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14・ケーキショップ

すいません。私用で投稿遅くなりました。

「はあはあ……なんだか疲れた」

「そりゃそうでしょう。わたくしのペースに合わせて走っていたのですから」

「いや、そういうわけじゃなくて」


 無論、シャワー室の一件である。

 ジムから出て、私達はとある場所に向かっていた。

 フローラの背中を追いかけて、トコトコと歩く。


「ここですわ」


 ――そこは宝石箱のような建物であった。


 貴族の豪邸のようなきらびやかさではなく、オモチャを建物に取り付けたような派手さ。

 人通りの多い道に接しているためか、絶えず人が建物の中へと入っていく。


 そして建物から出てくる人達はみんな幸せそうな笑みを浮かべていた。


「ここがフローラの……家?」


 建物には『ジュリエールケーキ』という看板が掲げられている。


 そう――私はフローラの家に招待を受けたのだ。


 なんでもここで『大切な話』とやらをするみたいだけど……。


「はい。わたくしの実家ではケーキショップを営んでいますの」

「すんっごい人が多いんだね」

「ふふん。結構、繁盛しているんですわよ?」


 フローラが鼻を高くする。

 ここに立っているだけで甘い香りが漂ってきた。


「とりあえず中に入りましょうか」



 宝石箱の中は宝石というのは当たり前の話で。


「うわあ!」


 思わず感嘆の声を上げてしまう。


 中もキラキラと光り輝いている場所であった。

 お上品な服を身にまとった貴婦人達が溢れかえっている。

 それでいて、冒険者ギルドのような雑多さはなく、あくまで優雅で落ち着いた時間が流れる空間であった。


「あなたがフローラのお友達ですね?」


 涼しい風が通りすぎるような声。


「あなたは……?」

「申し遅れました。わたくし、フローラの父であります」


 え、えー!


 お父さんだと思っていなかったよ!

 だって、メガネをかけて理知的な顔はフローラと同年代と言われても違和感がない。


 一言で表すなら『イケメン』というヤツなのだ。


「フローラから話を聞いています。年下のお友達が出来た、って」

「は、はじめまして! エクレアと申します! 特技はドラゴンを狩――じゃなくて、ドラゴンの鱗で作ったコートを集めることです!」

「ドラゴンの鱗で……? それはなかなか面妖めんようですね」


 フローラのお父さんが顎に手を置く。


 勇者(私は思ってないけど)時代。

 たくさんの貴族達が私に声をかけてきた。

 でも私は新しい街でのご飯とかが気にかかって、男となんてまともに接したことがなかった。


 いくらフローラのお父さんでもこんなにカッコ良かったら……。

 あたふたしてしまうのも仕方ないよね。


「父上様。わたくし、エクレアにケーキを振る舞おうと思っていますがよろしいでしょうか?」

「それはもちろん。いくらでもケーキを作ってあげるよ」


 フローラのお父さんが腕まくりをして、厨房へと消えていった。


「エクレア。あそこのテーブルでケーキを食べながら、ゆっくりと話をしましょう」

「は、はい!」


 店内にあった丸いテーブルに腰掛ける。


「えーっと、メニュー表は……」

「ここはケーキ――といってもケーキだけではないスイーツ全般なのですが――をバイキング形式で取って、食べる形式になっているんです。もちろん、お持ち帰りすることも出来ますが」

「え、えー! つまり!」


 宝石のようなケーキの食べ放題!


「もちろん、お金は頂きませんわ。さあ食べ――ってエクレア?」


 フローラの言葉を最後まで聞かず、いてもたってもいられなくなって席を立つ。


 ケーキが並べられている場所へと移動する。

 一つ一つがとても美味しそうで、ついヨダレが出てしまう。

 照明のせいなのか、眩しいくらいにケーキが光り輝いていた。


「これも! これも!」


 お皿にケーキを盛りつけていく。


 苺のショートケーキ……チョコレートケーキ……チーズケーキ……。


「エクレア! 取りすぎです!」


 気付けば、山盛りのケーキが皿に載せられていた。


「全く……何回でもオカワリ出来るんですから、そう一度で取らなくてもいいですのに」

「で、でも! 我慢出来なくて!」

「まあ良いですわ」


 一方、フローラの方はキレイにケーキを載せていた。

 これが余裕というヤツなのか!


「食べよ! 食べよ!」


 早速、席に着いてケーキにフォークを通す。


「うわあ……」


 たっぷりの生クリームに、柔らかそうなスポンジ。

 私はゆっくりと一片のケーキを口に入れる。


「〜〜〜〜〜!」


 ――瞬間。

 目の前に楽園が広がった。


 まるで舌がとろけるような甘さだ。

 一噛みするごとに、幸せで頭が満たされてしまう。


「美味しい!」

「ふふん。それだけ美味しそうに食べてもらえたら、わたくしも嬉しいですわ」


 フローラが嬉しそうに微笑む。

 会話もそこそこに次々と口にケーキを放り込んでいく。

 一度食べてしまったら手が止まることはない。


「こ、こんのチーズケーキ! 口に入れた瞬間、と、溶けたよ!」

「チョコレートケーキ! 甘さが頭に話しかけてくるよ!」


「ちょっと……エクレア。もう少し声のボリュームを下げてくれますか?」


 そうはいうものの、最高潮に達したテンションを下げることなんて出来ない。

 やがてあれだけ山盛りに盛りつけられていたケーキがなくなり、


「ふう! 休憩休憩!」


 紅茶を飲んで、息を吐いた。

 結構食べたっぽいけど、まだまだお腹は余裕があるね!


「フローラ! 今日はほんっっっっっっとにありがとう!」

「いえいえ。エクレアは大切な友達ですからね」


 身を乗り出し、フローラの両手を握り締めた。


「さて……そろそろ本題に入らせてもらいましょうか」


 声のトーンを一つ下げて、フローラは話し始めた。

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