竜の神様と、バーベキュー。
バーベキューコンロは無事、消し炭にならなかった‥。
いや、本当にドキドキしたよ。
でも意外に、火を起こす作業が上手で驚いた。
「まぁ、外で戦闘しに行ってる時なんかは毎回野営もしてるしな」
「野営」
「力を使って火起こしなんかはしょっちゅうだ」
「しょっちゅう」
戦闘とか、野営とか、なんか普段のオミさんからは想像がつかない単語に驚いて、その度におうむ返ししてしまう。
そ、そうなのか‥。
初めて知った事に驚きすぎて、目を丸くするばかりだ。
大きな串に刺さったお肉や野菜を、ゆっくり焼きつつ向かいに座ってワクワクしているオミさんを見る。毎日を過ごす事に必死でオミさんの事、あんまり聞いてなかったなぁ。
「‥戦闘って、何と戦うんですか?」
「あー、魔物とか、歯向かってくる敵?」
「‥大雑把」
「ごちゃごちゃ言っても、敵は敵だ」
「そうなんだ‥」
「なんでんな事聞いてくるんだよ」
「いや、あまりオミさんの事、聞いた事なかったなって」
串のお肉をちょっと裏返しつつ、そう答えるとオミさんは「ふ〜ん」とまた気の無い返事をする。‥お肉が好きで、かき氷も最近までハマってて、雑誌を結構面白そうに読み込んだり、髪を乾かしてもらうのに必死とか、そんな事しか知らないしなぁ。
「‥お前は、大学?終わったらどーすんだよ」
「うーん、無難にどこかの会社に就職かな?」
「会社?」
「オミさんの好きなタレとか、雑誌を作っている場所に仕事に行くって事です」
「葉月の店じゃないのか?」って言うけど、いやぁ、そこまではお世話になれませんよ。ちょっと笑ってオミさんを見上げる。
「‥それまでには、色々決めます」
「別に、じっくり考えればいい」
「そうは言っても、あと3年もあるんですよ?オミさん大変でしょう?」
「俺は神だぞ?3年なんて、昼寝してたらすぐ過ぎる」
「そんな訳あるかい。っていうか、延長はしな‥」
「一生の事なんだから、よく考えろ」
そうぴしゃりとオミさんは言うと、焼けたであろうお肉の串をお皿に乗せて私に差し出す。
‥なんでそう、優しいかな。
お皿を受け取って、ホカホカと湯気の出るお肉の串を見つめる。
「‥いただきます」
「おう、食え。火竜の起こした火で食べられるんだ。精々ありがたがれ」
「「なぜ、その余計な一言を足すかな‥」」
オミさんはニヤッと笑って、自分も串を取ってバクッと齧り付く。
「うめぇ」
「あ、本当だ。美味しい〜!肉が柔らかい」
「これ、グラム108円のと違うなぁ」
「蛇神様の用意してくれたお肉ですからねぇ、そりゃ安いお肉と違うでしょう」
値段で違うのか?ってオミさんは言うけど‥。
ごめん、いつも安いのしか食べさせてあげられなくて‥。経費で落ちるとは言ってくれたけど、つい安いのを選んでしまう貧乏根性ですみません。
「‥グラム2000円のなんて口で溶けるんですけど、高過ぎて‥」
思わず呟くと、オミさんがまじまじと串のお肉を見て、
「そっか、うちの国のでけー牛の魔物の肉、すげぇ美味いんだよなぁ」
「「‥魔物‥」」
「あ、ちゃんと食えるぞ?」
いや、その前にもしかして私も食べる前提ですかね?
ちょっと遠慮したいんですが‥。
と、オミさんが串に刺さった野菜をそっと退けようとするので、すかさずジロッと見て、
「‥お残しすると、蛇神様に言っちゃいますよ」
「‥多少のお目こぼしも大事だと思うぞ?」
「神様が何を言ってるんですか!髪を乾かして欲しければ残さず食べてください」
オミさんにそう言うと、私を見てニヤニヤ笑う。
「ようやく何も言わずとも乾かすようになったな」
「毎回乾かせてるくせに何言ってるんですか。ほら、ピーマン食べてください」
「嫌だ、苦い」
「‥子供か!!」
「大人だし、神だ」
そんな大人で神が野菜を残そうとするな、はぁ〜っとため息をついて割り箸でオミさんのお皿のピーマンを掴んで、手を添えつつ、オミさんの口元に持っていく。
「ほら、口開けて」
瞬間、オミさんの目が丸くなる。
なんだよ?そんなにピーマン食べたくないのか?
「ほら、オミさんあーんってして下さい」
「「な、なな、何を」」
「えい」
オミさんが慌てて口を開けた瞬間に、ピーマンを突っ込んだ。
以前私の口にもドーナツを突っ込んだお礼だ。
オミさんは慌てて横を向いて、こっちに顔を見せないようにモグモグ噛んでいる。‥そんなに嫌なの?私は自分の分の串についた野菜をかじって食べていると、オミさんが私をじろっと睨んで「覚えておけよ‥」って言うけど、だからそんな三下みたいなセリフを神様が言うでない。




