第十話 超エネルギーで基地覚醒、そしてお約束のユニフォーム
「何か、とんでもなく不吉なものを持ってきたわね」
屋敷の居間に戻ると、実体化したアリサがテーブルの上の黒い杭を見て、頬を引きつらせた。
「アリサ、これ何だか分かるか?」
『この世界の禁忌の魔法で作られた、激ヤバな魔力の塊よ。人間の負の感情がこれでもかと詰め込まれているわ。握りつぶして外に放出すれば、この辺り一帯が軽く吹き飛ぶわね』
前世の特撮番組なら、間違いなく敵の幹部が自爆用に使うアイテムだ。
だが壊さずにエネルギーとして抽出すれば、アジトの強化に使えるはず。
アリサの案内で二階の奥にある、かつて魔女が使っていたという怪しげな研究室へと向かった。
そこには巨大な試験管や魔導管が四方八方に伸びる、まるでマッドサイエンティストの秘密ラボのような設備が遺されていた。
部屋の中心にある金魚鉢のような形をした、丸型試験管の内部へ慎重に黒い杭をセットする。
「何も起きないな……」
『コージ、その試験管に掌を当ててみて。あなたの魔力に反応するかもしれないわ』
言われた通りガラス面に掌を押し当てた。
次の瞬間、研究室全体が眩い光に包まれた。
――ゴゴゴゴゴゴゴ!!!
屋敷全体が激しい地鳴りを立てて激震する。
試験管の中で黒い杭が猛烈な速度で回転を始めた。
禍々しかった黒い気は、一瞬にして神々しい白銀の光へと反転していく。
【エネルギー変換効率、最大。……管理者の”強欲”属性を検知。超英雄エネルギーとして定着しました。基地レベル2へ上昇します】
指令室のシステム音声が響き渡る。
強欲属性と言われたのは心外だが、前世で給料の大半を特撮グッズの購入に突っ込んでいた執念が、異世界のシステムに誤認されたようだ。
【新規防衛設備の配置完了。あわせて、組織共通ユニフォームの製造が可能となりました】
「おお! これぞ特撮の王道、組織の制服か! すぐに作ってくれ!」
カプセルから光と共に三着の衣装が転がり出てきた。
フェンリと王牙に与えられたのは、漆黒のアンダータイツに銀色のシャープな軽鎧。
首領である俺に用意されたのは黒い上質なシャツとスラックス、背に【秘密結社・逆鱗】の竜の紋章が精巧に刺繍された、最高にクールな黒の革ジャンだった。
「おお……! 首領、この統一感、まさに世界を震撼させるに相応しい最強の戦闘服ですな!」
「コージ首領万歳!!」
着替えを終えた二人の巨漢が、黒と銀の特製ユニフォームを身に纏い、完璧なキレで斜め四十五度ポーズを決める。
その姿はどこからどう見ても実力派の「敵組織の最高幹部」そのものだった。
【警告。資金獲得および事実報告のため、相手方国家へ『怪人撃退完了に伴う配送費請求書』を自動送付しました。あわせて、相手方のリアルタイム映像を投影します】
「おい待て! 勝手に変な請求書を送るな! 宣戦布告になるだろうが!」
慌ててシステムを止めようとしたが、巨大スクリーンには再びイマガモノ国の王の間が映し出されていた。
画面の向こうでは鼻血を流してボロボロになったトレイダが、青ざめた顔で震え上がっていた。
「王よ、リース姫……。コージ率いる秘密結社・逆鱗の戦闘力は、我が精鋭を遥かに領駕しております……! 奴らは『名乗りのオツヤク』なる不可解な呪詛の儀式を操り、我が隊を瞬時に壊滅させました……!」
「嘘よ、そんなの! あの平民の化け物に、そんな力があるわけないじゃない!」
リース姫が発狂したように叫び、自分の美しい髪を掻きむしる。
セットー王に至っては、奪われたイレイザーボムが逆鱗の手に渡った事実を知り、白目を剥いて玉座の上で完全に気絶していた。
「おいおい、勝手に自爆兵器を持って攻めてきて、勝手に自滅して泡を吹いてるぞ。まさに教科書通りの自業自得だな」
俺は新調した革ジャンの襟を正し、秘密基地の最高級ソファに深く腰掛け、画面の向こうの哀れな元仲間たちの狂乱を優雅に見下した。




