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嵐と戦

アーサーとシロは渓谷を抜けて遂に念願であったゴミ砂漠が見えるところまでやって来た。西の街の店主が言ってた通り、砂漠にはいくつかの結界がはってある。見た目はいたって普通の砂漠の風景だが、シロには結界から生じる僅かな魔力を感じることができたためアーサーは感じられない結界を知ることができた。ゴミ砂漠の近くに寄れば寄るほど砂漠に吹き荒れる熱風や砂塵がだんだんと強くなっていくのを感じられた。そしてこれから始まるだろう戦いへ二人は士気を高めつつも既に覚悟はしていた。


結界の前までやって来た。シロとアーサーはお互いに目を合わせ、互いにうなずく。


戦いの幕開けだ。


シロは腕を真っすぐ前に突き出す。見えない結界に手を触れているのだ。そしてシロは結界の解析をしている。静かな沈黙の後にシロはボソボソと呪文を唱えていく。

突然、ガラスを割ったような音が砂漠に響き渡った。それと同時にアーサーとシロは走り出した。いち早くこの地を離れ、神との交戦を避けるためだ。


アーサーとシロは全力で砂漠を走る。走り続けた。


しかし、、、


アーサーとシロの前に竜巻が突如として発生した。二人は竜巻から距離をとると同時に歯痒い思いに唇を強く噛んだ。


ーーークソ、見つけられた


アーサーは剣に手をそえた。


ーーーチッ、思ったより早かったなぁ~


シロは魔法をいつでも使えるように構える。


竜巻がだんだんと弱くなり中にいる神が姿を現す。その姿は鍛えぬかれた人間の四肢を持ってはいたが頭部ははオオカミだった。腰には湾曲した大きな剣をさしており、首や手首には煌びやかな神に相応しい装飾品を身に付けている。しかし目の前の神はかなり怒っているのか、その瞳にはアーサー達と同じくらいの燃えるような闘志を宿している。


「我は嵐と戦をつかさどる神、セト!貴様ら、生きて帰れると思うなよ」


凄まじい威圧感が二人を襲う。それをものともせずシロは言い返す。


「フン、返り討ちになっても知らないよ~」


「き、貴様!貴様だな!我が妹、ネフティスをやったのは!ネフティスの仇、討たせてもらうぞ!」


セトの瞳は燃え盛る炎のようにメラメラとさせてシロを睨めつけている。


「やれるもんならやってみ~、シスコン」


シロのセリフで戦いの始まりの火ぶたが切って落とされた。


まず先に仕掛けたのはセトのほうだった。セトの体の周りには風がまとっていて、それを利用したのか一瞬でシロとの間合いを詰めた。シロはセトの接近に対して冷静に魔法を発動する。シロは目の前に高い壁を造るがセトは難なくそれを体当たりで破壊した。

だが、壁の反対側にはシロはいない。セトがあたりを見渡すが見当たらない。

突如、セトのいた場所が揺れ、砂がセトを包み込もうとするところを間一髪のところでセトはそれを回避する。シロは攻撃の手を休めない。次々に魔法を発動し、セトを追い込んでいく。


ーーーやはり強い。ネフティスがやられるのも無理ないな、だが!


セトは身にまとっていた風を使い、シロの魔法で操られていた砂を相殺する。それにより砂は広範囲にまで広がり少しの間視界が遮られた。


ーーーこの間の神より手強いな~。さすがは戦の神セト、中々隙を見せないね~。


魔王であるシロでもセトの戦闘力には驚いていた。


ーーー神の間にはこれと言って序列というものは存在しないけど、あえて序列を作るならば今、戦っているセトは中堅の神、それに神はまだ八体以上はいるだろうな~。どうしようかなぁ~、さすがの私でも神が二体いたら手に負えない。もしかしたら最上位の神は

私と互角、若しくはそれ以上、、、


シロの考えは視界を遮っていた砂埃を無視して向かってきたセトの体当たりで遮られた。視界が悪いため、警戒を怠っていたシロの不意を突いたセトの攻撃はシロにクリーンヒットし、それによりシロは砂埃の中から飛び出てきたのを離れていたアーサーの目に入った。


「シロ!」


シロが吹っ飛ばされた姿を見たアーサーは動揺を隠せない。


「大丈夫だよ~」


シロは心配させないようにすぐに立ち上がり、アーサーに声をかけた。


ーーーいったーーーい!!もう怒ったもんね!


シロはアーサーには知られなかったがかなりやせ我慢をしていた。無理もない、シロが攻撃をまともに受けたのは数年ぶりだったのだから。


そして、砂埃から出てきたセトにシロは本気で魔法を発動する。


「hgcwっヴぇしうぇvc......」


シロは呪文を唱える。セトはもうすぐそこまで迫ってきている。アーサーはシロの呪文が唱え終わるまで身をていして守り抜くため、突っ込んできたセトの前に立ち塞がった。


「よし、こい!」


アーサーはセトに対して剣を抜き、構える。


アーサーはちゃんと自分の役目を分かっている。そう、必要以上に手を出さない事だ。

安易に手を出せば返り討ちに会うのは目に見えている。そしてシロの負担を少しでも軽減する事だ。


「我の邪魔をするか、人間!」


セトはアーサーと一定の距離を置いた場所で急停止し、アーサーを睨んでいる。


「たとえ人間であろうと我に楯突くのであれば容赦はせん!」


そう言ってセトはアーサーに向かって飛び出してきた。

アーサーはセトの手刀を剣で流し、返し技をセトの右肩に切り込もうとする。それに反応したセトはアーサーの剣を上手く躱し、追撃として回し蹴りをアーサーにいれる。だがアーサーもセトの攻撃を予測していた。アーサーはセトの蹴りを体を回転させ避ける。その時、セトがまとっていた風がアーサーの回転の遠心力を偶発的に強め、アーサーの攻撃はセトの反応速度を超えた。

アーサーの攻撃は浅かったが、シロが呪文を唱えるには十分時間稼ぎにはなった。


「アーサー!」


シロは声を上げ、呪文を唱え終わったことを知らせる。


「くらえーー!!」


シロは使える魔法の中でも最上位の魔法をセトに向かって発動した。

その瞬間、シロの綺麗な白銀の髪が発光し、まるで生き物のようになびく。

それと同時にセトの動きが停止する。


ーーーか、体が動かぬ!?


予想外の出来事にセトは焦っていた。そして空が急に暗くなり発生した黒雲の合間から光が差し込み、それはだんだんと明るくなり、近づいてくる。


黒雲から姿を現したのは数えきれないほどの隕石だった。


ーーーアーサー、ありがとう。おかげでこの魔法を発動できたよ~。この『ミーティア』をね~


流星群がセトのいた場所に雨のように降り注ぐ。


ーーーす、すげぇ...


あまりの凄さにアーサーは言葉が出なかった。


シロは流星群が降り終わるまでセトを魔法で拘束し続け、アーサーと自分に防御魔法を展開した。そのため衝撃波は全く受けることはなかった。


しばらくして流星群は降り終わり、砂漠には再び静寂が戻った。


「ふ~、疲れた~」


そう言ってシロはぐったりとその場に座り込んだ。

アーサーも同じく緊張感が切れその場に倒れるように座り込んだ。


「シロ、お疲れ」


「ううん、アーサーが頑張ってくれたから倒すことができたんだよ~。こっちこそありがとね~」


二人はそう言って笑いあった。


が、、、



シロは何かを感じ取り空を見上げる。


ボロボロになっていたセトは空中で立ち止まり魔法を発動しようとしていた。


ーーーまずい!


「アーサー、逃げて!!」


セトの魔法に対しシロの直感が危険信号を発し、シロはアーサーに危機を知らせる。


アーサーはそれを聞き、すぐさまその場から離れる。一方でシロは身を守るために最強の防御魔法を発動する。


ーーーセトのやつ、あれを受けてまだ動けるなんて!


セトは魔法を発動する。凄まじい嵐が起こりシロを飲み込んだ。なんとかアーサーはそれから逃れられる事が出来た。


アーサーはシロのいた場所を振り返ると黒い嵐の周りにはいくつもの斬撃があったかのような跡が、今も巻き起こっている嵐の周りに広がっていた。

そう、『かまいたち』だ。セトは魔法でかまいたちを発生させ、止むことのない斬撃の嵐をシロに放ったのだ。流石のシロでも嵐が止むまでは手出しができない。もし今、防御魔法を解けば嵐の中で八つ裂きになるだろう。


ーーーアーサー、嵐がおさまるまで何とか持ちこたえて


セトの標的はアーサーへと移り変わった。セトはアーサーに向かて飛んできた。


「貴様が邪魔しなければ我がここまでの傷を負うことはなかった!貴様をやった後にあの白いのと決着をつけるとしよう!」


セトはそう言って再びアーサーと一戦交えるのだった。

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