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「う……っ?」

 ふと目を覚ます。うつ伏せに倒れていることに気付くまでに少し時間がかかった。起き上がろうとすると、体に鈍い痛みが走り、再び崩れ落ちる。仕方なくそのまま辺りを見回すと、そこは見覚えのあるはずの森。周りには仲間がさっきまでの私と同じように倒れている。そう、先程と違うのは、仲間が倒れていることと、同時に木々も吹き飛ばされ、倒されていること。そこで私はすべてを思い出す。亡命したイチカワ タクミを追い、そして戦闘を仕掛けたものの策を破られ、全滅したのだった、と。

「お、おい、大丈夫か……」

 傍に倒れている仲間に、片っ端から声をかけていく。大抵、うめき声をあげて意識を覚醒させるものの、すぐに動けるような者はほんの数名だった。

「とにかく、少し休もう。それと、国王様に増援を頼まないと、こっちが勝てるような相手じゃないぞ」

「……そうだな。一度、引き返して体勢を整え、策を練り直さねば……」

 木にもたれかかって話す私達。空はすっかり夕焼けに染まり、私達の肌も少し朱色に染まっていた。疲労と体へのダメージが蓄積した私達は、そのまましばらく木や地面に体を預けたまま、体力の回復を待っていた。



 翌日。ようやく普段通りとはいかずともかなり動けるようになった私達は、2つの部隊で別行動をとることとなった。ゼルキス達の部隊が一度王城へと戻り、報告を済ませるとともに援軍の要請。その間私達は魔王軍領内に潜入、少しでも情報を集め、破壊工作などで優位に立つことを目的に行動する。

「じゃあ、頼むぜ」

「そちらもな。私達は恐らくここから南下し、敵の薄いところから奇襲をかけていく。合流するときには……そうだな、お前も多少領内で暴れてくれ。そうすれば噂も流れるだろう」

「わかった。じゃあ、気をつけろよ」

 そういったのを最後に、互いに背を向けあい歩き始める私達。ふと後ろを振り返った時には、足の速いゼルキス達の部隊はもう見えなくなっていた。





「隊長、私達は今どこへ向かっているんですか?」

 歩いている途中、ほどなくしてふと疑問に思ったらしいそれを聞いてくるフィル。

「とりあえず海岸線へ出る予定だ。あと半日ほども歩けば、森を抜けて崖近くに出るはずだ。そこで一度食事を兼ねて今後に向かう目的地を決定する。幸い、地図は頭に入っているのでな」

 魔王軍とはもう何年と戦っている王国。その両兵士の、特に、位が高い者達は大抵向こう側の地理もある程度把握しているものだ。

 そのまま会話を終えた私達は、ペースを変えることなく歩き続ける。次第に木々が葉の広いものに変わっていく。次第に木々の間隔も広くなり始め、葉が擦れる音も聞こえにくくなる。風が強くなり始め、その風も海独特のにおいを孕み始める。海が近づいてきた証拠だ。




「ふう……ようやく着いたな。ここで小休止を……いや、待て……!」

 木々がまだ私達を隠している内に、その危険を察知する。左手で仲間達を制し、その事態に気付いたらしい仲間達も、纏う雰囲気を変える。

「……1、2、3……行きますか? 隊長」

 不安気を感じさせない、しかし慎重さもまた失ってはいない声で尋ねてくるリィナ。

「ああ。合図を出す、ジェフとフラックが奇襲をかけろ。その後私とオブニィが突撃する。リィナとフィルはその2つのバックアップを頼む」

 こくり、と頷きを返してくる。私は敵に向き直り、右手を剣の柄に持っていき、左手は肘から上だけを上げる。敵がすべて背後を向けたその隙に左手を振り下ろし、直後脇を2つの影が通り過ぎてゆく。

「て、敵しゅ――――」

 声を上げるも、最後まで言う間もなく、首と襟を掴まれて地面に引き倒された敵のヴァンプ。その声には気づいたらしい残りだが、既に駆けだした私達は反撃の間を与えることなく沈める。その直後、走り寄ってきたリィナとフィルが背後を固める。他に敵はいないらしい。

「よし、よくやった。先に食事を摂っていてくれ。こいつらから何か聞き出せないか試してくる」

 そう言い残し、私は再び森へと入っていく。手ごろな葉を見つけ、それで簡単に拘束する。かなり丈夫な葉なので、破られる前に剣を突き付ければ身動きは封じることが出来るはずだ。

「起きろ!」

 胴を蹴り、剣を抜く。呻きを上げて意識を取り戻したヴァンプの男は、自分が縛られていることを悟るとすぐに動こうとするが、首筋に私が当てた剣を見て、動きをすぐ止める。

「さて……状況はわかると思うが、貴様の命は今私次第だ。今から私が聞くことに正直に答えろ。まず一つ。イチカワ タクミの件について、どの程度情報は広まっている?」

「イ、イチカワ……? あ、ああ……噂でしか聞いていないが……本当だったのか?」

 なるほど……どうやら、流石にまだ噂程度しか広まっていないようだ。昨日起きたばかりのことだ、当然と言えば当然だろう。しかし、こんな末端まで噂として広まったということは、中央付近はもう噂ではすんでいないはずだ。

「よし。ではもう一つ。ここの辺りで最も勢力の強い場所は?」

「……こ、この近くなら、ここから西に少し行ったところにある、食糧庫を兼ねた場所だ……」

 怯えながら言うそれに、私は「確認」を行う。

「本当だな?」

 首筋に僅かに刃先を食い込ませる。それに顔を真っ青にし、見るからに怯えを強くする。

「ほ、本当だ! ここいらで一番大きな補給倉庫なんだ、そこを断たれれば……うぐっ」

 最後まで言わせる必要もないため、すぐさま剣の柄で殴って気絶させる。拘束を解き、三名まとめて大きな木にもたれかからせておく。



「皆、目的地が決まった。ここから西にある、『D-382』……巨大な食糧庫だ」

 森を出て、剣を背にしまいながら皆に告げる。しばらくの休止を挟んで、私達は西へと向かって歩き始めた。

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