第一話 視線
アストラ・ノヴァ王立学院の正門は、想像をはるかに超える大きさだった。黒い石でできた二本の巨大なアーチが、巨人の腕のようにそびえ立ち、頂点で繋がっている。そこには、とぐろを巻いた竜が刻まれていた。その目はルビーのように赤く、真昼の光の中でもかすかに輝いていた。
ジャワド・タナカは、その前に数秒間立ち尽くした。ここの空気は違う。冷たくも暖かくもなく、帯電している。まるで大地そのものが呼吸しているかのようだ。
彼はダークグリーンのパーカーを着ていた。それは肩と背中を覆っていた。黒いパンツを履き、白いスニーカーを履いていた。黒い縁の眼鏡はきちんと鼻の上に乗り、わずかに長い黒髪がそよ風に揺れた。
一歩踏み出した。そしてもう一歩。
門をくぐった。
広い石畳の道が前方に伸びている。両側には青い葉をつけた木々が並んでいる。名前は知らない。生徒たちが周りを行き交う。ある者は金の装飾が施された黒い制服を着て、ある者は私服だ。背中に小さな翼を畳んだ少女が、歩きながら本に何かを書きつけている。額に小さな角を持つ少年が、大きな声で友人と話している。芝生に座る生徒の一団。一人が小さな火の玉を指の間で転がしている。
誰もジャワドに気づかない。
彼はただ歩く。足取りは静かで、眼鏡の奥の目が辺りを見渡す。左側には図書館の建物。その高い塔はすべてを見下ろしている。右側にはランキング・アリーナ。金属の柵に囲まれ、中から剣のぶつかる音が聞こえてくる。
そして、彼女を見た。
彼女は道の交差点に立っていた。教師と話している。長い深紅の髪が風にわずかに揺れ、ルビーのような瞳が日の光の下で輝いている。生徒会の制服を着ている。黒いジャケットの袖には銀の刺繍、深紅のスカート。左腰には長い剣が下がっている。
彼女は教師を見ていた。話を聞いている。集中している。
その時……彼女は振り向いた。
なぜだか自分でもわからない。何かを感じたのか。ただの偶然か。
一瞬だけ、彼女の目が彼の目と交わった。
視線。ほんの一瞬。一秒にも満たない。
ジャワドもまた、同じ瞬間に目を上げた。彼の目が彼女の目と交わった。視線。ほんの一瞬。一秒にも満たない。
そして……二人とも、それぞれの道を歩き出した。
彼女は教師との話に戻った。
彼は目を伏せ、管理棟へと歩き出した。
立ち止まらなかった。話さなかった。互いの名前も知らない。
ただ……一瞬の視線だけ。
管理棟は学院の他の建物より古かった。灰色の石壁、狭くて高い窓。ジャワドは正面玄関から入り、二階へと階段を上がった。廊下は静かで、古い紙とインクの匂いが漂っていた。
登録室は廊下の突き当たりにあった。木の扉に、小さな真鍮のプレート。「入学・登録課」と書いてある。
二回ノックした。
中から女性の声。「入って。」
ジャワドは扉を開けて入った。
部屋は狭いが整っていた。壁の木の棚には、ファイルや分厚い台帳がびっしりと詰まっている。中央に大きな机。その向こうに、四十代の女性が座っていた。茶色の髪をきっちりとお団子にまとめ、灰色の目で半縁の眼鏡の上から彼を見ている。黒い制服を着ている。
彼女は机の前の椅子を指さした。
「座って。」
座った。
彼女は机の引き出しを開け、茶色の表紙のファイルを取り出した。机の上に置き、開いた。彼を見ない。目は書類の上。
「名前は?」
「ジャワド・タナカ。」
「年齢?」
「二十一。」
「以前の学院は?」
「京都先端科学学院。それから、北海道寒冷科学学院。」
書いた。顔を上げない。
「京都……北海道。」
質問ではなかった。ただの記入。
ファイルのページをめくる。一ページ。また一ページ。報告書のところで止まった。
「京都の報告書によると、訓練棟での事件。一部破壊。数名の生徒が恐慌状態に。」
ジャワドは答えなかった。
「北海道の報告書は……睡眠発作。夢。記憶障害。」
ファイルを閉じた。彼を見上げた。その目に好奇心はない。興味もない。ただ……ルーティン。
「なぜアストラ・ノヴァに?」
「第二学院に送られました。答えはここにあると言われました。」
「何の答え?」
「わかりません。」
彼女は二秒間彼を見つめた。そして再びファイルに目を落とした。
「わかった。」
新しい紙を取り出し、書き始めた。それ以上の質問はしなかった。説明も求めなかった。ただデータを埋めていった。
「普通の生徒。南棟、三階、304号室。」
書き終えた。そして彼に手を差し出した。指の間に小さなカード。白いカードに紺色の縁。学院の紋章、ジャワドの写真、名前、学生番号、部屋番号が書かれている。
ジャワドはカードを受け取った。一瞬見つめ、パーカーのポケットに入れた。
「良い一日を。」
「ありがとう。」
椅子から立ち上がった。床から黒いバッグを拾い上げた。扉に向かって振り返った。
それ以上の言葉はなかった。警告もなかった。「監視している」とか「気をつけろ」とか。ただ、仕事を終えた職員と、部屋を出ていく生徒だけ。
三年前。
ジャワド・タナカは両親を知らなかった。
街の外れにある小さな孤児院で育った。古い二階建て、冬には雨漏りする屋根。子供は多くなかった。しかしジャワドはその中で最も無口だった。
泣かなかった。不平を言わなかった。隅に座り、訪問者が置いていった本を読んでいた。古い本、いくつかは破れていた。しかし彼は全部読んだ。
ある日、文部省の女性が来た。奨学金を探している生徒を探していた。彼の成績を見た。高かった。願書を書くよう用紙を渡した。
彼女は尋ねた。「学院で勉強したい?」
彼を見た。そして言った。「はい。」
熱心ではなかった。怖がってもいなかった。ただ……はい。
京都先端科学学院は想像以上に大きかった。高い建物、広い廊下、あらゆる場所からの生徒。しかしジャワドはその一部ではなかった。
最初の週、クラスメートと話そうとした。彼らは答えなかった。彼を見て、離れていった。
最初の月、彼は試すのをやめた。
一人で教室の間を歩いた。一人で図書館に座った。一人でカフェテリアで食べた。生徒たちは遠くから彼を見ていた。ある者はささやいた。
「あの変な奴。」
「見た?いつも一人だ。」
「なんか……変わってる。」
「狂ってるのかも。」
ジャワドは聞こえた。しかし何も言わなかった。反応すれば悪化することを学んだ。
質素な生活を送った。寮の小さな部屋。ベッド、机、窓。友達はいない。訪問者もいない。ただ本だけ。
時々、夜に窓辺に座り、空を見上げ、自問した。
「なぜここにいるんだろう?」
答えはなかった。
寒い夜だった。ジャワドは図書館から遅く帰る途中だった。廊下はほとんど空だった。しかし寮に直行したくなかった。近道をすることにした。訓練棟と古い倉庫の間の狭い路地。
暗かった。明かりはない。ただ石の上を歩く自分の足音だけ。
そして立ち止まった。
何かがおかしい。
振り返った。しかし何も見えない。
そして……ささやきを聞いた。人間のものではない。
影から出てきた。
三体。黒い体、顔なし。小さな赤い目が暗闇で光る。話さない。ただ這うように近づいてくる。
ジャワドは後退した。しかし路地は後ろも塞がれていた。
捕まった。
最初は叫ばなかった。怖すぎて声が出なかった。
しかし痛みが来た。
何かが右腕に入った。注射ではない。傷ではない。もっと深いもの。彼の内側から湧き出て、皮膚に押し寄せる。鱗。板。生きた金属。
ジャワドは腕が砕かれ、同時に再形成されるのを感じた。血が皮膚から流れた。しかし鱗は止まらなかった。成長し、形をなし、融合した。
叫んだ。
声が枯れるまで叫んだ。そして泣いた。そしてまた叫んだ。
これが何時間続いたか。わからない。半日だったかもしれない。一瞬も休めなかった。痛みは止まらなかった。涙は止まらなかった。
悪魔たちは周りに立っていた。話さない。ただ見ている。
そして……去った。
消えた。
ジャワドは地面に残された。体は震えていた。右腕は鱗に覆われていたが、ゆっくりと消え始めた。皮膚の下へ。まるで最初からなかったかのように。
翌日、学院に戻った。誰にも言わなかった。
次の二日間、何かおかしいと感じ始めた。
時々、真昼に閃光を見た。理解できない光景。奇妙な城。破壊の光景。音……叫び……咆哮。
そして視界は正常に戻る。
夜には悪夢が来た。起きた時には覚えていない。ただ恐怖を感じる。冷や汗。心臓の鼓動。
ある夜、目を覚ますと、知らない言葉をささやいていた。止まった。周りを見た。部屋は空。しかし誰かがいた気がした。
次の週、睡眠発作が始まった。突然倒れる。教室で。図書館で。廊下で。数分間眠り、目覚める。何も覚えていない。
ある発作で、訓練棟の一部が破壊された。
どうやってかはわからない。しかし彼はそこにいた。生徒たちは見た。恐れた。
一週間後、校長室に呼び出された。
校長は六十代の男。顔は険しい。ジャワドを直接見ない。
「タナカ君。なぜここに呼ばれたかわかるね。」
ジャワドは答えなかった。
「訓練棟の事件。生徒たちは教室に戻るのを拒んでいる。保護者から苦情。理事会は説明を求めている。」
止まった。机の上の書類をめくった。何かを探していた。何でもいい。彼を追い出す方法を。
「私は……君をここに置いておけない。君は学院にとって危険だ。生徒たちに。評判に。」
やっと目を上げた。
「北海道寒冷科学学院が受け入れてくれる。特別なプログラムがある。君が……苦しんでいることをコントロールする手助けをしてくれる。」
明らかな追放ではなかった。しかし追放だった。
ジャワドは議論しなかった。説明しなかった。自分を守ろうとしなかった。
ただ言った。「わかりました。」
一年前。
北海道は寒かった。天候だけでなく。すべてが。建物は小さく、山に孤立していた。そこの生徒は……違った。少なく、静かだった。
ジャワドはバッグ一つで到着した。
最初の週、眠れなかった。
二週目、夢が始まった。王国。赤い空。飛ぶ竜。青い髪の女性が遠くから彼を見ている。彼を呼んでいる。しかし名前が聞こえない。
三週目、睡眠発作が戻った。しかし以前より軽かった。体がコントロールを学んでいるかのように。
四週目、寝言で話している自分に気づいた。知らない言語。教師たちは彼の言葉を記録した。理解できなかった。しかし恐れた。
北海道は単なる学院ではなかった。訓練キャンプだった。
毎日、訓練。毎日、痛み。彼の耐久力を試した。エネルギーを抑えること。ビジョンをコントロールすること。
ある日は痛みで叫んだ。ある夜は泣いた。時には自分を破壊するのではないかと思った。自分を殺すのではないかと。
しかし諦めなかった。
三ヶ月目、あるレベルに達した。能力の四十パーセント以上をコントロールできるようになった。しかし苦しんでいた。毎月。毎日。
ある夜、少女が来た。そこの生徒。名前は知らない。
「あなた、夢を見るでしょ?」と彼女は言った。
ジャワドは彼女を見た。
「どうしてわかる?」
「私も見るから。」
それ以上説明しなかった。ただ小さな紙を机に置いた。
「答えはアストラ・ノヴァにある。そこへ行って。王女を探して。」
翌日、少女は消えた。
三ヶ月後、転校の決定が下った。
失敗のせいではなかった。恐れのせいだった。
ある訓練で、ジャワドはほとんど制御を失いかけた。エネルギーが爆発した。訓練教官が負傷した。重傷者もいた。
彼らは言った。「時限爆弾だ。」
「予測不能だ。」
「アストラ・ノヴァ王立学院だけが彼を収容できるかもしれない。」
理由は説明しなかった。
しかし彼を送った。
ジャワドは登録室を出た。
廊下は静かだった。薄暗い照明。古い紙の匂いがまだ漂っていた。
黒いバッグを背負った。学生証はポケットに。部屋の鍵は手に。
廊下を歩いた。管理棟を出た。外の空気は少し冷たかった。空は夕暮れに傾いている。
広場を横切り、南寮に入った。三階へ階段を上がった。
扉の前に立った。304号室。
鍵を差し込み、扉を開けた。
部屋は質素だった。
小さな窓が中庭に面している。右側に木のクローゼット。隅に小さな浴室。シンプルな灰色のカバーのベッド。小さな木の机と椅子。
ジャワドはバッグをベッドに置いた。開けた。
思い出の写真をいくつか出した。京都の写真。北海道の写真。誰も笑っていない。ただ建物。廊下。空。
紙を出した。最初と二番目の学院で読んだ本。小説。科学書。いくつかは破れていた。
服を出した。クローゼットに整理した。
そしてベッドに座った。スマホを出した。イヤホンを耳に入れた。
仰向けに寝た。天井を見た。
何も考えなかった。何も思い出さなかった。ただ……そこにいた。
数分後、目を閉じた。
そして眠った。
私はこの物語の作者です。アイデアの整理、情景描写の改善、会話の調整のために、AIツール DeepSeek を補助的に使用しました。行動、主要な会話、感情、キャラクターの成長はすべて私自身の創作です。




