表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Bright Swords ブライトソード  作者: 榎戸曜子
Ⅰ.闇の炎
PR
48/533

10.奇妙な海賊①

 それぞれが港から戻ったその日の夕食後。

 旅の一行が船長室に揃った。

 シャギルは長いすに身体を伸ばし、ルリとスオウは船長のとっておきの酒を飲み、ビャクグンは爪の手入れをしている。

「まったく……」

 ミルはビャクグンの優雅な手つきに思わず感嘆のため息をついた。そのわきでは、お茶を入れているシンの手元を、アイサが覗き込む。

「変わった香りがするわ」

「うん。ススルニュア産のヴォガという強い香料が加えられている。後味がすっきりしているはずだよ。これは昼間港で買ったものなんだ」

 シンは得意げに言った。

「姿を消していたのに、どうやって品定めしたの?」

「姿を消しても茶葉の色や形、香りは確かめられるよ。店主が他の客に説明しているのも参考にした」

「ふうん」

「それよりアイサこそ、怪しまれなかったかい?」

 感心しているアイサにシンは聞いた。

「えっ、そんなこと忘れていたわ」

 シンは途方に暮れたが、これを聞いていたシャギルが笑い出した。

「おしゃれの買い物に精を出す奴に、茶葉を買う奴、ついでに自分がお尋ね者だってことを忘れている奴か。どいつもこいつも緊張感のない奴らばかりだな」

「そう言うお前は、何をしていたんだ?」

 スオウがシャギルに目を向けた。

「俺にも一口」

 そう言ってソファーから身を起こし、ルリに一杯注いでもらうと、シャギルは陽気に答えた。

「その辺をぶらぶらと。ルリと金を稼ぎながら」

「それで?」

「ススルニュア人の傭兵志願者は、どうやら全部が全部、見た目通りってわけじゃない。オスキュラに雇われるふりをしながら、オスキュラとパシパの情報を集めている。オスキュラに恨みを持つ者は多い。当然だがな。ただ、何といっても相手がオスキュラでは勝負にならない」

「それは、どこの国にとっても同じだな。我々も例外ではない」

 スオウはあっさりと言った。

「あの火さえなければ」

 ルリの瞳に怒りの色が浮かぶ。

「ルリ」

 感情が高まったルリをスオウが制した。

「だけど、スオウ、その通りじゃないか?」

 シャギルがスオウを見つめた。

「まあな。だが、感情的になっても始まらん。オスキュラやパシパが不安定になって、ゲヘナが暴走するようなことにでもなれば……我々も手が付けられん。かつての二の舞になる」

 スオウが答える。

 ルリは溜息をつき、シンの淹れたお茶に手を伸ばすスオウの手を目で追った。

「で、スオウ、そっちはどうだったの? 茶葉を買っていただけじゃないんでしょ?」

「港の賭場に、妙な連中がいた。港には火薬を隠した船だ。この港に海賊が集まっている。港に停泊中の交易船の中で、奴らが目をつけるのがこの船でなければいいがな」

「妙な連中か……」

 シャギルが言い、ルリが頷く。

「奴らのことは俺たちも気づいたよ。だが、明日の朝にはこっちは出港だ。奴らが噂の海賊だとしても、来たときは来たとき、だろう?」

 シャギルが気楽に答えた。

「そういうことだな」

 スオウも頷く。

「私たちは買い物の前にパシ教の寺院に行っていたの。彼らはススルニュアへの進出に自信があるようよ。寺院の運営はとてもうまくいっているようだったわ。貧しい人のための食堂や学校もあるの。そんな施設をどんどん増やす気ね。資金が豊富だからできることね」

 爪の仕上がりを確認していたビャクグンが言った。

「国が荒廃したところに、そんな形で入り込まれると……ススルニュアもますます国の土台が揺らぐ。他の国々も、うかうかしていられないでしょうな。我々クルドゥリも(いにしえ)の時代のように、しばらく内に(こも)るより他はないのでしょうか?」

 ミルが難しい顔をした。

「後戻りはできないでしょうね。先の短いオスキュラ王はともかく、その王子たちが我々の国の存在を嗅ぎつけて、必死で所在を探っている以上」

 ビャクグンは静かに答えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ