竜の神様、課題のヒント。
御簾の向こうにいるであろう蛇神様が私の聞いた内容を面白そうに考えている気配が分かる。
「ふむ‥、お前さん達は知らんのか」
「はい、なぜか」
そう言うと、御簾の向こうの蛇神様がクスクスと笑う。
「‥何故青葉は課題の内容を知りたいのか、聞いても?」
「あ、ええと‥、さっき知ったんですけど、オミさんって闘神なんて呼ばれてるんですよね?そんな強い神様が、多少本人のせいもありますけど、私のいつ解決するか分からない事情でずっと側にいるのって、どうなんだろうって思って‥」
そう言って、ちょっと下を俯く。
オミさんは私を「狙われなくなるまでいてやる」って言ってくれたけど。
お兄さんのパティアさんには躾けますなんて言っちゃったけど。
あの黒いライオンみたいなのと戦っているのを見て、怪我がないのにホッとした時‥、私の考えってもしかして大分図々しい上に、甘えているんじゃないか?そう思って‥。それなら、何かあった時に契約を解消できればオミさんだけでも自由に出来るかなって‥。
御簾の向こうで蛇神様が面白そうにコロコロと笑う声に、ハッとして顔を上げる。
「なるほど、お前さんは随分と優しいね」
「いえ、優しくは‥。優しければ、多分もっと早くにオミさんを解放していたかもしれないですし‥」
「いやいや、悩んで考えて、実に人間らしい」
そうなのかな‥。
こんなにすぐ考えが揺らいでしまう自分が私は嫌だけど。
御簾の向こうで、蛇神様がちょっと考えてから私を見る気配がする。
「だが、こればかりはすまんが教えてやることはできぬ」
「そ、そうですよね‥」
「だがヒントはくれてやろう」
その言葉に私はサッと顔を上げる。
「何かの際には、奴に「好き」と申してみよ」
す、好き??
好きって、好意の好き???
私が目を丸くしていると、コロコロと御簾の向こうで笑う声が聞こえる。
「それでも困ったら、わしを呼べ。助けてやろう」
「あ、ありがとうございます???」
「ただし、この事はあいつには秘密にするように」
「は、はい!!もちろんです!!」
好きって言葉がヒントなのがよく分からないけど‥しっかり覚えておこう。何かあった時には、オミさんを解放できる。
「さて、礼はこれでいいかの?」
「は、はい!!ありがとうございます。秘密はしっかり守ります!!」
慌てて頭を下げると、襖の向こうから「お茶を持って参りました」と、シキさんの声が聞こえる。蛇神様が返事をすると、お茶をお盆にのせたシキさんと、ポケットに手を突っ込んだオミさんが入ってくる。
と、蛇神様が御簾の向こうからオミさんを睨んだ気配がする。
「‥竜の子、青葉を困らせてないだろうな?」
「「はぁあ?テメェに関係ねーだろ」
ちょ、ちょおおおお!!??オミさん!!!
私は慌ててオミさんを見ると、オミさんは構わずギロっと御簾の向こうを睨みつつ部屋へ入ると、どかっと床に座る。
「オミさん、なんて言い方するんですか!」
小声でオミさんに近付いてそう話すと、
「あいつ、気に入ってたセキを俺に取られたってうるせーんだよ、シキお茶!」
「「ああああもぉおおお!!」」
そういう言い方するから、誤解されちゃうんじゃないの??
オミさんは気にする事なく、シキさんからお茶を受け取ると勝手に飲んでいる‥。
シキさんも慣れた様子なのか、私に座布団を寄越して座るよう勧めてくれるけど‥、落ち着かない〜〜〜。
御簾の向こうから、蛇神様が私を見ているのに気付いてそちらを向くと、
「ああ、そうだ青葉のスカートが切れてしまったようだったな。どれ、可愛いのをシキいくつか見繕ってきてくれ。あ、竜の子が照れるようなうんと短いのも入れておけ」
「「てめぇはよぉおおお!!!!」」
「オミさん、落ち着いてぇえええ!!!!」
のんびりお茶をする雰囲気なんてもんじゃなかった。
慌ててオミさんの腕を掴んで、立ち上がりかけたオミさんを座らせようとすると、巻いていたパーカーが落ちてスリットになってしまったスカートから太ももが見えると、オミさんの顔が瞬間真っ赤になった。
‥それを見て、蛇神様がまたコロコロ笑うので、怒るオミさんに私はもう白旗をあげた。言の葉の神様、人選を完全に間違えたと思います〜〜〜。
オミさんは照れ屋です(╹◡╹)(キラッ!!)
蛇神様の好みのお茶はハーブティー。ハブっていう蛇の名前に似てるからだそうですが、オミさんにはいつも不評です。




