけるよね?」
個室の中に全身が映る鏡がある。
全盛期に比べたらちょっと、体がだらしなくなっているように思えるけど、うん。可愛らしい女の子の姿が映っている。
問題はお尻ばっかり大きくなって、胸が大きくならないことだけど……。
でも、私は十四歳!
これからどんどん大きくなっていくだろう!
「ふふふふっふん……」
鼻歌を口ずさみながら、機嫌良くシャワーを浴びていると。
「……エクレア!」
「きゃっ!」
後ろから抱きつかれてしまって、つい声を上げてしまう。
「フ、フローラっ?」
「ふふん。一人でシャワーを浴びるのもつまらないですからね」
「だからって! 入ってこなくても!」
そう。
急に抱きついてきたのはフローラだったのだ。
もちろん……素っ裸の状態で。
「エクレアってキレイな肌していますのね……白くて赤ちゃんみたいにモチモチしてる」
「そういうフローラも……」
フローラの裸を見て言葉を失ってしまう。
シミも傷も一つない体。
両親から大切にされてきたのだろう。その白肌は視線も意識も吸い寄せてしまう。
私とは違って、出るとこは出ているし。
だからといって、くびれのある腰は女性を感じさせるものであった。
「なんでフローラってダイエットコースに来ているの?」
「あら。痩せたいからに決まっているからじゃないですか」
「ダイエットなんかする必要ないように思えるけど……」
「いえいえ、そんなそんな。体重も増えてきているのですよ? それにエクレアだって同じように思えますわ」
体重が増えている、と言ってはいるがとてもそうには見えない。
フローラはじーっと私の体を見つめ、
「えいっ!」
と私の胸を鷲掴みにした。
「ちょちょちょ! フローラ?」
「小さいけどモチモチして可愛らしいですわ! 家で飼っているネコを撫でているような感じです」
「私の胸をペット扱いしないでください!」
モミモミ。
今すぐ逃げ出したいけど、シャワー室が狭すぎて思うように動くことが出来ない。
密着している女の子二人。
うーん、端から見たらどういう風に見られるんだろう。
「エクレア! わたくし、あなたに話がありますの」
「へ、へっ?」
「とっても大切な話ですの」
「そんな話を! こんなことをしながら話そうとしないで!」
「こんなこととは?」
「こ――きゃっ!」
フローラの指が変なところに当たって、ついつい変な声を上げてしまう。
「フローラ! 本当に怒……きゃっ!」
「エクレア! 可愛い! 食べちゃいたいくらいですわ!」
背中に電撃が走ったような感じ。
フローラが指を動かすたびに、足の力がなくなっていく。
なんてことだ。旅行(魔王を倒す)した時もこんなことは一度たりともなかったのに。
なんて恐ろしい魔法を使うんだ。
フローラは『指で相手を脱力させる魔法』の使い手だったというのか!
「フ、フローラ〜! お願いだから止めて〜」
「止めないですわ!」
シャワーを浴びた後、本当の意味で疲れたのは言うまでもない。




