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第五十三話 光槍

「お嬢様!お嬢様は起きておられますか⁉︎」

「久城〜、う〜る〜さ〜い〜」

 ドアの隙間に身体を滑り込ませてお嬢様の寝ている和室に転がり込む私。当のお嬢様は相も変わらず布団にくるまって起きる気配を見せない。いつもの私ならば、もう少しは寝かせてさしあげる事も出来るが、今はそれどころではない。

「お嬢様、起きてください!一大事でございます!」

「ん〜!」

「ええい!朱雀、朱雀はどこですか⁉︎すぐに出て来なさい」

 猫の小さな声帯を最大限使ってこの部屋のどこかにいるだろう朱雀へと呼びかける。正直言うと、ここで朱雀が出て来なければ私は自分で何をしていたか分からない。この和室を文字通り掻き回していたかもしれない。

 だから朱雀が天井の一部を取り外して出てきた時に、私は自分の妖力を込めた猫パンチを全力でかましていた。

「何よ。いきなりご挨拶ね。ふあ〜」

「大欠伸してる場合じゃありません!貴女ここから沖縄までどれくらいで飛べますか?」

「沖縄〜?あんな亡霊の巣窟に行けっての?嫌よ。私ほどの神格になると中途半端な悪霊がわんさか私に付いてくるんだから」

「貴女の事情は重々承知しています!しかしそれを考慮しても有り余るほどにヤバイ状況なのです!」

「分かったわよ。取り敢えず、そのヤバイ状況ってのを話しなさいな。貴方の悪い癖よ。無理やり自分の意見を押し通すのは美点になる時もあるけど、何も言わないのに押し付けるのはただのワガママよ」

 もっともな事を言われて少々言葉に詰まる。だが、今は言葉に詰まっている場合ではない。下手をすると、バランスが崩れかねないのだから。

「良いですか。たった今、特務機関から本家に連絡がありました。今大きな妖力で構成された雲が沖縄で観測されています。五十年前にもこれと同じ現象があったのを覚えています」

 五十年前、私達第一世代救世主の面々が一度だけ見た事のある、莫大な妖力だけで構成された意思のない大型妖怪『光槍』。

 雲はどんな手段を使っても触る事が出来ない。それが元は水蒸気で出来ているのだから当然だ。その水蒸気を妖力に変える事で『触れない妖怪』を造り出した。

「『光槍』は雨と同じで雲の中から妖力を降らせます。ただ普通の雨とは違い、妖怪を認識出来ない者には何ら影響はありません」

「無害なら問題無いんじゃない?」

「話は最後まで聞くものです。…妖怪の見えない人間は問題ありませんが、見える人間並びに妖怪は例外です」

『光槍』という名前の通り、この雨は当たった者の妖力を奪う。一度刺さればなかなか抜けずに血を流れさせ続けるように、じわじわと力を奪っていく。…その命を奪い切るまで。

「『光槍』を使える妖怪は限られています。しかも、場所は負の遺産とも言える場所。そんな場所をセレクトするのはアイツだけです」

「…蛇神ね」

「なんと呼ぼうが勝手ですが、早くして下さい。本来、『光槍』はいわば遊び。死ぬ程のエネルギー吸収は起こらない」

「もし起これば、地獄絵図に近い事が起きるというわけね」

 朱雀の光輪が目まぐるしく廻る。ようやくエンジンがかかってきたらしい。借りていた赤いパジャマから瞬間的に、元来の装飾の激しい鎧と現代衣装を合わせたような姿へと変貌する。

 襖を開け、急ぎ足で玄関へと向かう朱雀へやる事を書いたメモを渡し、送り出した私は再びお嬢様の眠る和室へと戻った。

「地獄絵図…ですか。否定はしませんが、本当の地獄絵図はこれからですよ」

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「最悪のシチュエーションね…」

 空を飛びながらふと私が眠らされた時の事を思い出す。

 囁く黒い影と絶対的な誘惑に潜んでいた恐怖と絶望。あの時、私はコイツにだけは勝負をふっかけたくはないと思った。起きて最初にアイツの姿を探したのは、あくまで文句の一つでも言いたかったからだ。

 もし、沖縄で発生したという『光槍』とかいうのがアイツの差し金だとしたら、アイツと意識がリンクしている可能性がある。もし、そうならば私が反旗を翻した事を示す。

「これは、もう中立を保つ事は出来ないわね」

 出来れば私はこの戦いに最後まで参加したくはないが、どのみち遅かれ早かれこの時は来ていたはずだ。

「全員が戻るのは夕方だったわね…。今頃は最後の観光を楽しんでいる所かしら」

 そんな幸せな時間を壊すのはどうも忍びない。久城が慌てていたという事は頼れるのが私だけだったという事。それはつまり彼らは今の状況を一切理解していない。

「一人でやりきれるかしら?…まあ、どの道やらなきゃなんだけど」

 大きく翼を広げ直して更に加速する。到着までの時間はおそらくあと十数分といった所…

「いいえ!五分で着いてやるわ!」

 私の通った場所に火の粉が舞い散る。力一杯に翼を広げて、久々に全力を出す事に妖怪としての血が湧いた。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「さて…特務機関の話だと猶予は今日一日のみ。おそらく、朱雀はアレが止める為の術だと思っているでしょうが…」

 朱雀家の特務機関は調査・報告までの流れが非常に早い。急を要する場合、または緊急事態の時などに重宝され、少しだけではあるが警察とも繋がっている。その報告に猶予は一日とはっきりと明記されていた。

「情報の足の速さが売りの特務機関でさえ事前に分からなかった。それだけ雲の発達が早いということですか」

 朱雀の翼を用いても対処が間に合うかは五分五分でしょう。ここまで隠密に動くという事は今回の『光槍』は何かしら大きな意味を持っている。

「前回はただ単純に自分の力を増やす事が目的でしたからね。…しかし、今の彼は十分な力を持っている。今回はどういうつもりでしょうか?」

 力を垂れ流れさせ、後になってから回収する。それが一昔前の力の弱かった頃の蛇神のスタンス。だが、力を得た今これ以上得ても強くなる所か妖力の暴走を招きかねない。

 そんなリスキーを抱えるような事はあのずる賢い奴がするとは思えないのだ。

「力を流れさせて土地に宿る力を減少させるのが目的?いや、それなら自分から赴いて腕の一本や二本振るえば良い。それだけの力が今はあるのだから」

 ブツブツと呟いて情報を整理するのは昔からの癖。人間であっても猫でもそれは変わらない。

 ふと、昔の彼を思い出した。私達に封印される直前に漏らした彼の本音を。

「『人間に戻りたい』がために一度世界を壊したい、そう言っていましたね」

 世界の破壊がなぜ人間への転生に繋がるのか甚だ疑問ではありますが、今も目的が変わっていないのなら、この『光槍』もそれに関係があるはず。

「久城〜」

「ああ、お目覚めですか?お嬢様」

 朱雀苑から持ってきたお泊まりセットの寝間着のお嬢様が眠そうに目をこする。お嬢様が自分から起きるのは珍しいが、ただもう時間はお昼時に差し掛かっている。決して早い起床とは言えなかった。

「久城に電話が来てその音で起きちゃったの〜。何か『宴』っていうので話があるんだって〜」

「そうでしたか。では、お嬢様は居間に行っていて下さい。朝食は用意されていますので」

「分かった〜」

 間延びした声で返事をして居間に向かうお嬢様。その足取りは酔っているようにフラフラで何度か壁に激突していた。

 なんというか…見ていて面白かった。

「さて、『光槍』の方は気になりますが、こちらはこちらでやる事をしてしまいましょうか。……また休学手配をしなければなりませんし」

 なんというか、青田様はともかく赤原様の方は学校を辞めてしまった方が楽なのではないだろうか?まあ、単位の方はこちらの手配でギリギリをキープしていますが……

「いかんせん、いちいち手配するのが面倒でございますね…」

 猫が眉間を寄せて溜め息とは画になりませんが、深く深く溜め息をつく事を止める気は毛頭無くございます。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『はい、お電話変わりました。久城です』

「あら、お久しぶり。噂では死んだとか聴いていたけど、どうやら元気そうじゃない?」

『ええ、サトリと千代婆のお陰で今は猫又として生きていますよ』

「あら、それは残念。貴方がいなくなれば朱雀家とももう少し上手くお付き合い出来ましたのに」

『貴女もお変わりないようで何よりです。…その皮肉も含めて、どうやらもう暫くは老衰しなそうだ』

「ふふっ…そう簡単に死ぬとは思わないで頂戴な。まあ、もう私の神は次世代に受け継がせたけどね」

『おや、では今は十六夜様が当主ですか?』

「馬鹿を言わないで。まだたった13歳の子供に当主が務まりますか」

『13では妖怪世界では立派な大人です。それに、朱雀家のような例外もありますし』

「それこそ本物の例外よ。当主と言ってもほとんど実務と雑務両方をやっているのは貴方でしょう?」

『いえ…流石に猫の手で雑務は出来ませんよ。雑務の方は他の方にお任せしています。それで、何の御用でしょうか?こちらは今忙しいのですが』

「『光槍』の事ならこちらにも耳に入っているわ。でも、貴方の事だからもう既に手は打っているのでしょう?今はさしずめ〝結果待ち″と言った所かしら。…大丈夫なのでしょうね?」

『御察しの通りでございますよ。手は打ちましたが何しろ発達が早すぎる。完全には浄化出来ずに低級妖怪は溶かされるでしょう』

「では、何に対して手を打ったの?」

『人々の安全、並びに土地の弱体化防止といった所でしょうか。悔しいですがそれくらいしか手が回りません』

「それだけ出来れば十分よ。ふふっ、相変わらずの戦術の立て方ね」

『お褒めに預かり光栄です。『宴』に関しても一切の変更はありません。そろそろ招待状も届くでしょう』

「楽しみにしているわ。朱雀の新当主と貴方達の連れてくる新人さん」

『あまり油断されますと足元を掬われますよ。彼らは特殊な人間ですから』

「それはどこの者も同じ。むしろ普通クラスならばすぐに敗退するわ」

『それもそうでございますね。では、会場の設営はお任せします。…『祭の名家』当主 皐月 依子様』

「正式な依頼だもの。こちらも本気でやらせてもらうわ。朱雀家専属執事兼ボディーガードの久城 覚さん」


 電話は二人同時に切っていた。

 今回電話した目的は二つ。一つは今起きているハプニング『光槍』の対処について。そちらは手の早い執事なだけあって既にあらかた片がついていた。だから、そちらは問題無い。

 問題は二つ目の方。『光槍』を止めた、あるいは妨げる事によって起きる被害の予想。それをしているかどうか。

「あの様子では、微塵も考えていないわね。それとも、名家にコレが来たのは『光槍』とは無関係なのかしら」

 まあ、無理もない。名家ではない朱雀家に名家の情報が渡るはずもない。もし、これを話していれば『宴』は延期か中止のどちらかを選ばされる。だが、延期ならばいざ知らず、中止などになってしまっては『祭の名家』の立つ瀬が無い。

「まあ、良いわ。こちらも最大の戦力でお相手してあげましょう。…蛇神様」

 この年で七十になるはずの老婆が二十代の声と姿で笑う。手元には一枚の紙切れ。その中央には、蛇の鱗が何枚か張り付いていた。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「手紙…ですか?」

「そうだ。何でも近々『宴』があるらしいからな。名家に手紙を送っておいた」

 ダンタリオンは薄汚れた白衣を翻して実験に没頭している。こちらの話も意識半分であろう。

 それでも、俺が何かを言えば何か返事を返す。会話をしながら実験効率は一切衰えない。この男は根っからの研究者なのだろう。

「鱗を一緒に同封して…いわば宣戦布告ということだ」

「それでは我々が動きにくくなるのでは?」

「なに、『宴』に始めから参加するわけではない。その時が来るまで適当に観戦でもしていれば奴らも下手に手を出してはくるまい。もし、どこの馬の骨とも知らん奴らがちょっかいを出してきたら返り討ちにすればいいだけだ」

「それには貴方様が直接向かわれるので?なんでしたらジュダさんあたりを向かわせた方がよろしいのでは?」

「あまり名家を嘗めない方がいいぞ。なにせ一番若手だった『色の名家』でさえもあの実力だ。噂もたまには当てになるものだな、とあの時ばかりは感心したからな」

「心にも無い事を仰る。指一本触れさせずに圧倒していたではありませんか」

 少しばかりあの時の事を思い出す。今は既にホルマリン漬けにされた一人の青年の事を。

 ダンタリオンの言った事は本当だ。文字通り、指一本触れさせずに生け捕りにしたのは事実だ。だが、それはあくまで戦闘の中身だけだ。

「まさか半日も生け捕りにするのに時間をかけるとは思わなかった。普通の人間なら、体力的にも精神的にも耐えられるものではないぞ。まして…あいつは最後まで刀を振り続けたしな」

 殺すだけなら確かに時間はかからない。だが、奴らには目的の為に利用されてもらわねばならない。殺すのではなく、生け捕りにした理由がソレだ。

「瞬時に憑依する対象を変える事で多種多様な戦い方をする。『色の名家』とはよく言ったものだ」

 今回沖縄に送った『光槍』もそろそろ雨を降らせる。今回は前回とは違って発達速度を格段に上げておいた。

 その分範囲は狭まったが、まあ前回とは違ってやたらめったらに力を集める必要は無いから問題無いだろう。問題があるとすれば、またアイツらが邪魔をするかもしれないという事だが…まあ、要の奴は殺した。作戦立案出来る奴が消えたのだ。行動力しか能の無い奴らではどうしようもない。

 掌を虚空にかざし、一つの空ビンを具現化する。現在、瓶の中身は空だが『光槍』が発動すれば奪った妖力はここに集まる。

 前にやった時はペットボトル何十本分という莫大な量が必要だったが、今回使うのはせいぜいフィルムケース大ほどの量だ。

 さて、そろそろ時間のはずなんだが…。

「おい、ダンタリオン。『光槍』の発動はそろそろじゃなかったか?」

「そのはずですがね〜。溜まりませんか?」

「ああ、まったく…ん?」

 よく見ると薄く黄金色の液体が薄い膜のようにビンの中に溜まっている。だが、液体は増えるスピードがやたらと遅い。この調子では溜まってもビンの半分くらいの量にしかならない。

「馬鹿な!奴は殺した。『光槍』を妨害する術を持つのは奴だけのはず!」

 思わずダンタリオンにビンを投げつけて借り物の肉体の顔を歪める。ダンタリオンにビンが当たったかどうかを確認する前に、意識を『光槍』の中にダイブさせる。

 青い海の真ん中に浮かぶ島。一見すると何ら異常は無い。『光槍』は雨を降らせて任務を全うしている。

「(どこかにあるはずだ。あの時と同じように、あの呪印が)」

『光槍』を発生させるには結界と同じで起点が必要になる。座標指定と効果範囲指定の為だ。この起点は分かりにくい所、もしくは発見するのが困難な場所にある。

 もし起点を発見され、起点を破壊などされれば『光槍』は力を失ってしまう。それを防ぐ為にも、こうして意識をリンクさせて異常を検知出来るようにしているのだ。

 しかし、まったく異常を感じずに『光槍』を妨げる方法が無いわけではない。それが今回起こっているであろう妨害。

「(それぞれの起点に呪印は無い…。ならばどこに?)」

 今回の妨害はやはりアイツではないという事か。…当然ではあるが。

『…さて、そろそろかしら?』

 頭の上から聞こえてくる昔聞いた声。『光槍』が捉えた声はくぐもっているが、その声ははっきりと聞こえた。

「(なるほど…。人間も五十年で成長するということか。やはり生きていたな!)」

『光槍』の目を上に向ける。そこには空に呪印を描き展開している、神々しい装飾をされた鎧を着る四神の姿があった。

『久し振りじゃない。まあ、直接会っているわけではないから微妙な所ではあるけれど』

『光槍』に口は無い。そして不要な物を取り除いた為に意思疎通に必要な物は一切積んでいない。『光槍』と繋がっている俺に出来る事は、精々『光槍』の目を通して四神ーー朱雀を睨みつける事だけだ。

『怖い怖い。貴方への妨害がそこまで許せない?ならば、貴方が殺し損ねた人間に言う事ね。…それと、あくまで今回は妨害。どうやら出来る事はこれだけみたいね。まあ、死者が出ないなら別に良いわ』

 朱雀の翼が大きく開かれる。おそらくここから立ち去るつもりなのだろう。今の俺には、奴を止める術は無い。

「(貴様らだけは後悔させてやる。次に会う時にな!)」

『私達は敵対する事に決めた。その選択に後悔はしないわ!』

 こちらの言葉がまるで聞こえているように、朱雀は吠える。

 翼を強く打って風に乗り朱雀はその姿を消した。偽物の神が、本物の神に対抗するなど昔ならば考えられない事だ。

「(だが、必ず貴様らを超える。でなければ、俺は俺を取り戻せんのだ!)」

『光槍』との繋がりを断つ。あの呪印を解除する事は出来ない。俺が直接出向いたならば話は別だが、俺の肉体はもうすぐで活動限界を迎える。行きは行けても帰りには自我を失いかねない。

 つまり、実質俺はアイツらに負けたわけだ。

「だが、次の戦いは俺が勝つ」

『光槍』の降らせる雨は、呪印に妨げられながらも少しずつ妖力を集めていた。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 戦が始まる。

 小さな下火、大きな下火、やがて戦火は世界を蝕み大きな大きな穴を開ける。

 眼下を見下ろす聖者達。

 眼窩をくり抜く亡者達。

 やがて全てが一つになる。

 大きな大きな穴の中、全てが一つに混ざり合う。

 白くて大きな四角い箱。

 そこは箱舟か、はたまた牢獄か。

 一人ぼっちの亡者と一人ぼっちの聖者のお話。

 彼らは決して相容れない。互いが互いを憎み合う。

 その在り方は鏡。

 前に立てば互いが見えるが、決して互いを理解できない。鏡という一枚の壁によって。

 鏡を壊せ。鏡を壊せ。

 彼らは必ず会わねばならない。

 それが彼らの運命なのだから。



 さて、誰が鏡を壊せるの?

ル 「『狐の事情の裏事情』の後書きラジオコーナー、なのです!」

カ 「わーい(棒)」

ル 「ちょっと〜、テンション低くない?なのです」

カ 「そりゃ、結局飽きもせずにこんな事やらされてたらテンションも低くなるわ。というか、貴女のその喋り方は何よ。喧嘩売ってる?」

ル「わ、わたしはただ台本通りやってるだけなのです!文句なら作者に言うのです」

カ 「だいたいの見当はついてるわよ。……はあ、仕方ないわね。それで?貴女何か聞いてない?これをやれ〜みたいな」

ル 「それなら台本にあるのです。え〜っと、『セレの耳に入らない内にプロフィール公開しちゃって下さい。セレは俺が命懸けで止める!』らしいのです」

カ 「プロフィール公開にどこまで本気なのよ。というか、一体何を公開するつもりよ」

ル 「キーポイントは趣味らしいのです。…なるほど、コレは意外なのです」

カ 「?」

ル 「それでは早速。名前セイレーン、特技は泳ぎで苦手…というより出来ない事が歌う事らしいのです」

カ 「歌?歌なら誰でも歌えるでしょ?」

ル 「セイレーン…というより人魚は童話の人魚姫の史実の影響で歌えないのですよ。噂では歌うとそれは歌ではなく、生物兵器の部類だとか」

カ 「なるほど、私のように人間から妖怪になったパターンとは違って、純粋な妖怪はそういう制約があるのね」

ル 「あとは知名度の低い妖怪も制約を受け難くなるのですよ」

カ 「それじゃあ、あの狐二人は制約が無い部類なのかしら?」

ル 「そのお二人に関してはルイはよく知らないのです。…ついでに紹介していただきたいのです」

カ 「仕方ないわね。短髪の狐がコン、二つ結びの狐がコル。この二人も私と同じで元は一人の人間、それもライカの知り合いときたら、皮肉なものよね。一応、コンは変身能力に長け、コルは幻覚に長けているらしいわ。まあ、あまり大きな差は無いみたいだけど」

ル 「一人の人間から二人の妖怪ですか?…そんな事例は聞いた事も無いのです」

カ 「あまり深くは詮索しないのが賢明ね。二人の事をもう少し知りたければスピンオフを読む事をオススメするわ」

ル 「分かったのです。それでは、問題のセレさんのご趣味ですが…アレ?急に視界が暗く」

セ 「…お主ら、死にたくなければ動くでないぞ」

カ 「あらセレ、よく間に合ったわね」

セ 「ふん、水球に閉じ込めてしまえば我のものじゃ」

カ 「…作者、本当に命懸けになってるわね」

ル 「そ、それより、この状況はどうするのです⁉︎」

セ 「ふっ、諦めるのじゃな。我が来てしまってはバラすにバラせまいて」

カ 「別に良いじゃない。貴女が芸術家肌でも、私は何とも思わないわよ」

セ・ル 「…………」

カ 「あら?どうしたの?」

セ 「……」

ル 「あ、あの、なんで知ってるんですか?」

カ 「嫌ね、何を言っているのかしら?私は何も知らないわよ。セレがライカとツチカの居ない内にこっそり自室で彫刻活動をしている…なんてね」

セ 「………………嫌じゃ」

カ 「えっ?」

セ 「嫌なのじゃ〜〜〜〜!こうなれば、ここで全員殺して秘密を闇の中に‼︎」

カ 「ちょっ!ここで水球出すんじゃないわよ!非物質は斬れないのよ‼︎」

ル 「そ、そういう問題ではないのです〜!」

カ 「ここは逃げるが吉よ!と、取り敢えず、今日はここまで。次回も確実な情報が得られ次第お知らせしていくわ!」

セ 「こんなコーナー、水没するが良いのじゃーーーーーーーーー!!!!!」


……このあと、水没したスタジオを直すのに、セレは三日三晩尽力したという………


セ 「我は悪くないのじゃ……」

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