竜の神様、殺気立つ。
狐さんに少女漫画を進めた蛇神様は、一緒に落ちてきた蛇さんを呼び寄せると、蛇さん達は一本の縄に姿を変えたかと思うと、瞬間、真っ直ぐな天井にそびえ立つ棒になる。
蛇神様は私の手を繋いだまま、その棒を掴んで狐さんを見る。
「言の葉の神にも言っておくぞ?」
『貴様‥!!』
ニヤッと蛇神様は笑うと、私と一緒に一気に上に上がっていく。手を繋いでいるだけなのに、自分の体がまるで重力がない!!
グングンと上がっていって、瞬間目の前が明るくなって思わず目を瞑る。
「「青葉!!!」」
不意にオミさんの声が聞こえて、瞬きしつつ顔を上げるとオミさんがギュッと抱きしめてきた。
えええええ???!!
びっくりしてオミさんを見上げようとするけど、後頭部をがっしりと大きな手がオミさんの胸元へ引き寄せるように抑えられてて、顔も上げられない。っていうか苦しい。
「お、オミさん、く、苦し‥」
なんとか、手で背中をタップするとオミさんがようやくハッとして体を離してくれた。
悔しそうな、苦しそうな顔をしているオミさんの顔が見えて、
心配してくれたんだな‥って、思って小さく笑う。
「怪我は?」
「蛇神様のお陰で大丈夫だったよ」
私がそういうと、オミさんの後ろで腕を組んでニヤニヤと笑っている蛇神様、
「顔を舐められておったなぁ」
「へ、蛇神様!!」
私が慌ててそう言うと、オミさんが私の肩をガッと掴んで、頭のてっぺんから爪先までまじまじと見て、「‥次会ったら、ぶっ殺す」って低く呟くけど、殺気をしまって!!!怖いから!!
そうして周囲を見ると、竹林に囲まれた白い神社が見える。
「あれ‥、ここ、蛇神様の神社??」
「ああ、癪だけどな‥。神域にはまだ俺は入れないから、蛇神にお前を頼んだ」
「そ、そうだったんだ‥。蛇神様、本当に有難うございます」
蛇神様にお礼をいうと、めちゃくちゃ面白そうにオミさんを見て、
「いやいや礼には及ばん!こいつの悔しそうにわしに頼む顔が見られたんで、楽しかったくらいだ!また捕まってもいいぞ?」
「いや、流石にそれは嫌です。あの、ああいう事ってよくあるんですか?」
「滅多にないな。だから、今回はわしが助けに行ったんじゃ。あとで護符を渡しておく。そうすれば大丈夫だろう」
至れり尽くせりだなぁ。
私はまたお礼を言うと、蛇神様はニコッと笑って着物の袖からスマホを出した。
スマホ、持ってたの???
びっくりして蛇神様を見ると、ニンマリ笑って‥、
「青葉、わしとスマホで自撮りしよう!!」
「へ、へぇえええ????」
蛇神様は、蛇の模様が入ったスマホのカメラを起動して私の側へやって来る。すんごい手慣れてますね?!そしてオミさんをチラッと見ると、
「竜の子、お前も特別に青葉と撮ってやる!」
「「は、はぁあ!??別にそんなん‥」」
「スマホ、欲しくないか?」
「「す、スマホ!?」」
「これがあれば、色々調べられるし、写真も撮れるぞ?」
「何が望みだ‥」
「だから、青葉と写真を撮らせよと申しておるだろう」
‥えーと、私はどうすればいいのかな??
二人が何やら交渉し始めているし。目をウロウロさせていると、真っ白なおかっぱの髪をしたシキさんがこちらへ駆けつける。
「シキさん!」
「青葉様、お話は聞きました!大丈夫ですか?お疲れでしょう、どうぞお茶を飲んでいって下さい」
お、おお!!!常識人!ならぬ蛇さん!!
私がシキさんの頭を思わず撫でて、「ありがとうございます」ってお礼を言っていると、急に後ろに体を引っ張られて上を向くと、オミさんが私を睨みつけている。
「俺にお礼は!??」
「あ、ありがとうございます」
「心がこもってない!!」
「もぉおおお!!!まず一旦休ませてくれぇえええ!!!」
夜空に私の嘆きが響いた。
‥言の葉の神様、龍の神様、本当にどうにかして下さいよ〜〜〜〜!!




