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 初訓練のお話……拓海視点ではできなかった、それぞれの隊の詳しい訓練模様のレム視点です。ぶっちゃけ、他の隊はほぼ出てきません。一人称だとこれがキツイ……

 歓迎会の翌日、早速先生による訓練が始まった。以前まで顧問などいなかった為、どういった訓練になるのか期待と不安は正直半々だ。

 先生が訓練場に到着し、早速とばかりに訓練メニューを伝えようとしたその周りに私達も集まり、聞き洩らさぬよう集中する。

「よーし、じゃあ各隊そこを……そうだな、十周特定タイム以内にクリアして。それが終わったら各隊毎に俺の指示を仰ぐように! じゃ、特定タイムの発表だ、心して聞けよー」

 私を含め、ほぼこの場にいる全員が息を飲む。

「十周五分以内だ! 一周30秒位で走れば基本的には大丈夫だが……ま、お前たちならやれるだろう。では、よーいスタート!」


 先生の号砲に一斉に走り出す私達。ここを一周平均30秒台は、かなりキツイと思う。いや、正直に言おう。かなりキツイ!

 五周もすると周りは息を肩でし始めているようだし、私自身も自分でわかる程に呼吸が乱れてきた。先程先生が指摘したように、既に第一隊や第五隊は私達の隊全員より少し後ろに位置している。普段持久走などやらないので、普段から走る事が少ない彼らにはきついのだろう。……となると、第六隊が先頭集団に食らいついているのは何故であろうか?

「よし後30秒! ホラホラ後少しだ頑張れ―!」

 既に私達は走り終え、思わず膝に手を付いたり腰を落としている者が出てきている。間もなく残り二つの隊も走り終え、何処の隊も規定の時間に遅れることは無かった。

「よしお前ら良くやった。あ、これは毎回やるからそのつもりでな。基礎体力は走りこみが一番だ、精神力もつくぞー」

 その言葉を聞いた瞬間、私達の間に絶望という空気が生まれた。今日やっただけでも大分きついと悟る。そして恐らく、先生は回を重ねるごとに制限時間や距離をあげていくだろう……

「よし、三分休憩後、各々の隊長が俺に指示を貰いに来い。では解散!」

 その指示が出て、私達は少し散り散りに休み始めた。あるものは水分を補給し、あるものは寝転がり、それぞれがそれぞれの方法で体を休め、私も地面に腰をおろし呼吸を整えていた。



 それから三分が経過し、私達隊長達は先生のもとへと集まった。それぞれに訓練課題が与えられ、それぞれの部下に伝える。

 私達が与えられたのはザゼンという訓練だった。なんでも、意識を無に近付け、精神力を養うものだという。本来ならば意識を無に近付け、あるお題について考えることらしいのだが、私達は何も考えず、心を無にする事を命じられた。




 指示された、脚を組み、組んだ手をその太ももの上に乗せてザゼンを開始する。最初、先生に意識を無にするにはどうすれば? と尋ねたところ、返答はこうだった。

「んなもん、周りを思考から全て追い出すようにとしか言えんよ。あとは個人の差があるしな」

 ……なんというか、すごく適当というか放任主義というか……

 とにもかくにも、それすらも思考の外へと追い出すべく集中を開始する。段々と外を考える事もなくなり、集中していった。その矢先――――


 パァン、と小気味の良い何かを叩くような音と、短い悲鳴。私の部下の一人だ。何事かと目を開いた時、その正体が分かった。

 先生が、走りながらこちらを監視していたらしい。風で撃たれたらしく、それと同じらしい風がこちらに飛んできている。

「痛ッ!?」

「雑念捨てろ―! さもなくば段々強くしていってやるからな!」

 その言葉に、私達は慌てて姿勢を取り直し、再び瞳を閉じる。思考は再びゼロに収束し始める。



 その後も、幾度か部下達や一緒の訓練をしていた第五隊の面々が先生の風を喰らっていたが、一人二回以上食らったのは一人だけであった。ちなみに第五隊だ。


「よしお前たちよくやった。今日のとこはこれで終了だが……まあ今日は皆及第点だった。明日からはまた別な課題を用意する隊もあれば更に発展させる隊、継続する隊もある。だがしばらくは基本を徹底的にやるつもりだ。そう考えておいてくれ。じゃ、解散!」

 そういって部下達はそれぞれの部屋へと戻る。国王直属であるため、普段はそれぞれの部屋で出撃待ちだからだ。しかし、隊長である我々は、気になった事を解決すべくその場にのこっていた。

「先生、なんで今日、先生まで走ってたんです?」

「確かに。しかもずっと走っててなんでピンピンしてんだ……」

「先生は監督しているだけでもよかったんじゃないか?」

「愚か者どもめ。上に立つものがグウタラしていたら示しがつかんだろうが。それにピンピンしてるのは気のせいだ。二時間走って平気な奴はマラソンやっててもそうはいない」

 平気ではない、という割には息が切れているようでもないし先程から腰も下ろしていない。なんというか……強いて言うなら化物のようだ。きっと魔族より体力がある。

「流石だな。しかし今疲れていると言っているが……そもそもよくそんなに走れたな」

「持久走とサバイバルは得意分野だからな」

「サバイバル?」

「おう。食い物も好き嫌い少ないしな。応急処置以外はなんとかなるぞ」

 そんな会話からどうして思いついたのか、とんでもない事を言い放った。

「さて、一週間後は森にでも籠ってみるか……」

「え!」

「大丈夫。期間は一週間だし、あと隊長限定ね。隊員達も隊長がいない中での訓練になる。まあ良い訓練になるさ」

 ……私達が聞きたいのはそこではないのだが……ともかく、多分拒否権は無いようだ。もとより、反対するつもりではなかったのでいいのだが。



 しかし、私達はこの期に起こる事件を、微塵も想像してはいなかったのだった。

 と、いうわけで山籠り直前でしたー。

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