2.心情
「……俺は魔法使いだ!」
「……は?」
「だっ、だから、『魔法使い』だ……。」
「何言ってんのよ!?見た目の情報量的にどう見ても死神じゃんか!」
今更何を言い出すかと思ったら見当違い過ぎる!
「おかしいよ!絶対おかしいっ!」
「そ、そうか?俺の……『師匠が』死神なんだよ。だから俺の見た目もそれっぽいんだろ、なっ?」
「なっ?じゃないでしょ。」
「という訳で、俺はお前の死の管理をしに来た。」
「という訳でってどういう訳……?」
「お前がしっかり死んだかどうか、どういう死に方をしたのか、お前の人生の内容や、お前の死後、つまり魂のご案内をしなくちゃいけなかったんだが……」
「私は死ぬ気ないからね?」
「はいはい、そういうことで既に決まっていた死が俺が居たことによってなくなってしまった。つまり妨害者は俺だ。妨害者は責任をもって魂を死へ導くことが掟、それでその期間が4年間ってことだ。」
そんな難しいことを、しかも知らない世界のことをずらずらと並べられても状況も状況だから理解できないよ。
「えっと、とりあえず普通の生活はできるってこと……?」
「『4年間』はな。」
「私がもしもその期間中に死ななかったら?」
「……世界からランダムで人が1人死ぬ。」
「ランダム……。指定は出来ないの?」
「し、指定だぁ?お前殺したいやつでも居るのか?」
「山ほどね。」
そうして私は少年が先程見せたようにニヤリと笑ってみせる。しかし少年はふーんっと予想外の反応を見せた。
「え?驚いたりとか、否定したりとか何かないの?」
「死さえも管理してるんだぞ。そんな人間それこそ山ほど居る。その程度で収まるだけいい方だ。」
なんだか悔しい思いをさせられた。
「結局指定はできるの?」
「できねーよ。おおよそ決まってはいるがな。」
「その条件は?」
「あー、そうだなぁ、じゃあ、お前の最も近くに居るやつしかも心情的に確率が高いやつが死ぬって言えば満足か?」
「難しいな。」
「まぁ、あくまで一例だ。本当にランダムの時もあるし位置関係によって決まったり、後は……いや、こんなもんだな。」
「なるほどねぇ。」
それにしても困った。こんな夜なのに、自殺の失敗をした時のことを全然考えていなかった。おかげで寝る気にもなれないし、眠気もない。この少年とずっと話すというのもどうなんだろうか?向こうにも予定があるだろうしなぁ。というか、そもそもこの少年のせいで失敗したんだった。どうせ責任が着いてくるなら話し相手にくらいなってもらおうかな。
「なぁ、ぼーっとしてっけど、大丈夫か?」
「自殺する時点で大丈夫じゃないっての。って、あれ?」
「どうした……?」
「いや、別に。」
「あっそ。」
私って大丈夫じゃないって言えたんだなぁー。
「ねぇ、暇だからさ、話し相手になってよ。」
「……別にいいけど。」
え、てっきり断られるかと思ってたのに。
「そんなに意外かよ。」
「うん、すごく。だって初対面にそんな荒々しい態度で……」
「だぁああー!!もうそれは分かったから。逆に初対面なんだから意外だとか偏見押し付けるなよ。」
「……ごめん。」
「ん……。」
すごいごもっともな事を言われてしまった。
「ねぇ、少年。」
「その呼び方やめろ。」
「えっ、だって教えてくれないし。」
「お互い様だ。それにお前も『なぁ、少女』なんて呼ばれたくないだろ。」
「うん、すごく気持ち悪いね。」
「チッ、クソが。まぁ俺はお前の管理データ持ってるから名前なんて最初っから知ってたけどな。」
「何それ余計気持ち悪いんですけど。」
「突き落とすぞ???」
「ご自由にどうぞー。」
「こいつっ……!」
この人私に怒ってるんだよな。なんか変なの。
「ふっ、あっははっ!」
「?!……なんかおかしいかよ!」
「う、ううん?ふふっ、良い話し相手になったよ。」
「ん……もういいのか?」
「うん!あ、そうだ、名前だけ教えてよ。」
「……………………。」
「え、そんなに嫌……?」
「嫌って言うか…………。」
「?」
嫌なら別にいいんだけどさ。
「………………シダ。」
「えっ、あっ…………わ、私カスミ!!」
「だから、知ってるってば。」
「あっ、そ、う、だね。」
「じゃーな。」
「うん!おやすみ!」
私がそう叫ぶと去り際にシダ君は軽く手を振ってくれた。大鎌をひと振りすると鎌隠れるようにして消えた。まさかこんなにも寂しくて苦しくて辛い夜に誰かと話せるなんて思ってもみなかった。なんでか分からないけれど視界が滲む。そうして私は布団に倒れ込んで少し夜風と暖かさを感じながら眠った。
シダくんさ、ちょっと君ベラベラ喋りすぎかもしれんねw




