SS ※ハルネの夢小説※
※ このSSは、本編第一部のラストシーンの余韻をぶち壊す恐れがありますのでご注意ください ※
――それは、ヴァルグレイの魂を救ったその後の夜の事――
「あ~~~~……う~~~~……」
あたしは自室のベッドで、ゴロゴロと転がり、眠れない夜を過ごしていた。
オジさまの頭を抱き締めた時はとにかく必死で……
なんとかしなきゃ、なんとかこの人が凍えないように……
そればっかり考えていて、なんていうか他の事を考える余裕が無かった。
でも今考えると……
「う~~~~っ!」
枕を抱えながら唸る。
「うああ! ダメだ! 眠れない!」
――ガバッ!
掛け布団を跳ね除け、飛び起きる。
「こういう時は何かに気持ちをぶつけないと!」
普段なら料理だ。
いっぱい作っていっぱい食べればそれだけで満たされる。
……でも今は真夜中。
こんな時間に大量に食べたりなんかしちゃったら……
翌朝の顔のむくみとお腹の張り具合を考えるとゾっとする。
やめっ!
エモパレポーションも昨日作ったばかりだしなぁ。
インスピレーションも湧かない。
……あの時、胸に抱いたオジさまの感情の色を想像するのは、まだまだ咀嚼が足りなすぎる。
やめっ!
「……そうだ、日記でも書こう!」
滅多に付けないが、たまにとりとめない事を書く。
それでなくても今日は色々あったんだ。
ベッドから起きて机に向かう。
……途中、オジさまが座っていた椅子が目に入る。
座面に顔を押し付けたい欲求がふと湧いた。
……いやいや! 変態か!
そもそも時間が経ちすぎて温もりも何も無いよ……
いかん、なんだか悶々としてる。
さっさと気持ちを整理して寝よう。
机に備え付けてある魔石ランプを灯し、引き出しから日記帳を取り出す。
ペンも手に持ち、準備万端!
「さて、何を書こう?」
今日は朝から色々あった。
オジさまが来て、朝食をご馳走して……
お昼を届けたらリオーネさんとオジさまが仲良くしてて…………アレは忘れよう。
で、気持ちが抑えられなくて、暴走しちゃって、薬草店に向かって……
カレシのお使いだって誤魔化して……
…………
他にも色々あったはずなのに、悶々としているせいか、そこが妙に引っ掛かってしまった。
カレシ……恋人……興奮剤……夜の行為……
もしも、オジさまが恋人だったら…………
さっきまであたしの手を握ってくれてた、オジさまの手の感触を思い出した。
―――――――
「ハルネ嬢……」
オジさまの手は少し荒れている。
若い人のような滑らかな手じゃない。
手の甲に刻まれた細い皺が、長い人生を語っているようでドキドキした。
その手が頬に触れた時、どうしようもないくらい安心してしまう。
ドキドキしているのに、居心地の良さを覚えてしまう。
「……ステキなお嬢さん。 私を誘惑するなど…………イケナイ子だ」
――頬に、ちゅっ。
―――――――
「~~~~~~~~っっ!!」
あはははははははっ!!
いや、これはナイ! ナイよっ!!
恥ずかしさとありえなさを誤魔化したせいか思わず笑ってしまった。
こんなのオジさまのキャラじゃない!
でも……でも…………!
うん、認めよう。
あたしにはオジさまをトロトロに甘やかしたい願望がある。
毎日ご飯作ってあげて、身の回りのお世話もいっぱいして、沢山役に立ちたい!
しかし、同時に、トロトロに甘やかされたい願望もある。
抱っこされたい。 撫でてもらいたい。 甘い言葉が欲しい。
経験が無いから想像でしか無いけども…………キスもしてほしい。
―――――――
身長差のあるオジさまが、ほんの少し屈む。
オジさまの手が、あたしの前髪をかき上げる。
おでこに指が触れた瞬間、パチっと電気が走るような感触が流れた。
「……可愛らしいおデコだ。 キミの額すらも愛しい。 思わず、こうしてしまう」
――おデコに、ちゅっ。
オジさまのほんのり乾いた唇の感触がくすぐったい。
しかし、なかなか放してくれなかった。
ちう~っと……吸われてる…………味わわれてる………
そっと離れた唇が、あたしのおでこに残したのは、鮮やかに浮き出た、キスマーク……
「……ほら、コレで私のモノになった」
―――――――
「~~~~~~~ほわたぁっ!!」
羞恥に耐えられず、思わずバコンっ!と、日記帳に拳を叩きつけてしまった。
ハァ……ハァ……
落ち着け……おちけつ……
机に突っ伏しながら自分に言い聞かせる。
大丈夫……これはあたしの妄想だから。
セーフ! これはセーフです!
う~~、はやくオジさまのモノになりたい……っ!
求められたい! スキを味わいたい!
オジさまに好き勝手されたいっ!!
机に突っ伏したまま、拳でダンダンと机を叩く。
…………つ、次はもうちょっと、和み路線で行こう。
―――――――
「……キミの髪は、ふわふわしていて、とても心地が良いな」
バックハグの体勢で、オジさまに包み込まれながら、大きな掌があたしの髪を撫でる。
流すように撫でおろす。
かと思えば、髪を梳くように指を通す。
サラサラ……ナデナデ……
くすぐったい感触を覚える度に、背中の芯にソワソワと心地よさの信号が流れる。
幸せな感覚。 満たされる気持ち。
そして、この人に甘えてもいいんだという、絶対的な肯定感。
もっと撫でて? もっと触って? もっと確かめて?
あたしは、撫でられる感触をもっと味わおうと、背中をオジさまに擦りつける。
「……ハルネ嬢はまるで、猫のようだな。 どれ、もっと可愛がってやろう」
――うなじに、ちゅっ。
―――――――
「ひょぉ~~~~~っ!!」
妄想の文字情報だけであるにもかかわらず、あたしはその空想の感覚に身悶えしてしまう。
うなじが! 背中が!
思わず自分で自分のうなじを触って確かめる。
なんともない。 当たり前だ。
う、うなじにキスはちょっとやり過ぎだけど、これくらいならいいよね?
頭、撫でられたいもん。 ……優しく。
今のは空想のオジさまだった。
リアルのオジさまはどんな風に撫でてくれるんだろうか?
そもそも撫でてくれるんだろうか?
オジさまの好みって何だろう? どんな人が好みなの?
……オジさまは、あたしの見た目について言及した事は無い。
愛らしい瞳、とか、美しい感情色、とかは褒めてくれたけど、体型に関して何かを言われた記憶は無い。
……もしかして、そういう趣味だったりするのだろうか?
ぽっちゃりした娘が好みとか。
だったら……
―――――――
「……ハルネ嬢、私にはコレが、たまらないのだ」
バックハグの体勢で、オジさまに包み込まれながら、その大きな掌は……
あたしのお腹を撫でていた。
「……ああ、ホントにやめて……オジさま…………」
自分の怠惰を自覚させられているようで……
お腹を触られていると、恥ずかしさでたまらなくなった。
羞恥で顔だけでなく、耳も熱くなる。
しかし、オジさまのあたしのお腹を撫でる手付きは優しい。
服の上から、ゆっくり撫でつけ、時折確かめるように摘まむ。
肉を掴まれるたびに、自分の罪を自覚させられているようで、なんだか涙が滲んでくる。
でも、オジさまの手付きは終始優しさに溢れていて……
あったかい掌が、あたしの罪悪感を溶かしてくれているようで……
そしてハッキリと、自分が”そういう対象”として求められているのが理解できた。
恥ずかしさと嬉しさ。
そして、求められる気持ちの高揚に、胸がきゅぅ~っと締め付けられる。
お腹を撫でるオジさまの手に、自分の手をそっと重ねてみる。
その愛しい肌の感触に、ますます胸が苦しくなって、気持ちが溢れて……
あたしの方もオジさまが欲しい気持ちが強くなった。
その気持ちが伝わったのか、あたしを抱える力がより一層強くなった。
そして……
オジさまの、細い皺すらも色気を放つ、大人の手が、もっともっとあたしを求めようと……ブラウスの裾に指をかけて……
―――――――
「むりぃぃぃぃぃぃ~~っ!!」
「お姉ちゃんっ!! うるさい!! もう真夜中なんだよ!?」
ドアをバガンっとぶち開けて入って来たのは、寝間着姿のシャリエナだった。
限界に達したあたしは相当に騒々しかったようだ。
シャリエナに怒られたあたしは、もう起きて何かをする事も禁じられ、布団に潜り込む。
しかし、そのたびに先ほどの妄想日記の事を思い出し……
枕に顔を埋め、足をバタバタさせるのだった。




