竜の神様、傘デビュー。
そうして髪を乾かされただけなのに、疲労困憊の私。
明日の支度をして、とっとと寝よう。
そう思ってカバンに教科書を詰め込んで、スマホのアラームを設定する。
寝袋を出そうとクローゼットに向かおうとすると、オミさんが私のそばへ来たかと思うと急に抱き上げた。
「「な、な、何をするんですか!!??」」
「どうせベッドで一緒に寝るんだし、もう最初から寝るぞ」
「「結構です!!!」」
「遠慮はいらん」
「「そうじゃない!!!」」
さっきの髪を乾かされるという行為で、もう私のライフは限りなくゼロだっていうのに!!!しかし、オミさんはそんな私に構う事なくベッドに一緒にごろりと横になる。
う、うわぁあああ!!!!!
なんとか腕から抜け出そうとするけど、オミさんは離すものかとグッと私の体を抑える。これが神のする事か!!!
「オミさん、私にだって恥じらいはあるんです!!」
「へ〜、あったのか」
「「ぶっ飛ばしますよ??」」
私がちょっと首を捻って、オミさんを見上げると想定外に顔が近い。
思わずオミさんをまじまじと見てしまう。
オミさんはニヤニヤ笑って私を見てるけど、私はそういった耐性もございませんからね!!急いで顔の向きを戻して、オミさんの腰に回っている筋肉のぶっとい腕を見る。‥龍の神様、言の葉の神様、私を助けて下さい‥。なんでこんな目に遭うのでしょうか。
オミさんは、ちょっと力の抜けた私に、
「‥今日、時計塔のやつの気が強かったから、お前体が当てられてるんだよ。気を鎮めるから、目を瞑れ」
そうなの??
まぁ、確かにあのギリギリ回る時計の針を見た時、かなりドキドキしたけど‥、それ以外は自分では全然分からない。
「‥それならそうと言って下さいよ。っていうか、こんなにくっつかなくても出来るでしょ?前に頭に手を当てるだけで‥」
「いちいちうるせぇな。おら、目を瞑れ」
「‥うう、どうしてこうなるんだ」
私は観念して目を瞑ると、体が瞬間ほんわかと暖かくなる。
あ、なんかすごい気持ちいい。
お日様にぽかぽかと当たって、日なたぼっこする感覚に似てる。
「あったかい‥」
あまりにも心地いい感覚に、そのままストンと眠ってしまった。
だって本当にふわふわと気持ち良い感覚で‥。いやー、こういう時オミさんって神様なんだなぁって思うわ‥。と、夢心地で思った。‥‥大分、強引だけど。
ちなみに朝起きたら、あまりにギュウギュウと抱き込むように寝てるのでうなされて起きた‥。神様、頼む、私に快適な睡眠時間をくれ。
「オミさん、苦しい。死ぬ」
「俺がいて死ぬ訳ねーだろ」
「だったら腕を離して下さい」
「しょうがねぇなぁ」
そんな言い方ある!??
私はバキバキと鳴る体を伸ばして、ベッドから降りた。
‥もうそろそろ一ヶ月になるけど、この状況に慣れている自分が怖い。
外を見ると、今日は雨だ。
「ああ、そろそろ梅雨だなぁ‥」
「梅雨?」
「雨がずっと続くんですよ、傘を指すのが不便‥あ!!オミさんの傘がない!!ここの所、晴天続きだったから忘れてた!」
しまった〜〜。
オミさんの大きな体じゃあ、私の傘では濡れちゃうなぁ。
「‥後でコンビニで大きめの傘を買ってくるかぁ」
「傘‥!!」
ちょっとワクワクしているオミさん。
雨さえも楽しそうだ。
「オミさんの国では雨は降らないんですか?」
「雨は降るけど、傘ってのは使ったことがねぇ」
「え、じゃあ濡れちゃうじゃないですか?」
「力で乾かせる」
「べ、便利!だけど、濡れないようにはしないんだ‥」
「おー!だから傘、使ってみたい!!」
これ、レインコートとか、長靴とか着せたらますます楽しそうだな。
朝食を食べてから、オミさんが早速傘をコンビニで買って来ようとすると、インターホンが鳴る。
「こんな朝早く誰だろ?」
「俺が出る」
オミさんが出てくれたけど、何やら話し声が聞こえる。
知り合い??
と、玄関からオミさんが大きな傘を持って戻ってきた。
「あれ?!傘どうしたんですか?」
「セキが持ってきた。あとれいんこーと?と、長靴も?」
「‥セキさん、優秀すぎる」
オミさんように、傘も長靴も、レインコートも黒いけどちょっと凝った模様とか入っている。はぁー、セキさんバッチリだなぁ。私にまで新しい傘を用意してくれたらしい。‥素晴らしすぎる。今度お礼を用意しておこう。




