3.トラブル
久しぶりにミスをした。
最近はいい感じに仕事をこなして、もう条件を満たしてもいい歳なのにって馬鹿にしてくる奴らを見返してやりたかった。条件を満たせないやつなんて沢山いるのに、自分ができたからって調子に乗るなんて、所詮は人間だな。
ミスをしたのは初凪 華純の死の管理工程。ただ見ているだけで良かったのに、逆にこちらが見られてしまった。そう、ただ見ていれば良かったんだ。きっとまたそんな簡単なことも出来ないと言われるんだろうな。
あくまでこの少女、カスミは自殺をしようとしていたんだ。俺がそれを邪魔したのだから、会話が1度途切れても、眠るなんてこと出来ないだろう。少しは話し相手になってやろうと思った。質問は多いし、生意気だ。だが、死のうとした人間の絶望は大きい。それと比べたら、俺が話すくらい、比にならないだろう。
そう、俺は久々にミスをしたと同時に、久々に人と触れ合った。
この歳での自殺は多い。夏休みの最後に死のうとするなんてよくある事だ。それで止める奴が出たら「自殺がその日に多いならその次の日に死ねばいいんだろ」なんて屁理屈ほざくやつもいる。夏の終わり、その前にある辛い生活から逃げれる時間そこから戻るくらいならってそうやって全てを手放す。原因の大体は周りのせいだが、自分自身をその場から更に追い込む自暴自棄、精神疾患、鬱病などなど……。それは大人になってからも治らないケースがある。これだから、人間はめんどくさいんだよ。一体この世にどれだけゴミやゾンビが湧いてると思っているんだ。カスミも、ゾンビの1人なのだろうか。
少しだがカスミは話せて満足したようだ。名前を聞かれたのはいつぶりだったか。どの道すっかり顔色も良くなったようでよかった。まぁ、そのうち死んでもらうんだが。
とりあえず帰って……さて、どう説明しようか、俺のミスができるだけ広まらなければ良いんだが。今回は報告書で済ませよう。こういうのだってこっちではよくあるミス。でも変だ。何故かいつもよりは悪い気分じゃないな。ドアを開けて部屋を見渡す。
「……ただい……ま…………サクラ?」
使い魔が居ない!どこだ?気まぐれ?もしかしてまたどっかで隙をついてフードに入られたか?だとしたら道を戻れば居るはずだ。とりあえずカスミの所まで行くか。
「ベランダが開いてる!まさかっ」
バッと下を見た。
「さすがに死んじゃいないか。」
さっきから心臓に悪い事ばかり起きるな。ぱっぱっとサクラを探して帰るか……。
「…………って、え?!おいサクラ!カスミの布団から降りろよ!」
サクラの耳がピクッと動く、こちらを見るものの目を丸くしてから微笑むばかりで外に出る気配は全くない、それどころか寝返りをしてくつろいでいる。大声を出せない事を察したのだろう、聞こえないふりをしている。誰に似たんだか、親の顔が見てみたいもんだな。流石に飼い主が舐められるのは良くない。
「……ミ゛ッ………………。」
サクラは仕方ないと言わんばかりに動き出した。しょうがないやつだな。それにしても戸を開けたまま寝たら風邪引くぞ。夏だけど……エアコンあるなら冷房つけろし。布団も腹にだけはかけろよな。こっちの気も知らないで幸せそうに寝やがって…………本当に、帰るとするか。
「おい、来い。」
「…………。」
サクラは少し拗ねたようだ。今度しっかり躾をしないとだな。
すまん、正直、下手に詰め込んだわ。




