竜の神様、闘神です。
まるさんから蛇神様の話を聞いたオミさんは私を見て、
「場所はまぁ知ってる。脱皮がもう始まってるらしいから、すぐ行くぞ」
「え?だ、大学‥」
「時間は、あっちが操作してくれてるから間に合う。大丈夫だ」
そうなの???
神様だから???
目を丸くすると、オミさんは面白そうに笑う。
いや、本当に私はこれまで多少の不思議体験はしてきたけど、限りなく一般の人間ですからね??
まるさんがコロコロと私達の足元へ来ると、つぶらな目でこちらを見上げる。
「それでは、蛇神様の所まで送りますね!」
「は、はい???」
送る?
よくわかってない私が目をパチクリしていると、オミさんが私の手を急に握るので驚いてオミさんを見上げる。
「お前、移動した事ねぇだろ」
「い、移動???」
聞いた瞬間、「行ってらっしゃいませ〜」というまるさんの声が聞こえたかと思うと、私とオミさんの体が金色の光に包まれる。な、何〜〜〜〜!!!??驚いてオミさんの手をぎゅっと握ると、オミさんが小さく笑う声が聞こえた。
そうして、眩しい金色の光が目の前いっぱいに広がって、あまりにも目がチカチカするので何度か瞬きすると、ふんわりと甘い花の香りがする。
花の香り???目を擦って周囲をよく見ると、いつの間にかさっきいた拝殿の前から、青々とした竹林に囲まれた白い瓦屋根、白い木で出来た本殿がある石畳みの上にいる事に気付いた。
「「え、こ、ここ‥」」
送るって、こういう事??
私は口をあんぐりと開けて本殿を見ていると、足元からシュルシュルと音がする。オミさんと音のしたほうを見ると、白い蛇がこちらへやって来る。
「初めまして、シキと申します。本日は我が主人の為にお越し頂きありがとうございます」
「おう、元気だったか?」
「はいお陰様で。兄がいつもルディオミ様にはお世話になっております」
え???兄???
私がオミさんとシキさんを交互に見ると、オミさんがニヤッと笑って、
「セキの弟だ」
「そ、そうだったんですか!!こちらこそ、ものすごくお世話になってます!!」
へ〜〜!!セキさんは兄弟がいたんだ。
驚いてシキさんを見ると、目を細めて、
「お話はかねがね伺っております。脱皮の片付けは青葉様にお願いして、ルディオミ様にはあちらを片付けて頂きたく‥」
「あちら??」
私がシキさんを見ると、オミさんが急に私を抱きかかえたかと思うと、ものすごい勢いで飛び上がる。
「「ええええええ!!!!???」」
オミさんが地面に着地すると、バリバリとまるで雷が落ちてきたような音がして、思わず目を瞑る。音が静かになって、そっと目を開けると、私達の前に何か大きな丸い膜のようなものが貼られている。
な、何だこれ??
よく見ると、その大きな膜の向こうに黒いライオンみたいな影が見える?
その途端、ゾクリとした不気味さが背中を走る。
「「な、何あれ‥」」
私が、オミさんの腕の中で思わず体を強張らせて呟くと、胸の中からシキさんがシュルリと出てくる。ぎゃ、ぎゃあああああ!!??いつの間に??!!
オミさんがギョッとした顔で、シキさんに「あ、テメ!!どこに入ってんだよ!!」って言うけど、そ、そういう場合?!!全く悪びれないシキさんは黒いライオンみたいな影を見て、
「あれはですねぇ、うちの蛇神様が脱皮で疲れているのを見計らって襲いに来たのと、あわよくば青葉様の力を食べたいという悪食ですね」
「「すんごいついで感!!!」」
思わず叫ぶと、オミさんは私をそっと地面に降ろす。
「そこにいろ。シキ、頼むぞ」
「承知致しました」
シュルッと私の手の上にとぐろを巻いて、キッと前を向く。
オミさんはそれを見た途端、膜の中を突き破るように駆け出して行く。
大きな黒いライオンのような影は、ものすごい勢いでオミさんの方に大きな鉤爪を広げて斬り裂こうと向かってくるので、怖くて目を瞑りそうになってしまう。
そんな心配をよそにオミさんは、ひょいっと軽く向かってきたライオンの頭を飛び越えて、手の平から大きな槍を引き抜く。と、槍の刃が瞬間炎に変わる。
「ええええ??ほ、炎になった???」
「さすが火竜の闘神ですね〜〜」
「「は、初めて聞いた!!!!」」
そんな風に呼ばれてたの??!
目を丸くする私に、なぜか手の上のシキさんが誇らしげにドヤ顔してた。え、えっと、すごいね?




