CODE.40
今回少し短めです。それと、投稿が遅れて申し訳ないです。
歩くことしばらく、私達の目の前に迫っていた『D-382』は、まさに巨大としか言いようがなかった。灰色のその建物は、一度に大量に荷物を運ぶ為か大きな出入り口がいくつも口を開けているし、なによりそれらを守るための警備も尋常ではないほど厳戒態勢である。
「隊長、いくらなんでも、警戒が強すぎませんかね?」
「……確かにそうかもしれん。オブニィ、お前はどう思う?」
尋ね返されたオブニィは、しばしうんうんと悩む。しかし、情報の少なさから何も浮かぶ事はなかったらしい。
「理由はわかりませんが……少なくとも何かあったとみるべきでしょう……うん?」
そう言っていたオブニィの視線が、私から外れ、私の斜め上を行く。それに気づき、私も視線をそちらに動かすと、なんとなく理由が分かった。
「火がでているのか……恐らくは、誰かが故意に点けたのだろうが」
空気を入れ替えるための排気口から噴き出している黒煙。明らかにそれは何かが燃えているという証拠であり、今の状況、つまり敵兵達の慌てようから、事態を察することができた。
「この隙に乗じて侵入するぞ、ついて来い!」
目指すは警備が一時的に薄くなった裏口。円を組むように周囲に気を配りながら移動し、裏口でありながらも平均的な体格の者なら横に三名並んでも入れそうなそこをくぐる。
内部に入って周りを警戒し、特に敵がいないことを確認した私達。
「よし……みんな出払っているようだな」
「そのようですね。最低限は残してあるようですが」
よほど大きな火が上がったらしい。その火を消そうとする者達が叫んでいるのが上から聞こえてくる。
「私達もこの隙に乗じて火を放とう。ここを断てば後々我々に有利となる」
そうして、私のほかに火の属性を持つフラックとフィルで3つに部隊を分け、適当に機を見て抜け出し、この倉庫の外にある森の、少し開けた場所にある泉で落ち合うこととなった。
「では、健闘を」
「お気をつけて」
「ああ、貴様らもな」
そう言って、私はオブニィと共に走り出す。オブニィはこの隊の中では一対一の戦闘に弱い方で、逆に対大多数の戦闘では強い。ただ、この倉庫のような場所では相性が悪いと踏み、私が引き受けることとなった。もっとも、この隊の中で、という基準であるため、普通に戦えばよほどのことがない限り何とかなってしまうのだが。
「隊長、あそこですか?」
「ああ。扉を開ける間、後方の警戒を任せるぞ」
「はい! っておわっ!?」
いきなり飛んできた瓦礫を何とか防ぐオブニィ。操る土と同じ色をした短い髪が僅かに揺れる。
「これはまた……酷いものだ」
吹き飛ばされた壁を見る。大きく開いたその穴は、向こうから何個も開いていた。吹き飛んできた瓦礫に交じって同じく飛んできた、詳しい種類も分からなくなってしまったほどに汚れているビーストの魔王軍兵士らしき男は、幸い気絶で済んだらしい。
「この男……どうします?」
「そこら辺にでも寝かせておけ。ふっ……! よし、開いたぞ」
思いのほか思い、小さな門のように作られた扉を開く。中にはやはりというべきか、大量の食品類などが置かれている。オブニィと頷き合い、扉の向こうをオブニィが警戒している間に、私はさっさと目的を達成すべく部屋の隅から火を撒いていく。途中で消されてもいいように、多くの場所に少しずつ。やがて火がこの部屋を焼き尽くすのも時間の問題。私達は部屋を後にし、新たな標的を探す。
あれからさらに3箇所の倉庫に火をつけた私達は、既に泉に到着していた。先にいたのはフラックとリィナのペア。まだジェフとフィルは到着していないようだ。
「お疲れ様です。そろそろフィルとジェフも戻ってきますかね?」
「恐らくは……しかし、我ながら派手に燃やしたものだな」
倉庫を見れば、既に煌々と赤く燃えており、その少し上から空高く柱のように黒煙が昇っている。これで、どう足掻こうともあの倉庫は使用不可だ。この周辺への物資提供は壊滅同然であろう。
しばらくすると、私達も通ってきた道からジェフとフィルが帰ってきた。倉庫が完全に焼け落ちるさまを見つめ、私達は再び動き出す。あれが目的というわけではない。まだ、私達は攪乱を済ませてはいない。次に目指すべきは、食糧の運搬を断った後ということもあるから、武力の消滅か。
「よし……次へ向かうぞ。そうだな、ここいらで武器庫となると……『D-184』か」
ここから北西にある、この一帯で最も警戒すべき武器庫。つぶしておいて損はない。私達は少しだけ休憩を挟み、再び歩き始めた。
すべては、まだ見えぬ目的のために――――――――




