生き残ったものたち
ジークは苛立ちを隠せなかった。
「今すぐ奴らの本拠地を叩くべきだ。これ以上、仲間が犠牲になるのを黙って見ていられない!」
その激しい感情に、レオンは静かに首を振った。
「ジーク、気持ちはわかる。でも今は冷静に動く時だ。まだこの場所に残っている生徒たちを、安全な場所に避難させなければならない。命を預かってるんだ、俺たちは」
エリナも続いた。
「焦って突っ込んで、また誰かが死ぬのは…もう嫌なの。ガラルド先生の時みたいに、後悔したくない」
ジークは拳を強く握りしめ、悔しげに歯を食いしばったが、やがて力を抜いてうなずいた。
一行は、生き残った士官学校の生徒たちを連れ、レオンの実家――王国騎士団長が住まう屋敷へと向かった。
王国の外れにあるその館で、レオンの父・クラウス・グランディアは息子たちを迎えた。かつての英雄の姿に陰りが見えたのは、気のせいではなかった。
「…お前たちが、ここまで動いていることは、噂で耳にしていた」
そう語るクラウスの顔は苦悩に歪んでいた。レオンが事情を話し終えると、彼はふっと深いため息をつき、レオンだけを書斎に呼び出した。
扉を閉じ、重く沈黙が流れる。
「父さん…何があった?なぜ王国騎士団が動かないんだ?あのままだと国が…!」
クラウスは机に手を置き、長い沈黙のあと、ぽつりと呟いた。
「…レオナが、奴らに囚われている」
その言葉は雷のようにレオンの胸を貫いた。
「な…母さんが?」
「正確には、数年前から姿を消したきりだ。だが、奴らは密かに俺に証拠を突きつけてきた。もし、お前たちの味方をすれば、彼女の命はないと…」
クラウスは拳を震わせた。
「俺は騎士団長として国を守る立場にある。だが、それ以上に、レオナは俺の妻だ。守れなかったら、俺は…」
レオンは静かに父の前に立ち、真っ直ぐに目を見た。
「父さん、わかった。俺が母さんを取り戻す。…だから、俺たちを信じてくれ。今は…自分の手は汚せなくても、俺たちならできる。やるべき事があるんだ」
クラウスは目を伏せ、わずかに頷いた。
「…ありがとう、レオン。誇りに思う。だが、気をつけろ。奴らはただの狂信者ではない。魔神の力に触れた者は、人でなくなる…」




