竜の神様、意外と人気?
オミさんは、火竜の闘神と呼ばれているらしい。
長い槍の先が炎に変化して、襲いかかってくる黒いライオンのような影にものすごい勢いで振り回す。と、ライオンもそれをギリギリで躱して、黒い炎のようなものを口から吹き出す。
「え??ほ、炎???」
「悪食の炎ですね〜〜。まぁ、ルディオミ様には屁でもないですよ」
解説してくれるシキさんは、なんだか得意顔だ。‥えーと、結構オミさん好きな感じ?シキさんは私を見上げて、
「ルディオミ様は、あの通りお強いのですが、僕ら小さき者達には優しいんです。‥大分、誤解されやすいんですけど」
「‥ああ、それはなんとなく分かります」
「そうですか!?あとですね‥」
シキさんが何かを言いかけた時、
「「シキ!!」」
オミさんの声がして、そちらを見た瞬間、黒いライオンが炎を思い切り吹いてきた!!!
「「ひゃああああああ!!!」」
私が悲鳴をあげると、シキさんが口から白い息をふっと吹くと眩しい光と共に炎が私達の体から逸れていく。目を丸くしていると、オミさんが瞬間黒いライオンの体に炎の槍を上から一直線に下ろしたかと思うと、ものすごい勢いで真っ赤な炎にライオンは包まれて消えてしまった。
「‥ったく、こいつらは本当にどこに行っても悪さするな」
オミさんは、深くため息をつくと私とシキさんを見る。
「おい、怪我はないか?」
「あ、は、はい、怪我は‥」
そう言って、オミさんの方へ行こうとすると足がチクッと痛む。
あれ??足なんか怪我した??
よく見るとスカートの右の太もも辺りが縦にぱっくり切れて、スリットのようになっている!!ちょっとスカートをめくって見たけど、薄っすら縦に血が出てる。怪我よりも、スカートがショックすぎる‥。
「「ああ〜〜〜、私のスカート‥」」
「嗚呼、申し訳ありません!僕の力が足りなかったばかりに‥」
「いやいや、シキさんのせいじゃないよ。さっきはありがとうございます」
「青葉様‥!!」
手の上で申し訳なさそうにしているシキさんにそう声を掛けていると、オミさんがツカツカとこちらへやってきて、シキさんをひょいっと掴んだかと思うと、黒のパーカーを私に横を向きつつ渡す。
「と、とにかく!!それじゃなんだから、腰に巻いておけ!」
「あ、どうも?」
オミさんの力で出したのか、黒いパーカーを腰に巻くと太ももは隠れたので大丈夫‥かな?シキさんは申し訳ないようにちょっと頭を垂れて私を見ると、
「申し訳ありません、お洋服をあとでお渡ししますので、その前に蛇神様の脱皮のお片づけをお願いしたいのですが」
「ああ、大丈夫ですよ。その約束でしたし。えーと、どこに行けばいいですか?」
私がオミさんの手の中にいるシキさんに聞くと、オミさんが私をじっと見る。
「オミさん?」
「‥怪我は大丈夫なのか?」
「あ、かすり傷ですよ。オミさんは?」
オミさんの体を見ると、うん、傷はないな。
ホッとしてオミさんを見上げると、オミさんは呆れたように私を見つつ、シキさんを手渡してくる。
「‥お前、俺は神だからな?」
「神様でも怪我したら痛くないですか?」
私がそう言うと、オミさんはちょっと目を丸くする。
だってあんな鋭い爪で斬られたら‥痛いどころじゃないでしょ?‥私は、あの戦う姿を見て、これからもあれが続くのかと思うと、心配だし、心苦しい‥。ちょっと下を俯くと、
「‥人間に心配されるほどじゃねーよ」
オミさんの長い人際指の腹で、額をぐっと押されると、思わず後ろによろけそうになって慌てて足を踏ん張る。こ、この〜!!額を抑えてオミさんをジトッと睨む。
「オミさん、力強いんだから加減して下さい!」
「へいへい」
もうオミさんは話を聞く素振りも見せない。
呑気に伸びをして、本殿の前を見に行ってしまった‥。本当にマイペースなんだから!
私は手の中にいるシキさんを見て、「ごめんね、行きましょうか」と話しかけると、シキさんは私とオミさんを交互に見て、
「仲良しさんなんですね〜」
って、しみじみ言うけど‥。今のやり取り見てなかったの??神様のお使いには、私とオミさんはそんな風に見えるの??不思議なんだけど‥。




