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Another World Online(通称:AWO)  作者: バモス
第二章 CROSS社契約編

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第79話 旧西方採掘場の補強工事と新たな発見

旧西方採掘場の内部調査を終えた翌日、俺――ジョウゴは現実世界での仕事を済ませ、夕食と入浴を終えてから《Another World Online》へログインした。


リーヴェルの《金麦の宿》にある客室へ降り立つと、装備の状態を確認する。愛刀《星月》の耐久値に問題はなく、昨日の戦闘で消耗した道具類も補充済みだ。


階下の食堂へ向かうと、ミナ、カイト、レントの三人がすでに集まっていた。


俺に気づいたミナが笑顔で手を振る。


「ジョウゴ、おはようございます! 今日はどうしますか?」


席に着いた俺は、ギルドから届いていた通知を三人に見せた。


「旧西方採掘場の補強工事が始まるらしい。昨日の調査結果を受けて、鉱山技師のドランさんが作業計画をまとめたそうだ」


カイトが興味深そうに身を乗り出した。


「おっ、いよいよ奥へ進めるようになるのか?」


「まだ分からない。補強工事が終わるまでは立ち入り禁止だってさ」


俺が答えると、レントが地図を開いた。


「第一分岐までは確認できたけど、第二採掘区画は未調査だからな。工事にも時間がかかるだろう」


昨日、俺たちは魔力調査員のエレナさんと鉱山技師のドランさんを護衛し、旧西方採掘場の第一分岐まで調査した。


その結果、第二採掘区画の奥から強い魔力反応が確認され、魔力濃度は一時的に通常値の二百四十六%まで上昇した。


原因を調べるには、坑道の補強が欠かせない。


「とりあえずギルドへ行ってみよう。俺たちにできることがあるかもしれない」


三人も賛成してくれたので、朝食を済ませてから宿を出発した。


◇◇◇


冒険者ギルドへ到着すると、受付の職員が俺たちを見つけて声をかけてきた。


「ジョウゴさんたちですね。調査主任のガルドがお待ちしています」


案内された会議室には、ガルドさんとドランさんがいた。


机の上には旧西方採掘場の図面が広げられ、補強予定の場所に赤い印が付けられている。


ガルドさんは俺たちを迎えると、早速事情を説明してくれた。


「昨日の報告を受け、坑道の補強工事を行うことになりました。ただ、作業に必要な資材が不足していましてね」


ドランさんが図面を指さしながら続けた。


「普通の木材でも支柱は作れるが、あの坑道は魔力の影響を受けている。できれば魔力に強い《硬岩木》を使いたい」


硬岩木は西方山地の麓に生える特殊な樹木で、硬い幹と優れた耐久性を持つらしい。


採取場所はリーヴェルから比較的近く、推奨レベルも俺たちの範囲内だった。


ガルドさんは新しい依頼書を差し出した。


「補強資材の採取と運搬をお願いできませんか? もちろん、危険な場所へ無理に入る必要はありません」


俺たちは依頼内容を確認した。必要なのは硬岩木の原木六本。採取地点にはギルドが管理する伐採区域があり、専用の道具も貸し出されるという。


「俺は受けてもいいと思う。みんなはどうだ?」


俺が尋ねると、カイトが笑顔で頷いた。


「戦うだけが冒険じゃないしな。力仕事なら任せろ!」


レントも賛成した。


「採取区域なら道も分かる。周囲の警戒は俺が担当しよう」


ミナも嬉しそうに答えた。


「私もお手伝いします!」


こうして俺たちは、補強資材の調達依頼を受注した。


◇◇◇


西方山地の麓へ到着した俺たちは、ギルドから借りた伐採道具を確認した。


硬岩木は名前のとおり幹が硬く、普通の斧では簡単に切れないらしい。


幸い、伐採区域には専用の魔導鋸が用意されていた。


俺たちはまず、指定された樹木を確認する。


「これが硬岩木か」


目の前には、灰褐色の樹皮を持つ太い木が立っていた。


鑑定すると、確かに《硬岩木》と表示される。


レントが幹を調べながら説明した。


「木目が細かいな。乾燥させても変形しにくいらしい」


カイトは魔導鋸を手に取り、使い方を確認していた。


「よし、始めるか!」


俺たちは二人一組になり、安全を確認しながら作業を進めた。


カイトが幹を支え、俺が魔導鋸を操作する。切断方向を調整し、倒木による事故が起きないよう慎重に作業した。


一本目を切り終えたところで、ミナが感心したように声を上げる。


「すごいですね! 本当に木なのに石みたいに硬いです!」


「魔力の影響で組織が強化されているらしいな」


俺が答えると、レントが切断面を確認した。


「しかも軽すぎない。支柱には向いていそうだ」


その後も作業を続け、必要な六本を無事に確保した。


運搬用の荷車へ積み込んだところで、俺は足元に落ちている小さな木片に気づいた。


切断時に飛び散った端材らしい。


何気なく拾い上げて鑑定すると、見慣れない表示が現れた。


《硬岩木の魔力芯材》


《品質:良質》


《分類:特殊木材》


《特徴:魔力振動を吸収する性質を持つ》


「……魔力振動を吸収する?」


思わず呟くと、レントが近づいてきた。


「どうした?」


「この木片、普通の硬岩木とは違うみたいだ」


鑑定結果を見せると、レントも興味深そうに目を細めた。


「芯材か。切断面の中心部分にしかない素材なのかもしれないな」


俺は木片を眺めた。


魔力振動を吸収する性質。


もし本当なら、魔力波長の安定化を研究しているバルガさんにも参考になるかもしれない。


ただし、今は依頼の資材を勝手に持ち帰るわけにはいかない。


「これもドランさんに見せてみよう」


俺は木片を荷車へ載せ、仲間たちとリーヴェルへ戻った。


◇◇◇


冒険者ギルドへ戻ると、ドランさんが硬岩木の状態を確認してくれた。


「うむ。どれも良い木材だ。これなら補強に使える」


俺は先ほど見つけた芯材についても尋ねた。


すると、ドランさんは驚いたように目を見開いた。


「ほう、魔力芯材を見つけたのか!」


「珍しいものなんですか?」


「硬岩木の中でも、長い年月をかけて魔力を蓄えた個体にできることがある。魔導具の振動抑制材として使われるんだ」


なるほど。


魔力を通しやすい素材だけでなく、魔力の揺らぎを抑える素材も存在するらしい。


俺が興味を示すと、ドランさんは笑った。


「研究したいなら、その端材は持っていくといい。支柱に使う部分ではないからな」


「ありがとうございます」


許可を得て、俺は芯材をインベントリへ収納した。


その後、依頼の達成通知が表示された。


《補強資材調達依頼:達成》


《硬岩木の原木:六本納品完了》


《報酬:一人あたり12,000G》


《冒険者ギルド評価が上昇しました》


今回も無事に依頼を終えることができた。


◇◇◇


報酬を受け取った後、俺たちはガルドさんから補強工事の予定について説明を受けた。


「資材が揃いましたので、明日から作業を開始します。第一分岐より奥の安全が確認できれば、改めて調査依頼を発行する予定です」


俺は頷いた。


「分かりました。無理のない範囲で進めてください」


ガルドさんも安心した様子で答える。


「もちろんです。作業員の安全を最優先にします」


ギルドを出た俺たちは、中央市場へ向かった。


今日は戦闘こそなかったものの、普段とは違う作業を経験できた。


カイトも満足そうだった。


「たまにはこういう依頼もいいな!」


ミナが笑顔で頷く。


「はい! みんなで協力して何かを作るのって楽しいですね」


レントも静かに笑った。


「今回は作る前の準備だけどな」


俺も思わず笑ってしまった。


それから宿屋へ戻り、夕食を取りながら今日の出来事を振り返った。


旧西方採掘場の調査は、補強工事が終わるまで一時中断となる。


その間に、俺たちにもできることはあるだろう。


何より、今回手に入れた《硬岩木の魔力芯材》は気になる素材だった。


星月の魔力回路や、蒼月晶の研究にも何か応用できるかもしれない。


ただ、バルガさんのいるシズナへ戻るには少し距離がある。


まずはリーヴェルで素材について調べ、詳しい研究はシズナへ帰ってから相談しよう。


そう考えながら、俺は明日の仕事に備えてログアウトした。


西方山地の魔力異常は、まだ解決していない。


しかし、その調査を通じて新しい素材や技術と出会えるのも、AWOの面白いところなのだろう。


そして俺たちは、まだ知らなかった。


旧西方採掘場の奥にあるものが、単なる鉱石の異常ではないということを。


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