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「おーいお前ら! 撤退するぞ!!」

 その声を聞いた私は、その意味を瞬時に悟った。

「じゃ、じゃあ魔王は……!」

「……すまん、逃げられた……とにかく一回王都へ戻るぞ! ってか邪魔だ魔王軍残党共!」

 倒した、というわけではなかった。それでも、退けたことに変わりはない。先生は周りに群がった兵を一気に風で薙ぎ払い、私達の元へ駆け寄ってきた。






 そして、私達は王国に馬車で凱旋してきたわけである。が――――

「なあ、ちょっと聞いていいか」

「何でしょう?」

「……この盛大かつ過剰なステキ仕様のパレードは何だ!?」

 ステキ仕様は、おそらく褒め言葉ではないに違いない。目の前に広がるのは、それはそれは盛大なパレード。馬車を囲うように大量の住民が押し寄せてきている。

「そりゃあ……魔王の本気の侵攻からこの街を救ったんですから」

「……俺は騒がれるのは好まない平和主義者なんだけど……」

 そうはいっても、魔王を倒すのに目立たぬことは不可能に近い。

「騒がれる原因を作ったのも先生ですけども」

「……それは否定しないがな。俺は密かに行動しているつもりだぞ?」

「風評というのは……時にプロより速く正確に情報を掴むものですよ」

「……まさかとは思うがセシア、原因はお前じゃなかろうな?」

「え!? い、いえいえ何を仰います唐突にっ!?」

「……セシア、貴様はどうやら中庭を百周程したいらしいな、あぁん!?」

「うぅ…………」

 どうも、犯人はセシアらしい。おそらく先生はカマをかけたのかもしれないが、それに過剰なまでに反応したのがセシアの運の尽きらしい。拒否など許さないという雰囲気がセシアに迫り、セシアは諦めたように項垂れた。他の隊員たちは、ある程度慣れてしまったのか呆れ笑いをしている。かくいう私も、おそらくは顔に出てしまっているだろう。



 王国中心地、王城へと馬車で向かい、王城で降りた私達を、残って国の防衛に務めていた他の部隊員が迎えてくれた。

「で、何でお前らがいるの?」

「いや何って……先生が国王に称号を貰う儀式が始まるから待っているだけだが?」

「……何ぃ!?」

「先生ほどの人物がいままで称号を持ってない方がおかしいんだぜ? 部隊の隊長クラスなら大抵称号を持っているしな」

「…………俺は嫌な予感しかしないがね……」

 何か小さな声で先生が呟いたようだが、私達は誰も聞き取れなかった。





「おお、よくやってくれたタクミ殿! おかげでこの国も縮小せず済みましたぞ!」

「それは良かったです。最も……魔王は逃がしてしまいましたが……」

 結局最後まで渋っていた先生だったが、それでも国王様の前に立った時にはその感情は見せていない。

「いいのだよ。別にこちらから攻める事もない。守りきって諦めさせればいいのだよ」

「お優しいのですな」

「民には負担をかけてしまうがな……まあそれも理解して貰ったうえでの方針ではあるのだが」


「で、だ。この度の功績だけではなく、貴殿の様々な功績を称え、称号を授ける」

 いよいよ本題に入る。先生が跪いているのが気配でわかる。ちなみに、私達は最初から跪いている。

 一応表面上は光栄だというような感情と気配が感じられるのだが、その先生から他に焦りなどの感情が渦巻いているような気がするのは私だけだろうか?

「伝説的兵士であり、そしてトップの軍隊の教官。かなりの知識。そして無尽蔵の魔力から繰り出される雷と風! それらを内に秘めし貴殿に……」

 国王様がもったいつけるように間を開ける。事前に称号は決めてあるはずだから、迷っているわけはない。

「伝説の首領ボス……伝説的首領ザボス オブレジェンドの称号を授ける!」

「あ、ありがたき幸せ……感謝いたします」

 最初を噛んだのと、お礼を述べるまでの間。おそらくさっきの気配も関係しているだろうが、果たして幾名が気付いたものか。しかし、あのような称号の中でもなお上位レベルの称号を与えられるとは、やはり先生は一味違うということだろう。

 ざわざわ、とその称号の偉大さに話し声が聞こえだすその場を国王様が鎮め、その場は解散となった。




「良かったなぁ先生! 称号を貰えるのってピンキリなんだけど……あれはかなりいいもんだぜ?」

「そ、そうですよ。で、伝説とかのワードが入るのは、あ、あまりいませんから」

「しかしまあ……これで称号を貰ってないのはイースだけか?」

「……? いえ、私は既に頂戴しておりますが」

「な、何ぃ!? い、一体どんなのだ?」

「静寂なる純白ですが」

 なんと……イースはいつの間に貰っているのだろうか。部隊のだれかが称号を授かるときには大抵その部隊員全員が集められるはずなので、もしかしたら入隊以前に貰っていたのだろうか? となると、実践で身を以て経験したイースの腕がとんでもないものだったのだと改めて実感せざるを得なかった。


 そのあとは、結局先生だけ知らなかった……とはいえ、私達がもらったのは先生が来る前だったのだからしょうがない。その称号を聞かれたので教えたりして、その場は解散になった。ああ、そういえば、先生が称号をもらう以前にも、一つ通り名があったということをアクトが告げていたか。その際に、先生が割と本気で落ち込んでいた気がしたのだが……なぜであろうか?

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