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0 不審者

「……?」


目を開けると、そこは真っ白だった。


天井も、壁も、床も分からない。

ただ、どこを見ても白い。

まぶしいというほどではないけれど、色という色が抜け落ちたみたいな、不思議な場所だった。


……まるで夢の中。


私は、たしか、ふかふかのベッドの上で寝ていたはずだ。

少なくとも、こんな何もない場所で寝た覚えはない。


それに、枕もない。

布団もない。

横になっていた感覚もない。


……これは、かなりよくない夢かもしれない。


「目が覚めたかの?」


声がした。


ゆっくり顔を上げると、少し離れた場所に、一人のおじいさんが立っていた。

白いひげをたくわえた、穏やかそうな顔のおじいさん。

見た目だけなら、近所にいたら子供にお菓子でもくれそうな雰囲気だ。


でも、ここは真っ白な謎空間。

そこにいる知らないおじいさん。


……怪しい。


「……誰?」


私がそう聞くと、おじいさんは少しだけ安心したように目を細めた。


「ふむ。言葉は通じておるようじゃな」


「……言葉?」


「うむ。お前さんが住んでいた世界の言葉に合わせておる。どうやら、聞き取りにも問題はなさそうじゃ」


住んでいた世界。


その言い方が、少しだけ引っかかった。


普通は、そんな言い方をしない。

私がいた場所は、私がいた場所だ。

日本とか、家とか、学校とか。

そういう言い方なら分かる。


でも、世界。


まるで、ここが私の知っている場所とは違うみたいな言い方だった。


……やっぱり、夢?


私は周囲を見回した。


やっぱり、何もない。

どこまで続いているのかも分からなかった。


「……ここ、どこ?」


「儂の管理する空間、とでも言えばよいかの」


「管理する空間」


「そうじゃ」


よく分からない。


私は少し考えてから、もう一度おじいさんを見た。

おじいさんは、こちらを急かすでもなく、ただ静かに待っている。


怖い感じはしない。

でも、知らない人なのは間違いない。


「……知らない人についていくなって、言われた気がする」


「ここに連れてきたのは儂じゃが、そういう話ではない」


おじいさんが困ったように眉を下げる。


その反応は少し面白かったけれど、状況はまったく分からないままだ。


私は眠気の残る頭で、もう一度だけ周囲を見た。


いつもの部屋ではない見知らぬ場所。


目の前には、知らないおじいさん。


……変な夢。


「夢ではないぞ」


「……まだ何も言ってない」


「顔に書いてあるわい」


おじいさんは小さく笑った。


私は少しだけ目を細めた。


このおじいさん、よく分からないけど、私の考えていることが少し分かるらしい。


ますます怪しい。


でも、声は穏やかだった。

怖いというより、面倒な説明が始まりそうな気配がする。


それはそれで困る。


「……寝直していい?」


「よくない」


即答された。


変な夢の中で、知らないおじいさんに寝直すことを止められている。

状況だけ並べると、かなりおかしい。


私は少しだけ考えてから、おじいさんを見上げた。


「……おじいさん、何者?」


「何者、とな」


おじいさんは少し困ったように白いひげを撫でる。


「そうじゃな。まずは名乗るべきじゃったか」


「ん」


「儂自身に、お前さんらが使うような名前は存在せん。じゃが、お前さんの世界の言葉に置き換えるならば……神様、と呼ぶのが一番近いかのう」


「神様?」


「そうじゃ」


「……自称?」


「自称ではないわい」


おじいさん――自称ではないらしい神様は、少しだけ眉を寄せた。


「……怪しい」


「まあ、疑われるのも無理はないのう」


「知らない場所に知らない人がいて、自分を神様って言ってる」


「うむ」


「怪しいと思う」


「……返す言葉もないのう」


神様は否定しなかった。

否定してほしかったわけでもないけれど、納得されると、それはそれで困る。


「けれど、本当に神様じゃよ。少なくとも、お前さんが元いた世界より少し上の場所から、いろいろと管理しておる存在じゃ」


「管理」


「そうじゃ」


「……さっきも言ってた」


管理する空間。

元いた世界。


聞き慣れない言葉ばかりなのに、おじいさんは当たり前のように話している。


私は、もう一度周囲を見回した。


何もない。

それなのに、自分が確かにこの場にいる感覚だけはあった。


夢にしては妙にはっきりしている。


「……神様なら」


「うむ?」


「証拠は?」


私がそう聞くと、神様は目を丸くしたあと、小さく笑った。


「ほう。思ったより冷静じゃの」


「冷静じゃない」


「そうかの?」


「ただ、眠くて反応が遅いだけ」


「それは冷静とは言わんのう」


神様は苦笑いを浮かべた。


証拠、と言ったものの、何を見せられたら信じるのかは自分でも分からない。

空を飛ばれても、夢ならできそうだ。

光を出されても、夢ならできそうだ。

この白い空間そのものが、もう十分におかしい。


だから、正直なところ、神様かどうかを判断するのは面倒だった。


「……まあ、いいや」


「よいのか?」


「悪い人には、あまり見えない」


「おお」


「でも、怪しい」


「結局そこに戻るのかの」


神様は肩を落とした。


その反応は、少しだけ人間っぽかった。

神様と言われるより、困っているおじいさんと言われた方がしっくりくる。


でも、本人が神様だと言うなら、とりあえずそう扱うことにした。

考えすぎると、眠くなる。


「……神様、仮で」


「仮なのかの?」


「保留」


「なかなか手厳しいのう」


神様はそう言って、また小さく笑った。


その笑い方を見ると、少しだけ力が抜けた。

だからといって、怪しくないわけでもない。


私はそのまま、目を細めた。


夢なのか。

現実なのか。

神様なのか。

自称なのか。


さっきから「世界」だの「管理」だの、眠い頭に優しくない言葉ばかり並べている。

神様はまだ何かを話すつもりらしい。


この流れは、たぶん長い。


……面倒な説明が始まる気がした。


私は少しだけ視線を落として、白い床を見る。


床なのかどうかも分からないけれど、少なくとも感触はある。

硬そうにも見えない。

冷たそうにも見えない。


それなら、少しくらい横になっても問題ない気がする。


私がそんなことを考えていると、神様がゆっくりと口を開いた。


「では、まずはお前さんの状況について説明を――」


「おやすみなさい」


私はその場に座り込んで、横になろうとした。


「待て待て、何をしておる」


止められた。


神様が、さっきより少しだけ慌てた顔をしている。


「寝ようとしてる」


「見れば分かるわい。なぜ今寝ようとするんじゃ」


「変な夢だから、寝れば起きるかなって」


「言っていることと、やっていることが逆ではないかの?」


言われてみれば、そうかもしれない。


夢から覚めるために寝る。

たしかに、少し変な気もする。


でも、夢の中で目を覚ます方法なんて知らない。

ほっぺをつねるのは痛そうだから嫌だ。

走り回るのも面倒だ。

大声を出すのも疲れる。


それなら、寝るのが一番楽だと思う。


「……だめ?」


「だめじゃ」


「少しだけ」


「だめじゃ」


「話、短い?」


「短くはないのう」


やっぱり。


私は目を細めた。


神様は悪い人には見えない。

けれど、話が長そうな人には見える。


それは、かなり困る。


「……じゃあ、要点だけ」


「要点だけで済む話ではないのじゃが」


「眠い」


「それは見れば分かる」


神様は深く息を吐いた。


怒っているというより、呆れている顔だった。


私は溜息を吐くと、横になるのを諦めて、仕方なく座り直した。


「……聞く」


「本当かの?」


「たぶん」


「そこは断言してほしいところじゃな」


神様は苦笑いを浮かべたまま、私の前に立つ。


白い空間。

眠い頭。

自称ではないらしい神様。


どうやら、この変な夢は、まだ続くらしい。


神様は小さく咳払いをした。


「さて。まず、ここが何なのかを説明せねばならん」


「白い場所」


「見たままを言うでない」


神様は少しだけ困った顔をした。


でも、白い場所なのは間違いない。

他に言いようがない。


「ここは夢ではない。お前さんの魂を一時的に繋ぎ止めている空間じゃ」


「魂」


「うむ」


「……怪しい言葉が増えた」


「事実じゃから仕方なかろう」


魂。

空間。

神様。

管理。


やっぱり、眠い頭に優しくない。


私は少しだけ目を細めた。


「夢じゃないの?」


「夢ではない」


「本当に?」


「本当にじゃ」


神様は、今度は笑わなかった。


さっきまでの困ったおじいさんみたいな顔ではなく、少しだけ真剣な顔をしていた。


辺りは静かなままだった。

何も変わらない。

けれど、神様の声だけが、さっきより少し重く聞こえた。


「お前さんは、元いた世界で死んだ」


「……」


死んだ。


その言葉は、すぐには頭に入ってこなかった。


私は神様を見たまま、何度か瞬きをする。


死んだ。

私が。

元いた世界で。


「私は、死んだの?」


「うむ」


神様は静かに頷いた。


私は、自分の手を見下ろした。

指は動く。

息もできている。

眠気もある。


死んだと言われても、あまり実感はなかった。


「……そっか」


「驚かんのかの?」


「驚いてる。たぶん」


「たぶん、か」


「でも、あまり実感がない」


そう言いながら、私は記憶を辿ろうとした。


寝ていた。

たぶん、ずっと寝ていた。


起きたらやろう。

少し寝たら考えよう。

明日でいい。

あとでいい。


そんなことを何度も思っていた気がする。


学校のこと。

宿題のこと。

誰かと話さなければならなかったこと。

食べなきゃいけなかったこと。

水を飲まなきゃいけなかったこと。


全部、ぼんやりしている。


思い出そうとすると、霧の向こうにあるみたいに輪郭がにじんだ。


「お前さんは、長く眠り続けた」


神様が静かに言った。


「眠ることそのものが悪かったわけではない。じゃが、お前さんは起きてすべきことを、少しずつ後回しにした。食べることも、水を飲むことも、体を動かすこともな」


「……うん」


「その結果、体は弱っていった。誰かに助けを求めることもできず、そのまま衰弱して、命を落とした」


衰弱。


死。


言葉だけ聞くと、とても遠い話みたいだった。


でも、少しだけ分かる気もした。


眠るのは好きだった。

眠っている間は、面倒なことを考えなくてよかった。

起きたらやればいいと思っていた。

起きたくない日もあった。


たぶん、それを繰り返しすぎた。


「……私、寝すぎて死んだの?」


「かなり雑に言えば、そうじゃな」


「そっか」


自分でも、少し間の抜けた返事だと思った。


でも、それ以上の言葉が出てこない。


悲しいのか。

怖いのか。

驚いているのか。


よく分からない。


ただ、胸の奥に小さな石みたいなものが落ちた感じがした。


「お前さんは、死にたいと思っていたわけではなかろう」


「……たぶん」


「ただ、眠ることを選び続けた。その結果が、今じゃ」


神様の声は責めるようではなかった。


呆れているような。

少し困っているような。

でも、怒ってはいない声だった。


「……私、だめだった?」


「だめ、という言葉で片付けるものではない」


神様はゆっくり首を振った。


「ただ、間違えたのじゃろうな。休み方を。眠り方を。逃げ方を」


「眠り方を、間違えた」


「うむ」


変な言い方だと思った。


でも、少しだけ分かる気もした。


眠るのは悪いことではない。

眠るのは好きだった。

それは、今でも変わらない。


でも、前の私は、眠るために生きていたというより、起きることから逃げるために眠っていたのかもしれない。


「……そっか」


私はもう一度、そう呟いた。


神様は何も言わずに待っていた。


辺りは、相変わらず静かだった。

誰かの声も、生活の音もない。


だから余計に、自分がもう元の場所にはいないのだと、少しずつ分かってきた。


「でも」


「うむ?」


「私、あまり苦しくない」


「そうか」


「死んだって言われても、怖いより、ぼんやりしてる」


「魂だけの状態では、感覚も記憶も少し曖昧になる。無理もない」


「……便利」


「便利と捉えるのかの」


神様は少しだけ苦笑した。


私は、前の世界のことを思い出そうとした。


学校。

部屋。

いつも過ごしていた場所。


それから、私を呼ぶ声。


顔は、少しぼやけている。

名前も、すぐには出てこない。


でも、私を育ててくれた人がいたことは、覚えている。

私のことを心配してくれた人がいたことも、たぶん、覚えている。


その人たちは、どうしているのだろう。


そう考えた瞬間、胸の奥の小さな石が、少しだけ重くなった。


「……ねえ、神様」


「なんじゃ」


「私のことを覚えている人は、悲しんでる?」


神様は、すぐには答えなかった。


その沈黙で、なんとなく分かった。


私は目を伏せる。


自分が死んだことよりも。

自分がもう戻れないことよりも。


私のことを覚えている誰かが、悲しんでいるかもしれない。


そのことの方が、少しだけ胸に残った。


私は、もう一度だけ前の世界のことを思い出そうとした。


白い部屋ではない。

何もない空間でもない。

ちゃんと壁があって、天井があって、床があって、誰かの生活の音があった場所。

そこに、誰かの声があった気がする。


早く起きなさい、とか。

ご飯は食べたのか、とか。

今日は学校じゃないの、とか。


言葉は、ぼんやりしている。

顔も、はっきりとは浮かばない。


でも、それが私を心配する声だったことだけは、なんとなく覚えていた。


「……私」


「うむ」


「自分が死んだことは、あまり苦しくない」


そう言うと、神様は少しだけ目を細めた。


「でも、私のことを覚えている人が悲しんでいるなら、少し悲しい」


口にしてから、胸の奥が少し重くなった。


泣きたい、というほどではない。

叫びたい、というほどでもない。


ただ、少しだけ。

寝返りを打っても消えない違和感みたいに、そこに残っている。


「記憶も、ぼんやりしてる。顔も名前も、ちゃんと思い出せない」


「うむ」


「でも、私を育ててくれた人がいたのは、分かる」


神様は黙って聞いていた。


さっきまでの困ったような顔ではなく、静かな顔だった。

急かすことも、慰めることもしない。

ただ、私が言葉を探すのを待っている。


「その人たちが、私のせいで悲しんでいるなら」


私はそこで少し言葉を止めた。


何を言えばいいのか、よく分からなかった。


ごめんなさい、なのか。

ありがとう、なのか。

忘れてほしくない、なのか。

忘れて楽になってほしい、なのか。


どれも少し違う気がした。


「……少し、嫌だ」


結局、出てきたのはそんな言葉だった。


神様は小さく頷いた。


「ふむ……」


その低い声が、静かな空間に落ちた。


「本来、死者が元の世界へ深く関わることは許されん。世界には世界の流れがある。儂が勝手に捻じ曲げてよいものではない」


「……そうなんだ」


「そうじゃ」


それは、たぶん正しいのだと思う。

よく分からないけれど、神様がそう言うなら、そういう決まりなのだろう。


でも、正しいからといって、胸の奥の重さが消えるわけではなかった。


私は膝の上で指を軽く握った。


「じゃあ、何もできない?」


「直接どうにかすることはできん」


神様はそう言ってから、少しだけ表情を緩めた。


「じゃが、少しばかり良い方へ導くくらいはしてやろう」


「良い方?」


「うむ。悲しみがすぐに消えるわけではない。お前さんの死がなかったことになるわけでもない」


「うん」


「それでも、残された者たちが、いつか前を向けるように。悪いものに呑まれすぎぬように。ほんの少し、風向きを整えるくらいならできる」


風向き。


変な言い方だった。


でも、悪い言葉ではない気がした。


私のことを覚えている人たちが、ずっと苦しいままではないように。

いつか、ちゃんとご飯を食べて。

ちゃんと眠って。

少しずつ、普通の朝を迎えられるように。


それなら、少しだけ安心できる気がした。


「……ありがとう。神様」


そう言うと、神様は一瞬だけ目を丸くした。


それから、少し嬉しそうに笑う。


「やれ、ようやく神様と認めてくれたかの」


「ん」


「今のは、仮ではないのか?」


「たぶん、本物」


「たぶん、か」


神様は苦笑した。


でも、さっきよりも少しだけ満足そうだった。


私はもう一度、前の世界のことを思い出そうとした。


顔は、やっぱりぼやけている。

名前も、すぐには出てこない。


それでも、私を呼ぶ声があったことは覚えている。

私を心配してくれた人がいたことも、覚えている。


その人たちが、今すぐ悲しくなくなるわけではない。

私が死んだことが、なかったことになるわけでもない。


それは、たぶん、どうしようもない。


でも、いつか少しでも息がしやすくなるなら。

私のことを思い出しても、苦しいだけではなくなる日が来るなら。


それなら、少しだけ安心できる気がした。


胸の奥に落ちていた小さな石は、消えたわけではなかった。

でも、ほんの少しだけ軽くなった気がした。

私は小さく息を吐いた。


前の世界のことは、まだぼんやりしている。

自分が死んだことも、完全に実感できているわけではない。


それでも、神様は私のことを責めなかった。

私を覚えている人たちのことも、少しだけ良い方へ導いてくれると言った。


だから今は、その言葉を信じることにした。


考えすぎると、また胸の奥が重くなりそうだしね。

それに、もう十分話した気がする。


かなり話した。

たぶん、一日分くらい話した。


だから私は、静かに目を閉じた。


「それじゃ、おやすみなさい」


「待て待て。まだ話は終わっておらん」


止められた。


私は目を開けて、神様を見る。


「……まだあるの?」


「あるとも」


神様は当然のように頷いた。


私は少しだけ肩を落とした。


前の世界の話は終わった。

死んだことも聞いた。

私を覚えている人たちのことも、少しだけ整理できた。


それなら、もう終わりでいいと思う。


でも、神様の顔を見る限り、そういうわけではないらしい。


「……今ので終わりじゃないの?」


「終わりではないのう。むしろ、ここからが本題じゃ」


「本題」


嫌な言葉だった。


本題。

つまり、長い話の中心。

つまり、まだ説明が残っているということ。


私は周囲に逃げ場を探した。


もちろん、そんなものはない。

ベッドもない。

枕もない。

横になれそうな場所も、あるような、ないような感じだ。


諦めるしかなさそうだった。


「……短く」


「できるだけな」


「できるだけは、短くない」


「なかなか鋭いのう」


神様は苦笑した。


褒められた気はしなかった。

たぶん、短くする気があまりない顔だった。


私は仕方なく、寝るのを諦めて座り直した。


「……聞く」


「うむ」


「でも、難しい話は眠くなる」


「お前さんは難しくなくても眠そうじゃがの」


「それはそう」


否定できなかった。


神様は少しだけ笑ったあと、ゆっくりと表情を整えた。

さっきまでの柔らかい雰囲気に戻っているけれど、その声にはまだ少しだけ真面目さが残っている。


「お前さんの前の生については、これで一区切りじゃ」


「うん」


「では、お前さんの今後について話そうかの」


今後。


その言葉を聞いて、私は少しだけ首を傾げた。


死んだのに、今後。


普通なら、そこで終わりのはずなのに。

神様は当たり前みたいに、その先があると言う。


「……私に、まだ続きがあるの?」


神様は、静かに頷いた。


短い沈黙が落ちた。


どうやら、この変な夢みたいな時間は、まだ終わらないらしい。


そしてたぶん、次の話は、もっと面倒だ。



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