:プロローグ
暗い暗い暗闇の中で、消えゆく魂があった・・・
その魂、加地聖也は自分の人生と最後の瞬間を走馬燈のように思い出していた。
どこにでもいる様な平凡を絵に描いたような男。一言で言い表すならば「普通」27歳で建築の設計技術者をしていたが、一流の大学には行けず三流大学を卒業し、大手ゼネコンへの就職は叶わず、中堅ゼネコンへ就職した。
しかし、仕事ができる訳でもなく、人付き合いが得意という訳でもない、そんな彼が出世したり、彼女ができる訳もなかった。高校の時に両親は事故で亡くなり、血縁者は祖母一人のみ、一人でいるのが好きな為友達は少なく、休みはいつもネット小説を読み漁っている。そんなつまらない毎日をただただ絶望の中で生きていた。
そんな彼にも楽しみはあった。毎年一回ある社員旅行である。
なぜ楽しみにしているかというと、普段は絶対に話す事の出来ない会社総務課に勤める同期のマドンナ安藤玲さんと話す機会があるかも知れないからだ。今年は京都への旅行の為、会社本社のある新宿区からバスに乗ることとなっていた。席順は当日発着場でくじ引きで決められ、毎年男達はこの移動時間を何よりも楽しみしていた。
当日現地は、「今年こそは、今年こそは玲ちゃんの横に!!!」
「玲ちゃんは19番だから・・・20番だ!!20番を狙え」という男達で盛り上がっていた。
例にもれず、聖也もかなり楽しいる一人であった。
「今年は、誰が隣になるかね?」と聞くのは聖也の少ない友達、会社の同期である身長190cm、筋肉質で強面の斎藤健司で、「僕は、女の子なら誰でもいいかな~~笑」とピアスで茶髪の童顔のチャラチャラしている後輩、西連寺和也だ。
「カズは相変わらずチャラいな~」とくだらない話をしていると
「はーい、次は加地聖也さん!!」と呼ばれ運命のくじを引きに聖也は配られた席順表を手に持ち受付向かった。
「よし!20番こい!!」と勢い良くくじを引き・・・「加地さん21番」と担当の人に言われ、聖也は今年もダメだったことのに肩を落とした。
「聖也よかったじゃん!隣はダメだったけど、安藤さんの後ろじゃん!!」
「聖也さんよかったね~~」と帰ってきた聖也に慰めるように二人が声を掛けた。
そんないつもと変わらない何気ない会話をしていると、「斎藤健司さん!!!」と呼ばれ、
「よし!健司行ってこい!!」
「ケンさん女の子の隣だといいね~~」と二人に見送られくじを引きに健司は向かった・・・
結果、「斎藤さん!20番」との声の後、「マジか!!!」、「クソ~~~~~」との醜い叫び声が響いた。「・・・クソ・・・・・」との聖也の一言はその騒音の中に掻き消えていった・・・・・
ちなみに、和也の隣は男に決まり「うああぁぁぁぁぁ~」と一人の男のむなしい叫び声が青い空に響いていた。
バスに乗り込むと聖也の隣には、玲ちゃん事安藤玲がいる為あまり目立たないが入社1年目の身長150cmほどのショートヘアーのかわいい系小泉麗奈が隣に座る事になっていた。
京都へとバスが出発し「加地先輩よろしくね」と軽い感じの後輩との挨拶を交わしていたが、聖也には前の席が気になりそれどころではなかった。
「斎藤さん、初めまして私は安藤玲です。気軽に玲って呼んでね」
「俺は斎藤健司だ。俺は健司でいいよ。しかし安藤さんの事を呼び捨てで呼んだらほかの男に殺されるからやめとくよ。ははは」
「え~~!そんなことないですよ。」と楽しそうな声が聞こえて来たからだ。
そんな時、「そうだ!後ろの席に俺の仲いい同僚がいるんで紹介していいですか?」
「そうなんですか?いいですよ。」と後ろの席に、健司と安藤さんが前座席からこちらに顔を向けてきた。
「ほら!聖也自己紹介!!」
「あっ!お・ぼ僕は、加地せ聖也ともう・言います。彼女はいません!!」といきなりの事に噛み噛みでテンパってしまった。「うわ~~」と健司が呟いているが、当の本人は気づいていない。
『私は、安藤玲です。よろしくね、加地さん!』顔を真っ赤にしている俺に優しく天使の様な笑顔で自己紹介をしてくれた。(ほんと!安藤さんめっちゃかわいい!!)と心の中で叫び、夢の様なひと時の中でその事故は起きた。「キキィィィィ」というブレーキ音の後、「ガンっ!!」という衝撃があり、フワッという浮遊感に襲われた聖也は、自然と外の景色を眺めていた。異常にゆっくりと進む時間の中で、何があったのか聖也は現状を理解していく・・・『 ああ~・・・このバスは落ちている・・ 』どれほどの高さから落ちているわは分からないが、聖也には自分、そしてバスに乗っているみんなが助からないとなぜかわかっていた。そんな中聖也は友の事を心配し、安藤さんともっと話たかったという思いよりも・・・
夢、願望が彼の中で強く、強く渦巻いていた。『強くなりたい、ここではない未知という名の冒険の溢れる世界のなかで、誰よりも強くなりたい・・・』
聖也は休みの日、ネット小説を読み漁る内に心のどこかで異世界、冒険、最強という名の言葉に取り付かれていた。死を目前に控えてその思いがより一層強くなっていた・・
しかし、無情にもその思いの中で聖也の意識は暗闇へと落ちて行った・・・・・
どこまでも続く漆黒の渦の中に薄れゆく意識の中で、魂だけとなったその存在が消えるその瞬間に一つの呟きが響いた、『君達は生まれる世界を間違えた』決して大きな声ではなかったが、その声は闇の中にどこまでも響いていく、『君達にはチャンスをあげる、混沌にまみれた世界の中でどこまで出来るか試してみるといいよ』その言葉のあと・・・聖也は白い白い光に包まれた・・・・・
少し長くなりましたが、初の投稿の初プロローグ( ´∀` )
至らない事ばかりかもしれませんが、なるべく毎日更新していくんで、優しく見守ってくださいね。
では、白い白い雪の降る世界の中でをよろしくお願いします。




