鞄には色々つまっている。
いつの間にか、
姉ちゃんの右手にはハサミが握られている。
アンティーク調の可愛らしい鞄になんていうものいれてるんだ!
無言でカッターまで出すのやめてください、お姉さま!!
須藤はものすごい早さでカートを直し、駅までお持ちします!と歩き出した。
「あら、ありがとう。」
「いいえっ!こちらこそすいませんでした!」
にこやかな姉ちゃんだが、どす黒いオーラが出ている。
怖すぎる。
いきなり蹴りつけた須藤には後で報復するとして、
今は波風立てず駅まで行ってお別れしたい。速攻で。
沈黙の進軍は、須藤と俺が姉ちゃんを見送る挨拶するまで続いた。
姉ちゃんを乗せた電車が見えなくなると、
須藤は素直に蹴りの謝罪をしてきたので腹に一発入れ、許してやった。
「樹の姉ちゃんが彼女に見えて、むしゃくしゃしてやった。すまん。」
腹をさすりながら、須藤がうめくように言った。
どんな悪夢だ。
「若作りなのか、やっぱり。」
姉の友人を思い浮かべる分には特に変に思うこともなかったが、世間一般からみれば若作りなのかもしれない。
新年度や卒園式の時のスーツなんぞ似合わなすぎて笑えるのだが。
「樹の姉ちゃん若く見えるから、別にいいんじゃないか?
黙ってたら29歳に見えないから間違えたんだよ。」
黙ってたら、ね。
姉ちゃん、あんた黙ってるのが一番みたいだぜ。
黙ってたら、可愛らしいぶるいの姉ちゃん。
口を開けば、残念!